一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クチナシの花弁の数

質問者:   大学生   猫の目
登録番号3787   登録日:2017-06-15
学校からの帰り道にクチナシが植えられています。
クチナシの花びらは6枚だと思っていましたが、ふと見ると5枚のものがありました。よく観察すると花びらが4枚、5枚、6枚、7枚、8枚のものがあり、おしべの数は花弁と同じだけありました。おしべや雌しべが花弁になるという話は聞いたことがあるのですが、これはそういうわけではなさそうです。なぜこのようなことが起こるのか知りたくて質問させていただきました。
猫の目 様

植物生理学会の「みんなのひろば」にご質問を下さりありがとうございます。
植物の形態形成、発生遺伝にお詳しい、塚谷裕一先生に回答をお願い致しました。
なお、[植物Q&A ]登録番号0675 の「桜の花弁の数について」は、同じく塚谷先生が回答されておられますので、参考になさって下さい。


【塚谷先生のご回答】
猫の目さん

ご質問ありがとうございます。
クチナシですが、たしかに通常6弁ですね。時々八重咲きが植えられていることもありますが、一重の原種タイプですと基本は6です。野生の株で見ると比較的この数は守られているようですが、ときどきずれる個体や枝もありますね。そこで不思議なのは、実はクチナシが属するアカネ科という科が、科レベルとしては珍しく花弁数がいろいろ多様なのです。例えばよく道端に生えているヘクソカズラもアカネ科ですが、あれは5弁が基本(ただしやはり4−6とずれがち)ですし、生け垣などによく植えられるハクチョウゲも5枚が基本でときどき4弁や6弁になります。また科の名前になっているアカネは4弁。夏の花壇によく植えられているイクソラも4弁です。ですので、このグループは比較的、花弁の基本数が変わりやすいようです。

その上でなぜ花弁数が変化するかですが、1つは花を作る場のサイズ(花芽のサイズと言っても良いかもしれません)が影響します。モデル植物のシロイヌナズナでも、花芽のサイズがぐらつくと、それに応じて花弁(や雄しべ)の数が変動します。野生型ですと、花芽のサイズが一定になるような仕組みが強くはたらくので、4枚の花弁というルールはかなりしっかり守られるのですが、そこに異常が起きると、花弁の数がふらつくのです。

またそれとは別に、花弁の位置を決める因子が変化することでも、花弁の枚数は変わります。そういう場合は、花弁の数が変動した反動で、雄しべの数が逆に振れることもあります。

猫の目さんが観察された事例では、花弁の数の変動と共に雄しべの数も同じように変化しているということですから、おそらく花芽のサイズが何らかの理由でぶれていて、その結果として花弁も雄しべも数が変化しているのだと思われます。


 塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-06-19
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