質問者:
教員
不思議ちゃん
登録番号3731
登録日:2017-04-16
ウコンの根茎を切断するとクルクミン類のため黄色をしています。この黄色がほぼ均一だったり、グラデーションが見られたりします。そこで、イモ類(ウコンを含む)肥大(生育)がどのようになっているのか知りたいと思いました。イモの肥大
根や茎が肥大してイモになる植物があります。このイモの肥大の仕方について質問します。
イモが肥大するとき、肥大(生育)はイモどの部分で肥大していくのでしょうか。
具体的な項目として
1)イモのどの部分で肥大するのか。
イモの中心部分、外側、全体として肥大するなどが考えられると思います。
2)この時、細胞の分裂について。
すでに細胞分裂が終わっていて細胞が肥大するだけなのか、分裂しながら肥大するのかなどが考えられると思います。
3)もし、分裂しながら肥大するのであれば若い細胞と古い細胞(多分デンプンが蓄積している)が混在していると考えて良いのでしょうか。
4)イモはどこまで肥大できるのか。
5)これらのことについて書かれている本などがありましたら紹介し下さい。
不思議ちゃん 様
ご質問、ありがとうございます。
植物の栄養貯蔵がご専門の中村研三先生に回答をお願いいたしました。質問(3)を中心にして回答を頂きました。
【中村先生のご回答】
ジャガイモ塊茎もサツマイモ塊根も、基本的にはイモの形成初期に分裂組織の盛んな細胞分裂で作られた多くの柔細胞に栄養分が運ばれ、デンプンが蓄積して細胞が大型化し、イモの肥大が起こります。貯蔵タンパク質として働く塊茎や塊根の主要タンパク質の多くも、デンプンを集積する柔細胞に蓄えられます。ジャガイモでは、地下茎から伸びたストロン(匍匐枝)先端部の分裂組織の盛んな細胞分裂で作られた多くの柔細胞にデンプンが蓄えられて肥大します。生化学的にも、塊茎形成初期の盛んなDNA合成の後に、デンプン生合成が盛んになります。
一方、サツマイモでは、茎にできた不定根のなかに、若い段階でリグニン化が進んで水や養分を吸収する普通の根として発達するものに加え、若くて細い根の中心柱に沿った分裂組織が活発に細胞分裂して維管束系と共に多くの柔細胞を作り、デンプンを蓄積して肥大成長する根が分化し、それらが塊根へと発達していきます。塊根となる根では、一次形成層での活発な細胞分裂によって柔細胞が増えるだけでなく、新たに二次的な形成層が作られ、この二次形成層からも柔細胞が作られて、柔細胞の数は急激に増加して塊根の肥大に大きく貢献します。(更に、大型化した柔細胞の分裂も観察されています。)このように、サツマイモ塊根の成長過程では柔細胞の肥大とともに二次形成層での細胞分裂も盛んであり、根全体で見れば分裂活性の高い若い細胞とデンプンを蓄積する大きな細胞が混在していると言えますが、それぞれは別の組織です。一本の茎についた塊根が少なく、水分補給などが整えば、光合成で作られた糖の配分が集中して塊根肥大は長く続き、巨大なイモになることが知られています。
特に、サツマイモに関しては鹿児島大学農学部の國分禎二先生の書かれた「甘藷品種の塊根の組織構造とでん粉蓄積能力との関係に関する育種学的研究」(1971年)という書籍に詳しく記載されています。また、「みんなのひろば:植物Q&A」では、先に登録番号1778「甘藷の塊根の分化について」で塊根の肥大と植物ホルモンの関係を中心に今関先生がお答えになっています。
中村 研三(中部大学教授・名古屋大学名誉教授)
もう少し一般的な解説書としては、「根の事典」根の事典編集委員会編、朝倉書店(2009) があります。いもばかりではなく、ダイコンやニンジンなどの肥大についても解説されています。引用文献が付いておりますので、原著論文にもあたることができると思います。
ご質問、ありがとうございます。
植物の栄養貯蔵がご専門の中村研三先生に回答をお願いいたしました。質問(3)を中心にして回答を頂きました。
【中村先生のご回答】
ジャガイモ塊茎もサツマイモ塊根も、基本的にはイモの形成初期に分裂組織の盛んな細胞分裂で作られた多くの柔細胞に栄養分が運ばれ、デンプンが蓄積して細胞が大型化し、イモの肥大が起こります。貯蔵タンパク質として働く塊茎や塊根の主要タンパク質の多くも、デンプンを集積する柔細胞に蓄えられます。ジャガイモでは、地下茎から伸びたストロン(匍匐枝)先端部の分裂組織の盛んな細胞分裂で作られた多くの柔細胞にデンプンが蓄えられて肥大します。生化学的にも、塊茎形成初期の盛んなDNA合成の後に、デンプン生合成が盛んになります。
一方、サツマイモでは、茎にできた不定根のなかに、若い段階でリグニン化が進んで水や養分を吸収する普通の根として発達するものに加え、若くて細い根の中心柱に沿った分裂組織が活発に細胞分裂して維管束系と共に多くの柔細胞を作り、デンプンを蓄積して肥大成長する根が分化し、それらが塊根へと発達していきます。塊根となる根では、一次形成層での活発な細胞分裂によって柔細胞が増えるだけでなく、新たに二次的な形成層が作られ、この二次形成層からも柔細胞が作られて、柔細胞の数は急激に増加して塊根の肥大に大きく貢献します。(更に、大型化した柔細胞の分裂も観察されています。)このように、サツマイモ塊根の成長過程では柔細胞の肥大とともに二次形成層での細胞分裂も盛んであり、根全体で見れば分裂活性の高い若い細胞とデンプンを蓄積する大きな細胞が混在していると言えますが、それぞれは別の組織です。一本の茎についた塊根が少なく、水分補給などが整えば、光合成で作られた糖の配分が集中して塊根肥大は長く続き、巨大なイモになることが知られています。
特に、サツマイモに関しては鹿児島大学農学部の國分禎二先生の書かれた「甘藷品種の塊根の組織構造とでん粉蓄積能力との関係に関する育種学的研究」(1971年)という書籍に詳しく記載されています。また、「みんなのひろば:植物Q&A」では、先に登録番号1778「甘藷の塊根の分化について」で塊根の肥大と植物ホルモンの関係を中心に今関先生がお答えになっています。
中村 研三(中部大学教授・名古屋大学名誉教授)
もう少し一般的な解説書としては、「根の事典」根の事典編集委員会編、朝倉書店(2009) があります。いもばかりではなく、ダイコンやニンジンなどの肥大についても解説されています。引用文献が付いておりますので、原著論文にもあたることができると思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-05-03
庄野 邦彦
回答日:2017-05-03