一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トロフォビオーゼ理論(Trofobiose)と害虫について

質問者:   その他   農業研修生
登録番号3784   登録日:2017-06-10
トロフォビオーゼ理論というものがあるそうですが、検索した限りでは、英語圏では一般的ではない?ようですし、あまり出てこないため質問させていただきます。

無機態窒素から光合成によって作られた糖類と結合し、まず遊離アミノ酸(グルタミン酸?)となり、さらに蛋白質が作られるそうですが、この合成過程の途中である遊離アミノ酸が昆虫のエサとなるそうです(アブラムシなどのことだと思われます)。

植物体内の遊離アミノ酸を早く蛋白質に変えれば、害虫はエサが減り、どこかの場所に移動します。逆に施肥栄養のアンバランスによって蛋白質の合成がスムーズにいかないと、汁液中に遊離アミノ酸が増え、それをエサとする害虫が増えるそうです。

各種アミノ酸を与えることでプロテオシンテゼを早く進ませ植物体内の無機態窒素、及び遊離アミノ酸の濃度を下げ、病害虫の影響を減らし、作物の品質を上げられるそうです。

そのようなことが実際に起きるのでしょうか?実際にアミノ酸を主体とした葉面散布剤も販売されています。

窒素を多く含む肥料を与えると病害虫に弱くなるといわれますが、減らせば収量が減ってしまいます。植物のアミノ酸合成は、グルタミン酸など限られたアミノ酸から始まるようですし、タンパク質合成を促す各種アミノ酸を作物に与えれば、ある程度窒素を含む肥料を与えても病害虫の影響を減らせるというのは理論的に頷けると思えるのですが。
農業研修生 さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
Trofobioseはスペイン語、ポルトガル語で英語のTrophobiosisにあたります。

昆虫生態で異種間の関係に栄養共生(Trophobiosis)という現象があります。共生の一つの型で、1つの種が他の種から栄養の供給を受ける代わりに、他の種を保護、防御あるいは養育する関係にあることを指しています。例えばアリがアリマキの蜜汁をもらう代わりにアリマキを他の捕食者から守っている関係です。病害虫も植物から栄養を収奪することも「共生」の一つと解釈(科学的には間違っています)してtrophobiosisの一形態とみなし「病害虫に対する作物の感受性は作物の栄養状態と強い関係にある。病害虫は健康な植物を避けるが植物の内部代謝に変調を来した植物を攻撃する。殺虫剤を作物に施用すると代謝系にも影響して作物は弱ってくる、その結果病害虫の被害を受けやすくなる。もっともよいことは作物の光合成をはじめ代謝系を活発にさせて作物を健康に保つことが病害虫の被害を最小にすることである。そのためには農薬、化学肥料の使用をしない方がよい」とする考えを「Trophobiosis Theory」としてフランスのある農学者が提唱しています。一部、特にブラジルの無農薬農業、有機栽培農業推進団体などの支持を受けている面もありますが、このTheory自体がかなり観念的(エッセイ的に何かに書かれた一文で科学論文の形で公表されたものではない)で、実証に基づくものとは思えない(根拠となる実証結果が発表されていない)のでその真偽、功罪は読者の判断にお任せするしかありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-06-19
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