質問者:
一般
ゆうママ
登録番号3764
登録日:2017-05-24
小学3年生の娘と一緒に、花が咲いたりしぼんたりするのは何が関係してるのか調べていました。最初に太陽の光が関係しているのか?ということで、外で咲いていた春菊の花を切って人工的に作った真っ暗な空間に入れて調べました。次に温度が関係しているのか?ということで、同じく春菊を切ってきて冷蔵庫に入れてみました。みんなのひろば
冷蔵庫に入れた春菊の切り花、なぜ咲きっぱなし?
外で咲いている春菊の花は咲いたりつぼんだりを繰り返すのに、冷蔵庫に入れた切り花の方は、入れ始めて2週間経ちましたが、いつ見ても咲いています。なぜ咲きっぱなしなんでしょうか??
ゆうママ様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。植物の何気ない現象に目を留めて、なぜだろうと疑問を持ち、調べてみようと思いつくのは素晴らしいことです。お母様も一緒になって色々娘さんにアドバイスなさっておられる様子が目に浮かびます。さて、二つのご質問は一緒にして答えることにいたします。まず3765の質問を取り上げます。花の開閉運動については過去にも幾つか質問が来ており、回答が掲載されていますので、まずそれを読んでください。登録番号0344(マツバギク)、登録番号1221(マーガレット)、登録番号1249(タンポポ)。
植物が葉や花弁を閉じたり開いたりする運動のことを「傾性運動」と呼んでいます。傾性運動を起こさせる原因は植物の種類によって同じではありませんが、一般には温度が関係しています。自然状態では朝光が当たり始めると花が開くことが多いのですが、その時は普通気温も上昇し始めています。光が全く関係ないかどうかということは、花の種類ごとに厳密な実験をしてみないとわかりませんが、幾つかの実験報告では光は直接関係ないという結論が出ています。ではなぜ温度が上昇すると開き始め、下がると閉じるのでしょうか。それは開閉のメカニズムと関係があります。花弁には表と裏の表皮がありますが、花が閉じている時気温が上昇すると、花弁で包み込まれた内側の温度は外気よりも高くなります。そうすると、表(内側)と裏(外側)の表皮細胞の成長速度に違いが生じます。つまり、成長はある温度範囲では温度が高い方が速度が速くなります。したがって、花弁は開くことになります。気温が下がると内側は直接に影響を受けやすく、外側の表皮よりも成長速度が低下します。そのため、花弁は閉じることになります。このように多くの花の開閉は花弁の表裏の表皮の成長差よって起きていますので、一種の成長運動です。サーモスタットのバイメタルの原理に似ています。ほんのちょっとの差が大きな変化のように見えるのです。また、すべての植物にはただ温度が低いとか高いとかの大雑把なことではなく、それぞれ決まった温度域が必要です。例えばよく教科書に出てくるチューリップはある報告では17〜25℃で開き、16〜8℃で閉じるようです。しかし、もっと低い温度で開くという報告もありますので、正確な実験条件や使用した品種などで比較しないと分かりません。このように温度に反応して起きる運動現象を「温度傾性」あるいは「傾熱性」などと言います。
なぜ花は開いたり閉じたりするのかということは、実験的に解析するのは難しいのですが、生態的な意味を考えることはできます。花は植物にとって次世代への種子を作るのにとても大切な器官です。虫媒花だと昆虫が来るのは気温が上がってからが普通ですので、それに合わせて開花することも考えられます。仮に夜間の気温が低い時に開きぱなしだと、種子が出来ていく過程に支障を生じたりするかもしれない。あるいは夜露(雨の日もそうですが)で花の内部が湿りすぎてカビヤバクテリアが繁殖したりするかもしれない。それに虫媒花では夜は昆虫が来ないので、これらのリスクを冒してまでも花を開いたままにしておく必要はないのでしょう。などなど。
しかし、花にもいろいろな種類がありますので、その開花の時期や原因を一義的に説明することはできません。「月下美人」などは夜のある時間になると開き始め、一晩でしぼみますね。イネの花も非常に短い時間にしか開いていません。また、一度咲いたらそのまま枯れるまで開きっぱなしという花も多いですね。それぞれの植物に受粉・受精・種子形成という一連の過程にとって最適な方式が進化の中で出来上がってきたのでしょう。
ところで、登録番号3764の質問ですが、シュンギクも他の多くのキク科の花のように温度傾性を示すはずです。ただ、開花、閉花の温度域は分かりません。冷蔵庫内(野菜室?)の温度は7〜10℃ですから、もし戸外で開く温度と野菜室の温度が重なっていれば、開いていてもおかしくありませんね。また、そのシュンギクの花がすでに受粉が済んで、あとは枯れるだけというのであれば開閉の成長運動を続ける必要はないので、そのまま開いているのかもしれません。もう少し、条件をいろいろ絞って調べてみてください。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。植物の何気ない現象に目を留めて、なぜだろうと疑問を持ち、調べてみようと思いつくのは素晴らしいことです。お母様も一緒になって色々娘さんにアドバイスなさっておられる様子が目に浮かびます。さて、二つのご質問は一緒にして答えることにいたします。まず3765の質問を取り上げます。花の開閉運動については過去にも幾つか質問が来ており、回答が掲載されていますので、まずそれを読んでください。登録番号0344(マツバギク)、登録番号1221(マーガレット)、登録番号1249(タンポポ)。
植物が葉や花弁を閉じたり開いたりする運動のことを「傾性運動」と呼んでいます。傾性運動を起こさせる原因は植物の種類によって同じではありませんが、一般には温度が関係しています。自然状態では朝光が当たり始めると花が開くことが多いのですが、その時は普通気温も上昇し始めています。光が全く関係ないかどうかということは、花の種類ごとに厳密な実験をしてみないとわかりませんが、幾つかの実験報告では光は直接関係ないという結論が出ています。ではなぜ温度が上昇すると開き始め、下がると閉じるのでしょうか。それは開閉のメカニズムと関係があります。花弁には表と裏の表皮がありますが、花が閉じている時気温が上昇すると、花弁で包み込まれた内側の温度は外気よりも高くなります。そうすると、表(内側)と裏(外側)の表皮細胞の成長速度に違いが生じます。つまり、成長はある温度範囲では温度が高い方が速度が速くなります。したがって、花弁は開くことになります。気温が下がると内側は直接に影響を受けやすく、外側の表皮よりも成長速度が低下します。そのため、花弁は閉じることになります。このように多くの花の開閉は花弁の表裏の表皮の成長差よって起きていますので、一種の成長運動です。サーモスタットのバイメタルの原理に似ています。ほんのちょっとの差が大きな変化のように見えるのです。また、すべての植物にはただ温度が低いとか高いとかの大雑把なことではなく、それぞれ決まった温度域が必要です。例えばよく教科書に出てくるチューリップはある報告では17〜25℃で開き、16〜8℃で閉じるようです。しかし、もっと低い温度で開くという報告もありますので、正確な実験条件や使用した品種などで比較しないと分かりません。このように温度に反応して起きる運動現象を「温度傾性」あるいは「傾熱性」などと言います。
なぜ花は開いたり閉じたりするのかということは、実験的に解析するのは難しいのですが、生態的な意味を考えることはできます。花は植物にとって次世代への種子を作るのにとても大切な器官です。虫媒花だと昆虫が来るのは気温が上がってからが普通ですので、それに合わせて開花することも考えられます。仮に夜間の気温が低い時に開きぱなしだと、種子が出来ていく過程に支障を生じたりするかもしれない。あるいは夜露(雨の日もそうですが)で花の内部が湿りすぎてカビヤバクテリアが繁殖したりするかもしれない。それに虫媒花では夜は昆虫が来ないので、これらのリスクを冒してまでも花を開いたままにしておく必要はないのでしょう。などなど。
しかし、花にもいろいろな種類がありますので、その開花の時期や原因を一義的に説明することはできません。「月下美人」などは夜のある時間になると開き始め、一晩でしぼみますね。イネの花も非常に短い時間にしか開いていません。また、一度咲いたらそのまま枯れるまで開きっぱなしという花も多いですね。それぞれの植物に受粉・受精・種子形成という一連の過程にとって最適な方式が進化の中で出来上がってきたのでしょう。
ところで、登録番号3764の質問ですが、シュンギクも他の多くのキク科の花のように温度傾性を示すはずです。ただ、開花、閉花の温度域は分かりません。冷蔵庫内(野菜室?)の温度は7〜10℃ですから、もし戸外で開く温度と野菜室の温度が重なっていれば、開いていてもおかしくありませんね。また、そのシュンギクの花がすでに受粉が済んで、あとは枯れるだけというのであれば開閉の成長運動を続ける必要はないので、そのまま開いているのかもしれません。もう少し、条件をいろいろ絞って調べてみてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-06-01
勝見 允行
回答日:2017-06-01