質問者:
小学生
かん
登録番号3827
登録日:2017-07-21
紙漉き体験をしたことから、紙が植物からできていることを知り、夏休みの自由研究で、身近な野菜や果物から紙が作れるかどうかの実験をしてみました。みんなのひろば
野菜から紙が作れなかった理由は
試したものは、ニンジン、ゴボウ、白菜、レタス、ナス、玉ねぎの皮、スイカの皮、オレンジの皮の8種類です。
工程は、煮る→ミキサーにかける→枠に流し込む→水分を取り下敷きにはりつけて自然乾燥させる、です。つなぎになる糊などは入れていません。
白菜、レタス、玉ねぎの皮、オレンジの皮は紙(シート状)になりました。繊維が絡み合ってつながった感じになってます。
ニンジン、ゴボウは乾燥の途中で縮んで裂けてしまい、バラバラになってしまいました。
スイカは裂けなかったけれど少し縮みました。
繊維がありそうな根菜類が紙にならなかったのはなぜでしょうか?
葉野菜と根菜とでは繊維のかたちが違うのですか?
野菜の繊維について調べてみたのですがわからないのでおしえてください。
よろしくおねがいします。
かん さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
とても面白い自由研究ですね。いろいろ工夫してどんな野菜から、どんなことをしたらよい紙が作れるか、研究をまとめてみて下さい。紙は直径が0.1mm以下の細長い線状のもの(繊維)を絡ませて薄い平板に成形したもので、材料は植物起源が主ですが動物起源のものや最近では合成樹脂を繊維状にしたものも使われています。不織布(不織紙)は紙として扱われているようです。
植物細胞の形には球状、楕円体状、棒状、平板状(ジグソーパズルの駒状を含む)、細長い線状などがあり、植物の器官内でそれぞれ固有の働きをしています。各細胞は細胞壁というセルロースを主体とした数種の多糖類(ヘミセルロース、ペクチンなど)からなる丈夫な構造体を外壁としています。細胞の種類によって二次細胞壁が形成されて細胞壁は厚くなり、リグニンが沈着(木質化)するものがあります(厚壁細胞)。厚壁細胞のうち細長い形のものが繊維細胞で、その他いろいろの形をしたものを厚壁異型細胞と名づけています。ふつう繊維細胞は維管束の篩部と導管部を形成したり維管束近辺に出来たりして、葉脈、茎や根の通導組織がこれに当たります。茎で見ると二次篩部が主となっている樹皮、二次木部(導管、仮導管)が主となっている木材部分は繊維細胞からなるので製紙しやすいことになります。和紙の材料はミツマタ、コウゾなどの樹皮を材料(靭皮、篩部繊維)としていますし、洋紙は木部繊維を主材料としています。
さて、野菜というのは食べることを主として育種してきたものですから「食べやすい」→「繊維が多くない」ことも選択形質の重要な要素となっていますので、もともと製紙にはむいていない材料です。しかし、白菜、レタス、玉ねぎの皮などは変形した葉で、ある程度の葉脈があるので紙になったのでしょうし、オレンジの皮は白い部分が内果皮で繊維状の組織です。一方、ニンジン、ゴボウは二次維管束系の発達が少なく、皮相、中心柱内の柔組織が主、スイカの皮は最外層が外果皮、その内側の固く白い部分が中果皮/内果皮で殆どが柔細胞ですからリグニン化した繊維が少なく紙になりにくかったのだと思います。言い換えると繊維の種類が違うと言うよりも繊維の量が紙になりやすいか、なりにくいかではないかと思います。ちなみにミズナ、コマツナはかなり長い繊維がたくさんあるようですね。
もう一つ考えられることは、植物組織から繊維を取り出す方法、操作も関係しているかもしれません。製紙過程では、繊維をよく「叩く」操作が重要なようです。よく叩くことによって繊維組織からリグニンやその他の成分を取り除くためと繊維表面を物理的に「毛羽立たせて」紙を梳くときに繊維を絡みやすくするためのようです。ニンジン、ゴボウなどはジューサーで1回組織を崩すだけでなく、崩した組織を洗って再度ジューサーをかける(それを繰り返す)などしてみたら十分な量のよい繊維が得られるのではないかと思います。また、製紙では「糊」(膠着剤)を使うのが普通のようです。和紙製造ではトロロアオイの根からとれる粘液物質(ネバネバ)を使うようです。身近なものではオクラ(トロロアオイと同じ仲間)のネバネバがあります。
試してみたら如何でしょう。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
とても面白い自由研究ですね。いろいろ工夫してどんな野菜から、どんなことをしたらよい紙が作れるか、研究をまとめてみて下さい。紙は直径が0.1mm以下の細長い線状のもの(繊維)を絡ませて薄い平板に成形したもので、材料は植物起源が主ですが動物起源のものや最近では合成樹脂を繊維状にしたものも使われています。不織布(不織紙)は紙として扱われているようです。
植物細胞の形には球状、楕円体状、棒状、平板状(ジグソーパズルの駒状を含む)、細長い線状などがあり、植物の器官内でそれぞれ固有の働きをしています。各細胞は細胞壁というセルロースを主体とした数種の多糖類(ヘミセルロース、ペクチンなど)からなる丈夫な構造体を外壁としています。細胞の種類によって二次細胞壁が形成されて細胞壁は厚くなり、リグニンが沈着(木質化)するものがあります(厚壁細胞)。厚壁細胞のうち細長い形のものが繊維細胞で、その他いろいろの形をしたものを厚壁異型細胞と名づけています。ふつう繊維細胞は維管束の篩部と導管部を形成したり維管束近辺に出来たりして、葉脈、茎や根の通導組織がこれに当たります。茎で見ると二次篩部が主となっている樹皮、二次木部(導管、仮導管)が主となっている木材部分は繊維細胞からなるので製紙しやすいことになります。和紙の材料はミツマタ、コウゾなどの樹皮を材料(靭皮、篩部繊維)としていますし、洋紙は木部繊維を主材料としています。
さて、野菜というのは食べることを主として育種してきたものですから「食べやすい」→「繊維が多くない」ことも選択形質の重要な要素となっていますので、もともと製紙にはむいていない材料です。しかし、白菜、レタス、玉ねぎの皮などは変形した葉で、ある程度の葉脈があるので紙になったのでしょうし、オレンジの皮は白い部分が内果皮で繊維状の組織です。一方、ニンジン、ゴボウは二次維管束系の発達が少なく、皮相、中心柱内の柔組織が主、スイカの皮は最外層が外果皮、その内側の固く白い部分が中果皮/内果皮で殆どが柔細胞ですからリグニン化した繊維が少なく紙になりにくかったのだと思います。言い換えると繊維の種類が違うと言うよりも繊維の量が紙になりやすいか、なりにくいかではないかと思います。ちなみにミズナ、コマツナはかなり長い繊維がたくさんあるようですね。
もう一つ考えられることは、植物組織から繊維を取り出す方法、操作も関係しているかもしれません。製紙過程では、繊維をよく「叩く」操作が重要なようです。よく叩くことによって繊維組織からリグニンやその他の成分を取り除くためと繊維表面を物理的に「毛羽立たせて」紙を梳くときに繊維を絡みやすくするためのようです。ニンジン、ゴボウなどはジューサーで1回組織を崩すだけでなく、崩した組織を洗って再度ジューサーをかける(それを繰り返す)などしてみたら十分な量のよい繊維が得られるのではないかと思います。また、製紙では「糊」(膠着剤)を使うのが普通のようです。和紙製造ではトロロアオイの根からとれる粘液物質(ネバネバ)を使うようです。身近なものではオクラ(トロロアオイと同じ仲間)のネバネバがあります。
試してみたら如何でしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-07-26
今関 英雅
回答日:2017-07-26