質問者:
高校生
八名川
登録番号3720
登録日:2017-04-03
僕はもともと神経細胞などの活動電位に興味があり、神経細胞のない植物にも活動電位を働かせるものがあると知り研究してみたいと思いました。そこで図書室にあった「動く植物 植物生理学入門 ポール・サイモンズ著」やGoogle Scholarにヒットした論文などで植物の活動電位の測定方法などについて調べました。このサイトのQ&Aもいくつか拝見しました。(「0335 植物の活動電位の計測」「0497 植物の電気生理実験」)ですが、複数の方法があり、どれも難解な記述がされていて、結局どの測定方法が妥当なのかわかりませんでした。そこで、実際に研究者をさがしてその実験やその器材の様子を見てみたいと考えています。みんなのひろば
現在、植物の活動電位を研究に利用している方はいませんか?
しかし、現在そういった実験を行っているという人がなかなか見つからず、ようやく上田実(東北大学)様が植物の活動電位を用いた実験を最近なさったということを知ったのですが、お忙しいためかコンタクトは取れません。他に植物の活動電位の測定に関して詳しい方はいませんか?
八名川さま
ご質問ありがとうございます。植物の活動電位に関連する研究をご専門とされている神戸大学の三村哲郎先生に回答をいただきました。
【三村先生のご回答】
八名川さま、植物の活動電位にご興味があるとのこと、植物細胞でも神経細胞でも、活動電位は、電位依存性のイオンチャンネルが活動することで作りだされます。そのようなイオンチャンネルは、多くの植物が持つことが知られており、オジギソウなどの動く植物に限らず、トマトなどの普通の植物でも、条件次第で活動電位様の膜電位変化が生じることが知られていて、それを体内の情報伝達に利用していると考えられています。
とは言え、一般的には、植物の活動電位による反応で著名なのは、やはり運動現象でしょう。すでに「動く植物」をお読みになったとのことですから、そこに載っているオジギソウやハエジゴクをはじめとした多くの植物で活動電位が記録されています。
日本には、植物の活動電位の研究で世界的にも有名だった柴岡孝雄先生がいらっしゃいましたが、残念ながらすでに鬼籍に入られていて、現在植物の活動電位を、電気的測定を基に専門に研究されている方はいらっしゃいません。世界的にもそのような研究者はごく限られた方々だけです。
一方、イオンチャンネル分子の活性測定のためにパッチクランプ法という手法が知られていて、これは動物細胞でも日常的に使用される研究方法ですが、それを植物細胞にも応用して研究をされている方が、国内にも何人かいらっしゃいます。但し、この場合は活動電位を測定するということにはなりません。
植物の活動電位を測定するのには、微小電極を植物細胞の内部に刺入し、それを増幅器とレコーダーやオシロスコープなどの測定装置で測定するのが、研究としては一般的ですが、特殊な機器が必要ですから、高校の生物部などで行うのは簡単ではありません。
もし自分で活動電位を測定したみたいということでしたら、表面電位を測定するのが一番簡単です。
高さ30-50 cmぐらいに育てたオジギソウの茎や枝の表面二箇所に電極をつなぎ、その間の電位差を測定することで、活動電位を測定することが可能になります。
この場合に必要になる機器は、
1)電極
2)増幅器と測定器
です。
電極は、一般的には銀線を塩化銀で覆ったものを使うことになりますが、正確な電位測定をする必要がなく、短時間で良いのなら銅線でも構いません。それに木綿糸などをほぐしたもの、あるいは綿などを巻き付けて、電解質溶液(1-10 mMのKClまたはNaCl溶液)を浸して植物体に接触させます。銅線を「ビニール管」や「ボールペンの外側ケース」などに入れておくと扱いが簡単です。電極の固定法は、自分で工夫して下さい。
心電図などを測定する際に身体につける使い捨ての電極が医療機器メーカーから売られていますので、それを使うことも可能です。
増幅器と測定器は、自作することも可能ですが、一番簡単なのはペンレコーダーに直接電極を繋ぐことだと思われます。
活動電位の形などを見る必要がなく、ただ一過的に電位が変化することを測定するので良いなら、テスターを使うことも出来ます。植物の活動電位は、数mVから数十mVの変化を示し、一秒ぐらいで終わる現象ですから、十分測定できると思います。
「植物電気生理研究法」(学会出版センター)という本があります。既に品切れだと思いますが、図書館などを探して見ることが出来れば参考になると思います。
頑張って工夫してみて下さい。
三村 徹郎(神戸大学大学院理学研究科)
ご質問ありがとうございます。植物の活動電位に関連する研究をご専門とされている神戸大学の三村哲郎先生に回答をいただきました。
【三村先生のご回答】
八名川さま、植物の活動電位にご興味があるとのこと、植物細胞でも神経細胞でも、活動電位は、電位依存性のイオンチャンネルが活動することで作りだされます。そのようなイオンチャンネルは、多くの植物が持つことが知られており、オジギソウなどの動く植物に限らず、トマトなどの普通の植物でも、条件次第で活動電位様の膜電位変化が生じることが知られていて、それを体内の情報伝達に利用していると考えられています。
とは言え、一般的には、植物の活動電位による反応で著名なのは、やはり運動現象でしょう。すでに「動く植物」をお読みになったとのことですから、そこに載っているオジギソウやハエジゴクをはじめとした多くの植物で活動電位が記録されています。
日本には、植物の活動電位の研究で世界的にも有名だった柴岡孝雄先生がいらっしゃいましたが、残念ながらすでに鬼籍に入られていて、現在植物の活動電位を、電気的測定を基に専門に研究されている方はいらっしゃいません。世界的にもそのような研究者はごく限られた方々だけです。
一方、イオンチャンネル分子の活性測定のためにパッチクランプ法という手法が知られていて、これは動物細胞でも日常的に使用される研究方法ですが、それを植物細胞にも応用して研究をされている方が、国内にも何人かいらっしゃいます。但し、この場合は活動電位を測定するということにはなりません。
植物の活動電位を測定するのには、微小電極を植物細胞の内部に刺入し、それを増幅器とレコーダーやオシロスコープなどの測定装置で測定するのが、研究としては一般的ですが、特殊な機器が必要ですから、高校の生物部などで行うのは簡単ではありません。
もし自分で活動電位を測定したみたいということでしたら、表面電位を測定するのが一番簡単です。
高さ30-50 cmぐらいに育てたオジギソウの茎や枝の表面二箇所に電極をつなぎ、その間の電位差を測定することで、活動電位を測定することが可能になります。
この場合に必要になる機器は、
1)電極
2)増幅器と測定器
です。
電極は、一般的には銀線を塩化銀で覆ったものを使うことになりますが、正確な電位測定をする必要がなく、短時間で良いのなら銅線でも構いません。それに木綿糸などをほぐしたもの、あるいは綿などを巻き付けて、電解質溶液(1-10 mMのKClまたはNaCl溶液)を浸して植物体に接触させます。銅線を「ビニール管」や「ボールペンの外側ケース」などに入れておくと扱いが簡単です。電極の固定法は、自分で工夫して下さい。
心電図などを測定する際に身体につける使い捨ての電極が医療機器メーカーから売られていますので、それを使うことも可能です。
増幅器と測定器は、自作することも可能ですが、一番簡単なのはペンレコーダーに直接電極を繋ぐことだと思われます。
活動電位の形などを見る必要がなく、ただ一過的に電位が変化することを測定するので良いなら、テスターを使うことも出来ます。植物の活動電位は、数mVから数十mVの変化を示し、一秒ぐらいで終わる現象ですから、十分測定できると思います。
「植物電気生理研究法」(学会出版センター)という本があります。既に品切れだと思いますが、図書館などを探して見ることが出来れば参考になると思います。
頑張って工夫してみて下さい。
三村 徹郎(神戸大学大学院理学研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-04-17
出村 拓
回答日:2017-04-17