質問者:
高校生
Mana
登録番号3745
登録日:2017-05-04
私は高校生で、授業でスイカの糖度を向上させる栽培方法について研究しています。みんなのひろば
中性植物の糖の生産量
スイカについて色々調べたところ、スイカは中性植物で、
日長に関係なく花芽を形成するということがわかりました。
そこで、夜間にも照明を点灯してスイカを栽培すれば、
通常の栽培と比較して光合成による糖の生産量が増加し、糖度の高いスイカの生産が可能になるのではないかと考えたのですが、実際にこのようなことが可能でしょうか?
また、理論的にこのような栽培方法が可能だった場合でも、夜間の照度がスイカの光補償点といわれる4000lx以下の場合は、逆に糖を消費してしまうことになるのでしょうか?
Mana 様
ご質問ありがとうございます。
野菜類の研究を専門とされている岡山大学 桝田正治名誉教授に回答していただきました。
【桝田先生の回答】
スイカの花芽、ここでは雌花としておきましょう。普通、8枚目の葉(8節)くらいに雌花がついてきます。この後、6~7節毎に雌花がつきます。糖度の試験をするにはこの節(14~15節)に咲いてくる雌花に花粉を付けるとよいでしょう。
さて本題に入ります。光補償点というのは、炭酸ガスの収支がゼロになる点で、理論的にはそのままの状態を維持しうる光の強さということになります。ただし、維持代謝にエネルギーを部位別に使うのでその分、いびつで軟弱になっていくことになります。スイカの糖蓄積量は光の強さに依存し、一般には光合成速度として測定されます。スイカの光飽和点〈最大光合成速度〉は8万ルクスとされているので、真夏の太陽のもとではよく太ることになります。
夜間照明は効果がないとは言えませんが、昼間の太陽の光の強さを想像してみてください。夜の光強度をどこまで高められるかが課題となるでしょう。また、何時間照明するのかも課題です。LED を使用すれば人工光下での試験は容易になっています。ただし、植物は〈動物はもっと顕著です〉夜が無ければ正常に生育しません。もし興味があるなら、いろいろな野菜で調べていますので参照にしてください(植物環境工学23:93-100,2011).もし、スイカの肥大〈糖蓄〉と光の関係に関して興味を持たれるなら、ソフトボール大になったスイカの下に上皿バカリを据え〈ツルの重さをどのように消去するかは工夫〉、1日の日射量と果実重量を6:00と18:00に2,3週間測定し相関を取ったらいかがでしょうか?私の栽培経験からすると相関係数は相当高いものになると予想されます。
【サイエンスアドバイザー櫻井の見解(1)】:夜間は光補償点以下では糖質を多少消費するにしても、日中に蓄積した糖質の減少の程度を低下させ、全体として糖度を上げる可能性が考えられます。
【上記見解に対する桝田先生の回答】:理論的には光補償点で糖量は変化しないはずですから、夜間の照明が昼間の光合成を促進するというデータが必要となります。私は未だ知りません。光の植物に対する影響は、光合成に対してだけでなく、光形態形成(櫻井注:光は花芽の分化や葉の展開等に対しても影響する)にも及ぶので、両者を実験的に区別して評価することが難しいという問題があります。
実際、イチゴの低温処理中に照明する試験もなされておりますが、プラスマイナスゼロです。少なくともマイナスになるわけではありません。(低温処理:イチゴの花芽分化を促進するため低温〈13℃程度〉で苗を育苗する技術がありますが、この時、苗を弱らせないために人工照明を行えばいいのではないかという考え方に基づく)
【桝田先生の上記の回答等を考慮した櫻井の見解(2)】
人工光の照射がスイカの糖度の及ぼす影響についてあらかじめ的確に予測することは困難なようですが、調べてみる価値はありそうです。たとえば、相当高強度の人工光を日没前後から2時間照射し、照射しなかったものと比較することが考えられます。しかし、照射したものとしなかったものとを比較することが必要で、個体による変動もあるので、統計的に意味のある結果を出すには相当な努力を要すると思います。実験材料としては、スイカよりも果実が小さくて数が多いミニトマトなどを使うことが考えられましょう。
桝田 正治(岡山大学)
ご質問ありがとうございます。
野菜類の研究を専門とされている岡山大学 桝田正治名誉教授に回答していただきました。
【桝田先生の回答】
スイカの花芽、ここでは雌花としておきましょう。普通、8枚目の葉(8節)くらいに雌花がついてきます。この後、6~7節毎に雌花がつきます。糖度の試験をするにはこの節(14~15節)に咲いてくる雌花に花粉を付けるとよいでしょう。
さて本題に入ります。光補償点というのは、炭酸ガスの収支がゼロになる点で、理論的にはそのままの状態を維持しうる光の強さということになります。ただし、維持代謝にエネルギーを部位別に使うのでその分、いびつで軟弱になっていくことになります。スイカの糖蓄積量は光の強さに依存し、一般には光合成速度として測定されます。スイカの光飽和点〈最大光合成速度〉は8万ルクスとされているので、真夏の太陽のもとではよく太ることになります。
夜間照明は効果がないとは言えませんが、昼間の太陽の光の強さを想像してみてください。夜の光強度をどこまで高められるかが課題となるでしょう。また、何時間照明するのかも課題です。LED を使用すれば人工光下での試験は容易になっています。ただし、植物は〈動物はもっと顕著です〉夜が無ければ正常に生育しません。もし興味があるなら、いろいろな野菜で調べていますので参照にしてください(植物環境工学23:93-100,2011).もし、スイカの肥大〈糖蓄〉と光の関係に関して興味を持たれるなら、ソフトボール大になったスイカの下に上皿バカリを据え〈ツルの重さをどのように消去するかは工夫〉、1日の日射量と果実重量を6:00と18:00に2,3週間測定し相関を取ったらいかがでしょうか?私の栽培経験からすると相関係数は相当高いものになると予想されます。
【サイエンスアドバイザー櫻井の見解(1)】:夜間は光補償点以下では糖質を多少消費するにしても、日中に蓄積した糖質の減少の程度を低下させ、全体として糖度を上げる可能性が考えられます。
【上記見解に対する桝田先生の回答】:理論的には光補償点で糖量は変化しないはずですから、夜間の照明が昼間の光合成を促進するというデータが必要となります。私は未だ知りません。光の植物に対する影響は、光合成に対してだけでなく、光形態形成(櫻井注:光は花芽の分化や葉の展開等に対しても影響する)にも及ぶので、両者を実験的に区別して評価することが難しいという問題があります。
実際、イチゴの低温処理中に照明する試験もなされておりますが、プラスマイナスゼロです。少なくともマイナスになるわけではありません。(低温処理:イチゴの花芽分化を促進するため低温〈13℃程度〉で苗を育苗する技術がありますが、この時、苗を弱らせないために人工照明を行えばいいのではないかという考え方に基づく)
【桝田先生の上記の回答等を考慮した櫻井の見解(2)】
人工光の照射がスイカの糖度の及ぼす影響についてあらかじめ的確に予測することは困難なようですが、調べてみる価値はありそうです。たとえば、相当高強度の人工光を日没前後から2時間照射し、照射しなかったものと比較することが考えられます。しかし、照射したものとしなかったものとを比較することが必要で、個体による変動もあるので、統計的に意味のある結果を出すには相当な努力を要すると思います。実験材料としては、スイカよりも果実が小さくて数が多いミニトマトなどを使うことが考えられましょう。
桝田 正治(岡山大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2017-05-31
櫻井 英博
回答日:2017-05-31