一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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気孔の数を数えることはできるか?

質問者:   中学生   COCO
登録番号3799   登録日:2017-06-21
夏休みの自由研究を考えています。
身近な植物の気孔の数を、成育条件を変えて調べてみようと思います。中学校にあるレベルの顕微鏡(理科室で借りようと思います。)で、気孔を見る(観察)することはできますが、その数を数えることは可能ですか? 葉、1平方cmあたりの気孔の数を数えることはできますか? 膨大な数になりそうなので、1平方㎜あたりの数の方が現実的でしょうか?
方法としては、スンプ法でやってみようと思います。

ご教示をよろしくお願いします。


COCO さま

ご質問ありがとうございます。
気孔の形成についての研究をご専門とされている島根大学の中川強先生に回答していただきました。

【中川先生のご回答】
ご質問ありがとうございました。おもしろい自由研究になりそうですね。

 気孔密度(単位面積当たりの気孔数)は植物によって異なりますが、100〜200(個/平方ミリメートル)くらいありますので、1平方センチメートルあたりの気孔数を実際に数えるのはかなり大変な作業になります。もっと小さな面積当たりの気孔数を数えて、気孔密度を計算するのが良いと思います。スンプ法で取った型を中学校の顕微鏡で観察し、視野の中に見えている気孔を全て数えます。倍率が低すぎると視野中の気孔が多くなり数えるのが大変ですし、逆に高すぎると気孔の数が少なすぎて誤差が大きくなりますので、適当な数になる倍率で数えます。これで、一定面積(ある倍率での視野)あたりの気孔数がわかります。条件を変えて育てた植物でも同じように気孔の数を測定することで、気孔密度の比較を行うことができます。
 
 次に単位面積あたりの気孔数を計算してみましょう。通常使われるのは1平方ミリメートルあたりの気孔数(数/mm2)ですので、視野が何mm2なのか調べてみましょう。学校に対物ミクロメーターがあれば、気孔観察の時と同じレンズで見て視野の直径 (mm)を測ってみましょう。次に視野の面積 (mm2)を計算し、視野中の気孔数を視野の面積で割れば気孔密度(数/mm2)を求めることができます。また、接眼レンズに10X/20のような数字が書かれていないでしょうか。/のうしろの数字は接眼レンズの視野数 (mm)とよばれるもので、視野数を対物レンズの倍率で割った値が視野の直径(mm)になります。例えば接眼レンズの視野数が20、対物レンズの倍率が40倍の場合、視野の直径は20÷40 = 0.5 (mm) となりますので、視野の面積は0.25x0.25x3.14 = 0.196 mm2と計算されます。

 以上は顕微鏡をのぞいて視野の中の全気孔数を数える方法ですが、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した顕微鏡画像を使うともっと楽に数えられると思います。対物ミクロメーターの目盛りを撮影しておくと画像上の長さがわかります。例えば顕微鏡画像に1辺が0.3mmの正方形(面積0.09mm2)を設定し、その中の気孔数を数えて気孔密度を出すことができます。

 気孔密度は葉の表側と裏側で違う場合がありますし、同じ面でも葉の部位によって違います。生育条件を変えた植物で気孔数の比較を行う場合には、それぞれの葉の同じような場所で数えるのが良いと思います。

 中川 強(島根大学・生物資源科学部)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-07-22