一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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カタバミの果実の根本の「黒い球」について

質問者:   自営業   mamamariko
登録番号3751   登録日:2017-05-16
カタバミを観察しており、質問があります。カタバミの果実の房(オクラのようなもの)が、時間が経過して黒く細い状態になったとき、房の付け根に「黒い2mmほどの球」が5個できているのですが、これは何でしょうか?種ですか?
mamamariko 様

 ご質問ありがとうございます。

 さっそくカタバミの果実を観察しましたが、果実の付け根にご質問にあるような黒い2mmほどの球は見られませんでした。図鑑などで調べてもみましたが、そのような記載は見つかりませんでした。果実の付け根が膨らんだ構造的なものではないようです。念のため近くでよく見かけるカタバミ科の植物のムラサキカタバミやハナカタバミも調べましたが「黒い球」の記載は見つかりませんでした。
 「黒い2mmほどの球」ということですので、種子かもしれないと思いますが、大きさと5個という数が気になります。どの果実の付け根にも5個の「黒い球」が付いていたのでしょうか?
 まだ果実が緑色の時、輪切りにしてみますと断面に未熟な種子が5個、輪状に並んでいるのを見ることができます。また、縦に切ると、未熟な種子が10個ほど列をなして並んでいるのを観察できます。(果実を採ってきて、一晩放置しておくと、果実の外側からも数を数えることができます。)このことから、1列当たり10個の列が5列あり、未熟な種子が順調に成熟すれば、1果実当たり約50個の種子ができるという計算になります。5個という数字が気になる理由です。
 カタバミの果実は成熟すると接触や振動という刺激で簡単に裂開し、種子が飛び出します。観察された5個の黒い球が種子だとすると、たまたま5個残っていたのかもしれません。また、未熟な種子が5個しか成熟しなかったのかもしれませんが、本当のところはよくわかりません。「黒い球」を播いてみて発芽するかどうか試してご覧にになったら如何でしょうか?

 上記のようにカタバミだとすると腑に落ちないことが多いと思っておりましたら、柴岡先生(JSPPサイエンスアドバイザー)から、アメリカフウロソウではないだろうかというコメントを頂きました。
 アメリカフウロソウの子房(果実になる部分)は五つの部屋に分かれていますが、成熟すると裂開して、それぞれ直径約2 mm の黒色球形の小果実(分果といいます)になります。分果の中には一つの種子が入っています。観察された「黒い球」がアメリカフウロソウの分果だとすれば、ご質問の記載と一致します。
 アメリカフウロソウは、カタバミ科と近縁のフウロソウ科に属する植物ですのでカタバミ科の植物と似ています。観察された植物がアメリカフウロソウかどうか確かめてみて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-06-02