質問者:
その他
駒井健也
登録番号0378
登録日:2005-09-07
こんにちは僕は前にもお世話になりました。今回もよろしくお願いします。みんなのひろば
2つ質問させていただきます。
ぼくが疑問に思ったことは2つあります。
1つ目は、植物の化石は、なぜ、何万年も時が過ぎているのに、なくならないんですか?
2つ目は、その県だけにしかないの固有の植物は、なぜそこにしかないのですか?
その植物はどのような理由で誕生したのですか?
分かりにくい文章ですいません。
お願いします
駒井健也 様
日本植物生理学会 みんなの広場から質問が転送されて来ましたので,私なりにお答えしておきます.私の専門は,実際に化石を扱っている古植物学ですから,なんとかお答えできると思います.
1について.
化石といってもそれが作られる過程から保存のされ方まで,実はいろいろなものがあります.残りにくいと思われるような動物の化石でも,時には驚くようなものも保存されます.たとえば,中国でみつかった,6億年前の動物の授精卵が分裂を始め(胚発生といいます),子供も形を作ってゆく時の様子が残された化石はその例です.冷凍マンモスも化石と呼ばれます.ただ,動物は,腐りやすいので,植物より化石として残りにくいということはあります.では,なぜ植物は残りやすいのでしょう.
植物の細胞には,細胞を包む膜(細胞膜;動物にもある)の外側に細胞壁という丈夫な膜があります.聞いたこととがあると思いますが,セルロースという丈夫で分解されにくい化学物質が細胞壁には含まれていて,植物細胞の形を壊れにくくしています.また,木が作る材木にはさらに丈夫なリグニンという物質があるので,木の幹がそのままの形で残されるようなこともあります.
よく目にする植物の化石は,葉が押し型のようになったものですが,この場合は葉>の細胞や組織は無くなっていますが,植物の形は細胞壁があったおかげで壊れにくいので,そのまま葉脈の走りかたなども含めて残されています.
化石になると,植物を作っていたもとの物質は無くなるか,岩石に含まれる鉱物の成分によって置き換えられているのがふつうです.こうなると,形は植物の姿をしていますが,石と同じです.石が長く残るのと同じで,植物化石も地層の動きで壊されたり,地中の熱や化学物質で壊されたり,地上で風化されない限りは,保存されます.
植物化石にもいろいろあると書きましたが,地上に最初に現れてきた植物の化石で最も古いものは,4億2千万年前のものです.それ以前の植物は,水の中に住んでいた藻類です.藻類の細胞壁はあまり丈夫でないので,化石として残っている藻類はほとんどありません.
植物の進化については,私が書いた「植物のたどってきた道」(NHKブックス)という本にまとめてあります.図書館などで探してみてください.少し難しいかもしれませんが,化石のいろいろなども書いてあります.
2. 植物にとって,人間が勝手に決めた県や国はありません.ただ,私たちはどこに何がどのように,なぜ住んでいるのかを知りたがります.それが科学の入り口でもありますから,そのためにはきちんと情報としてまとめる必要があります.そのときに,どこにいるかという住所録として使いやすいのは,市や県といった,区分けです.
そうしてどこにどのような植物がいるうのかまとめてみると,なかには,ある県にしかみつからないというようなものも出てきます.もう一つの事情は,県などの境目は,山や川などの自然界の境目をめやすにしていることが多いということです.つまり,環境が似ている地域が県としてまとまりやすいのです.天気だって本当は連続しているのに,県ごとの天気予報は皆さん使っていますよね.
これまでの説明は,人間側の説明ですが,植物がわから見ると,別の理由もあります.植物も動物も進化していることは聞いたことがありますね.進化というのは,新しい種が生まれてゆくことですが,新しい種というのは,少しづつ時間と共に遺伝子が変化してゆく間に,それまでの種の遺伝子との違いが大きくなり,しまいには互いの間で子供が作れなくなってしまうことで生まれてきます.このように遺伝子の違いがたまりやすい条件のひとつに,地理的な隔離,つまりある種のすみかが同じ種のほかの仲間たちから離されてしまうということがあります.極端な例は,ハワイや小笠原のような島です.先に説明したように,県などの境にも大きな山や川,もっと小さい単位でも小さな湿原や高山の草原など隣の環境と区切られるか,かけ離れた場所があります.このような所で新しい種が生まれやすいので,そうなると固有の種ができることになります.
また,新しい種とは別に,限られた環境に古い種が残される場合もあります.この場合は,同じ種が他では絶滅し,限られた地域に固有種として残っていることになります.中国だけに生き残っていたイチョウや,日本の固有種コウヤマキもそうですし,高山植物のなかには,昔日本がもっと寒い時代(氷河期など)に北から移動してきた植物が,涼しい高山だけに残されたというものがたくさんあります.
充分答えられたかどうかわかりませんが,とりいそぎお返事いたします.いろいろなことに興味をもって,調べてみてください.
日本植物生理学会 みんなの広場から質問が転送されて来ましたので,私なりにお答えしておきます.私の専門は,実際に化石を扱っている古植物学ですから,なんとかお答えできると思います.
1について.
化石といってもそれが作られる過程から保存のされ方まで,実はいろいろなものがあります.残りにくいと思われるような動物の化石でも,時には驚くようなものも保存されます.たとえば,中国でみつかった,6億年前の動物の授精卵が分裂を始め(胚発生といいます),子供も形を作ってゆく時の様子が残された化石はその例です.冷凍マンモスも化石と呼ばれます.ただ,動物は,腐りやすいので,植物より化石として残りにくいということはあります.では,なぜ植物は残りやすいのでしょう.
植物の細胞には,細胞を包む膜(細胞膜;動物にもある)の外側に細胞壁という丈夫な膜があります.聞いたこととがあると思いますが,セルロースという丈夫で分解されにくい化学物質が細胞壁には含まれていて,植物細胞の形を壊れにくくしています.また,木が作る材木にはさらに丈夫なリグニンという物質があるので,木の幹がそのままの形で残されるようなこともあります.
よく目にする植物の化石は,葉が押し型のようになったものですが,この場合は葉>の細胞や組織は無くなっていますが,植物の形は細胞壁があったおかげで壊れにくいので,そのまま葉脈の走りかたなども含めて残されています.
化石になると,植物を作っていたもとの物質は無くなるか,岩石に含まれる鉱物の成分によって置き換えられているのがふつうです.こうなると,形は植物の姿をしていますが,石と同じです.石が長く残るのと同じで,植物化石も地層の動きで壊されたり,地中の熱や化学物質で壊されたり,地上で風化されない限りは,保存されます.
植物化石にもいろいろあると書きましたが,地上に最初に現れてきた植物の化石で最も古いものは,4億2千万年前のものです.それ以前の植物は,水の中に住んでいた藻類です.藻類の細胞壁はあまり丈夫でないので,化石として残っている藻類はほとんどありません.
植物の進化については,私が書いた「植物のたどってきた道」(NHKブックス)という本にまとめてあります.図書館などで探してみてください.少し難しいかもしれませんが,化石のいろいろなども書いてあります.
2. 植物にとって,人間が勝手に決めた県や国はありません.ただ,私たちはどこに何がどのように,なぜ住んでいるのかを知りたがります.それが科学の入り口でもありますから,そのためにはきちんと情報としてまとめる必要があります.そのときに,どこにいるかという住所録として使いやすいのは,市や県といった,区分けです.
そうしてどこにどのような植物がいるうのかまとめてみると,なかには,ある県にしかみつからないというようなものも出てきます.もう一つの事情は,県などの境目は,山や川などの自然界の境目をめやすにしていることが多いということです.つまり,環境が似ている地域が県としてまとまりやすいのです.天気だって本当は連続しているのに,県ごとの天気予報は皆さん使っていますよね.
これまでの説明は,人間側の説明ですが,植物がわから見ると,別の理由もあります.植物も動物も進化していることは聞いたことがありますね.進化というのは,新しい種が生まれてゆくことですが,新しい種というのは,少しづつ時間と共に遺伝子が変化してゆく間に,それまでの種の遺伝子との違いが大きくなり,しまいには互いの間で子供が作れなくなってしまうことで生まれてきます.このように遺伝子の違いがたまりやすい条件のひとつに,地理的な隔離,つまりある種のすみかが同じ種のほかの仲間たちから離されてしまうということがあります.極端な例は,ハワイや小笠原のような島です.先に説明したように,県などの境にも大きな山や川,もっと小さい単位でも小さな湿原や高山の草原など隣の環境と区切られるか,かけ離れた場所があります.このような所で新しい種が生まれやすいので,そうなると固有の種ができることになります.
また,新しい種とは別に,限られた環境に古い種が残される場合もあります.この場合は,同じ種が他では絶滅し,限られた地域に固有種として残っていることになります.中国だけに生き残っていたイチョウや,日本の固有種コウヤマキもそうですし,高山植物のなかには,昔日本がもっと寒い時代(氷河期など)に北から移動してきた植物が,涼しい高山だけに残されたというものがたくさんあります.
充分答えられたかどうかわかりませんが,とりいそぎお返事いたします.いろいろなことに興味をもって,調べてみてください.
中央大学理工学部
西田治文
回答日:2009-07-03
西田治文
回答日:2009-07-03