一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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クローンのみで繁殖する植物

質問者:   一般   時計草
登録番号3733   登録日:2017-04-19
ムカゴや地下茎、分球で繁殖する植物が存在しますが
そういったクローンでのみ繁殖する植物はもう進化しないのでしょうか?
時計草様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
回答を基礎生物学研究所生物進化研究部門の長谷部光泰教授にお願いしました。以下のように大変わかりやすい説明をして下さいました。

【長谷部先生のご回答】
進化の源は突然変異です。突然変異がおこると親と異なった遺伝子を持つことになります。突然変異は宇宙線、放射線、化学物質などの外的要因によっても引き起こされますが、もっとも大きな要因は細胞分裂時の複製ミスです。従って、生物は細胞分裂をするとある程度は修復できますが、修復できない部分が残ります。従って、細胞分裂すると、細胞のもつ遺伝子は徐々に変わっていきます。動物の場合は、生殖細胞が発生の初期段階で体細胞と分かれ隔離されます。従って、体細胞が分裂するときに突然変異がおこっても子孫に受け継がれず、進化に寄与しません。なので、親になってから獲得された性質は遺伝子しないのです。一方、植物を含めた多くの多細胞生物では、体細胞がある時期になると生殖細胞に変化します。そのため、体細胞が分裂するときにおこった突然変異が生殖細胞に受け継がれ、子孫にも伝えられます。例えば、大きな木の離れた枝の細胞では、遺伝子のどこかが違っている可能性があります。実際、ミカンの栽培品種のいくつかは、枝変わりという、枝で起こった突然変異を挿し木で増やしたものです。従って、クローンで繁殖する植物も進化します。しかし、有性生殖で、染色体の組み合わせが変わったり、組換えが起こるよりも小さな変化なので、有性生殖をする種よりも進化の速度は遅いです。

 長谷部 光泰(基礎生物学研究所生物進化研究部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-05-06