一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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木にはどうして寿命があるの?

質問者:   大学院生   key
登録番号3702   登録日:2017-03-09
植物一般はよくわかりませんが、高齢の樹木は中が空洞になって、そのうち倒れてしまうように思います。
なぜ、成長し続けることができないのでしょうか。それとも、成長し続けられるのが本当はデフォルトで、その他の外的要因(土の養分が減ったとか、土地が狭すぎるとか)によって寿命が決まっているのでしょうか。
key さん

本コーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございます。
植物の環境応答について研究されている野口 航先生に回答をお願い致しました。植物の寿命はなかなか難しい問題のようです。「みんなのひろば」植物Q&Aの登録番号3518にも関連の記載がありますので参考になさって下さい。

回答:
森林の上まで達している高さの高い樹木(林冠木といいます)についてお答えします。

林冠木が枯れる要因は、生物的な要因と非生物的な要因に分けられます。
生物的な要因としては、その樹木種がもつ性質と、病原菌による感染、非生物的な要因としては、台風などの風の強度、降水量、土壌などの地形要因 が挙げられます。林冠木が枯れる要因として、日本では、温帯や亜高山帯の森林では、台風などの非生物的な要因が多く、北米の針葉樹林では、病原菌の感染による根や幹の枯損が多いようです(真鍋 2011 日本生態学会編「森林生態学」共立出版)。

寿命が長い樹木では、幹が太くなり、幹の内側の使われなくなった道管が枯れて、keyさんのおっしゃる空洞の幹になる樹木もあります。ただし、老齢な個体では、太い幹が枯れても、根元から枝(萌芽[ぼうが]といいます)が伸びて、太った結果、複数の幹が株立ちしている場合もあります(カツラなど)。
その場合、幹の寿命よりも、はるかに個体の寿命が長くなります(大住 2006 種生物学会編「森林の生態学」文一総合出版)。

それでは、樹木本来の個体の寿命は何によって決まるのでしょうか。
樹木の種によって寿命は違うようですが、私が調べた限りではわかりませんでした。
寿命が長くなると、枝や根を伸ばす部分である頂端分裂組織に突然変異が蓄積してうまく分裂できなくなるのかもしれません。パン酵母では出芽して増えていきますが、細胞が出芽できる回数が決まっているそうです。

中途半端なお答えになりまして、申し訳ございませんでした。

 野口 航(東京薬科大学・生命科学部)

庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
野口 航(東京薬科大学・生命科学部)
回答日:2017-03-16