一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アブラナの子房とがくの間にある緑色の玉状のモノ

質問者:   一般   めい
登録番号3742   登録日:2017-04-27
アブラナの子房とがくの間にある緑色の玉状のモノの名前を教えてください。
小学5年生の子どもの理科でアブラナの観察があり子どもにその部分の名前とはたらきをたずねられました。
インターネットで調べましたがその緑色の玉の様なものは何かわかりませんでした。
子房の下にポチポチとあります。
よろしくお願いいたします。
めい さま

ご質問ありがとうございます。アブラナ科植物の花の発生等をご専門とされている東北大学の渡辺正夫先生に回答を願いいたしました。

【渡辺先生のご回答】
アブラナ科植物の自家不和合性の研究をしていますが、形態学はあまり詳しくありません。頂きました文面から、アブラナの花を解剖すると、こうなるのではないかな、ということで、記しておきます。参考になれば、幸いです。

 「アブラナの子房とがくの間にある緑色の玉状のモノ」。子房とがくの間というのが、少し解釈に悩んだのですが、実際のアブラナ(Brassica rapa)の花を解剖してみると、花の付け根の部分に、緑色の玉状のモノが見えます(図参照 : https://jspp.org/media/images/hiroba/Brassica_Nectar.jpg )。これが「蜜腺」です。この2つの写真は、研究室スタッフの増子さんによるものです。解剖したとき、外から、蕚片、花弁、雄ずい(雄しべ)、雌ずい(雌しべ)と並んでおり、蜜腺は、花弁と雄ずいの間に位置していると、思われます。

 アブラナのような小さい花では難しいかもしれないですが、ツバキなどの花を取って、付け根の部分から吸ってみると、甘い水が出てくるのを経験されたことがあるのではないでしょうか。渡辺は小学校の頃に、学校の帰り道に道草をして、ツバキなどの大きな花の蜜を吸っていたのを思い出します。ご存じのように、植物では、蜜腺は訪花昆虫に蜜を提供して、その代わりに花の上で虫に動いてもらうことで、花粉を雌しべの先端に運んでもらうということをしてもらっていると言われています。実際に、蜜腺がない、あるいは、極めて小さくなると、訪花昆虫は花によりつかないというのが、野菜の種子を生産している現場では観察されています。このことからも、蜜腺が花での受粉作業に重要な役割をしているのが、分かるかと思います。

 ちなみに、蜜腺という言葉を学習するのは、中学校になってからなのでしょうか。NHK for Schoolというインターネットで学習することができるサイトがあります。あわせて、参考にしてみて下さい( http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005401280_00000 )。

 仙台周辺には、川縁にアブラナの花(菜の花)が咲いているのを見かけますし、近くに畑などがあれば、まだ、アブラナの花を見かけることがあると思います。ぜひ、観察されてみてはどうでしょうか。虫眼鏡を持ってきて、緑色の玉状になった「蜜腺」を潰してみたら、中の液が甘いかどうかも、調べることができると思います。なお、アブラナの花というのは、アブラナ科の花の総称で、菜の花とも言われます。キャベツ、ハクサイ、ダイコンなどがアブラナ科植物に分類されます。春の開花シーズンです。是非、ご自分で、実験してみられてはいかがでしょうか。

 渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-05-15
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