一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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裸子植物被子植物の花弁

質問者:   教員   ゆーと
登録番号3773   登録日:2017-05-28
裸子植物には花弁がない花を持っていると教科書で見ました。そこで疑問なのですが、花弁のある植物は全て被子植物に分類されるんでしょうか。
ゆうと様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の解答を東京大学の塚谷裕一先生にお願いしました所、以下の様な丁寧なご解答をお寄せ下さいました。しっかり勉強して下さい。

【塚谷先生のご回答】
ゆうとさん
質問をありがとうございます。この話、正確に答えようとするといろいろ面倒なんです。1つずつ説明します。
まず裸子植物には花弁がないという点です。実は「花」は被子植物が作る生殖器官という定義があって、その定義からすると自動的に裸子植物には花がないことになります。ということは当然のこととして花弁もありません。ただし、それなら裸子植物の、花粉や胚珠をつける生殖器官をなんと呼ぶのかというと、これが実は専門用語しかないのですね。仕方ないので、一般向けの本などでは簡単に「花」あるいは「花にあたるもの」のように書くことがあります。ですが、これはあえて言えば、という話になります。花じゃないのだったらそこにつくものも花粉でもないのではないか、と思うでしょう?ここはとりあえず、花粉、というところまではOKとする人が多いようです。面倒ですね。裸子植物は被子植物に比べて種類も少なく、日本では材木などの形でしかなかなか接する機会がないので、ふだんの言葉で表現するのが難しいのです。
ただもし裸子植物の生殖器官が花だとしても、花弁は確かにありませんね。胚珠を抱えた器官や花粉を抱えた器官がそれぞれ雌しべや雄しべに相当するとした場合、その外側に特別な器官があれば萼片や花弁ということになりますが、そういうものがみあたらないので。
で、次にご質問のそもそものポイントの、「花弁のある植物は全て被子植物に分類される」のか、という点です。これは上記の通り、被子植物が作る生殖器官は「花」ですし、花弁は花にしか作られないので、答としてはYesです。ただし花の中のどの部分を花弁と呼ぶのかは、約束があって、花というひとまとまりの構造があった場合、その一番外側に並んでいる器官を萼片と定義することになっています。そうするとキンポウゲの仲間のように、花の内側からたどっていって雌しべ、雄しべ、その外に一回りしか器官がないときは、それが黄色などに色づいてきれいな色をしていても、萼片とみなします。花弁は、萼片の内側にもう1つ、雄しべの手前に別の器官があるとき、それを花弁と呼ぶことになっているのです。ですから萼片はあるものの花弁を持たない被子植物もいます。ちなみに萼片をすら持たない被子植物もいます。
というわけで、言葉の定義が先にあるものですから、いろいろ面倒なことになっているわけでした。
でも答としてはシンプルです。花は被子植物しか持たないことになっていて、花弁はその中の特殊な器官ですから、「花弁のある植物は全て被子植物」です。

 塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科) 
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2017-06-06
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