質問者:
一般
ガガジュマル
登録番号3838
登録日:2017-08-03
東京都内の屋上でパンダガジュマルを育てていますみんなのひろば
パンダガジュマルの種が発芽したのはなんででしょうか?
最近花が熟れてきていたので試しに種を採種し発芽するか試してみた所
8つの双葉が現在出ています。
東京都内で発芽する種をパンダガジュマルが受粉していたのはなんででしょうか?
観察した状況だけ説明させてください
・育てている期間は5月に購入したので三ヶ月目です
・花は買ってきて一ヶ月目までは小さいまま黒くなり落ちていきました、そしてまた花が生えてくるを繰り返していました
・二ヶ月目で花が膨れはじめてきましたがある程度大きくなると黒く固くなり落ちてしまいました
・三ヶ月目で花はピンク色→紫や黒に近い色になってパンパンに熟れて熟れたまま落ちる様になりました、それを採種ました。
・また、二週間前に熟れた花がおちていたので試しに割った所 小さな黒いハチのようなものがいました
イチジクコバチというものがガジュマルのポリネーターだと聞いたことがあったため、ジップロックに入れてその花と虫を冷凍してあります。
花は受粉しないと黒く固くなり落ちると聞いたことがあるため、熟れた物はなんらかの影響によって受粉したのではないかと考えられます
虫が花のなかに入っていたのを確認できたのはまだ一度のためよくわかりません
鹿児島産のパンダガジュマルですがなぜ一ヶ月目は花が黒くなり落ちていたのに三ヶ月目で受粉するようになったのかが疑問です
東京都内の環境にパンダガジュマルが適応し、受粉を助ける生き物がいるとう事なのでしょうか?
教えて下さい
ガガジュマル さま
ご質問ありがとうございます。
植物と昆虫の共進化(複数の生物が互いに関連しながら進化すること)をご専門に研究されている山形大学の横山潤先生に回答していただきました。
【横山先生のご回答】
ご指摘の通り、ガジュマルを含むイチジクの仲間(イチジク属Ficus)の受粉は、自然界ではイチジクコバチ類だけが担っています。しかも、イチジクコバチ類なら何でもよいという訳ではなく、それぞれのイチジクの種類に対して、ある決まったイチジクコバチの種類が存在していて、それが受粉を行う必要があります。ガジュマルにはガジュマルコバチ(和名は仮称、Eupristina verticillata)が共生していて、このハチだけが受粉を行います。受粉に使われる花粉は、イチジクコバチ類の雌が自分が育った花嚢(かのう:ご質問で「花」とされている部分です)から離れる際に持ってくるもので、同じ花嚢内での受粉は、雄の花と雌の花(イチジクの仲間は、花嚢内に小さな単性花(一つの花に雄しべか雌しべ、どちらかしかない花)を多数付けるのが一般的です)の開花時期が大きくずれていますので、行われません。ですので、種子が出来たということは、花粉とハチを出した他のガジュマル個体がいたという事を示しています。異種(東京なら可能性があるのはイヌビワかイタビカズラで、特に前者は23区内にも自生が見られる程普通種です)のイチジクコバチが入った可能性もありますが、それなら他の種類の花粉がつくはずですから、ガジュマルの種子は作られません。小さい黒いハチのようなものが入っていたとありましたので、ガジュマルコバチがなんらかの原因で東京の空を飛んでいて、花嚢に入って受粉と産卵を行った可能性があります。
ガジュマルの国内での自然分布は、屋久島以南の薩南・琉球列島で、小笠原では野生化が確認されています。もともと小笠原に導入されたガジュマルにはガジュマルコバチがおらず、種子を作らなかったのですが、1990年代に(人為的な原因とされていますが)ガジュマルコバチが侵入し、現在では自生範囲と同様に種子繁殖を行っています。これらの地域にはガジュマルコバチがいますので、それらの地域から何らかの原因で飛んできた(あるいは飛ばされてきた)という可能性も全くないわけではありません。ただし、ガジュマルコバチが花嚢を離れて活動できる時間はせいぜい1日程度ですので、屋久島でも小笠原でも約1000kmを飛んで(飛ばされて)くる可能性は、かなり低いと考えられます(海外の事例だと、イチジクコバチ類が160km程度飛んだという記録はありますが)。他に想定される状況としては、ガジュマルコバチが既に入っていた花嚢を付けた株が国内の生産ルートから流通してきて、これが都内のどこかでコバチを放出したということが考えられます。ガジュマルは海外からも輸入されてきますが、花嚢がついた状態での輸入は禁止されていますし、多くの場合は花嚢を付けられる樹齢に達していない苗木や、大きなものでも丸太の状態で輸入されているようですので、海外から入る可能性はないだろうと思われます。ただ、このような場合でもハチを放出する個体が近くにある可能性は非常に低いと考えられますので、(今回の小さい黒いハチのようなものがガジュマルコバチだとすると)とても珍しい偶然に出会えたという事で、興味深い記録だと思います。
横山 潤(山形大学理学部)
ご質問ありがとうございます。
植物と昆虫の共進化(複数の生物が互いに関連しながら進化すること)をご専門に研究されている山形大学の横山潤先生に回答していただきました。
【横山先生のご回答】
ご指摘の通り、ガジュマルを含むイチジクの仲間(イチジク属Ficus)の受粉は、自然界ではイチジクコバチ類だけが担っています。しかも、イチジクコバチ類なら何でもよいという訳ではなく、それぞれのイチジクの種類に対して、ある決まったイチジクコバチの種類が存在していて、それが受粉を行う必要があります。ガジュマルにはガジュマルコバチ(和名は仮称、Eupristina verticillata)が共生していて、このハチだけが受粉を行います。受粉に使われる花粉は、イチジクコバチ類の雌が自分が育った花嚢(かのう:ご質問で「花」とされている部分です)から離れる際に持ってくるもので、同じ花嚢内での受粉は、雄の花と雌の花(イチジクの仲間は、花嚢内に小さな単性花(一つの花に雄しべか雌しべ、どちらかしかない花)を多数付けるのが一般的です)の開花時期が大きくずれていますので、行われません。ですので、種子が出来たということは、花粉とハチを出した他のガジュマル個体がいたという事を示しています。異種(東京なら可能性があるのはイヌビワかイタビカズラで、特に前者は23区内にも自生が見られる程普通種です)のイチジクコバチが入った可能性もありますが、それなら他の種類の花粉がつくはずですから、ガジュマルの種子は作られません。小さい黒いハチのようなものが入っていたとありましたので、ガジュマルコバチがなんらかの原因で東京の空を飛んでいて、花嚢に入って受粉と産卵を行った可能性があります。
ガジュマルの国内での自然分布は、屋久島以南の薩南・琉球列島で、小笠原では野生化が確認されています。もともと小笠原に導入されたガジュマルにはガジュマルコバチがおらず、種子を作らなかったのですが、1990年代に(人為的な原因とされていますが)ガジュマルコバチが侵入し、現在では自生範囲と同様に種子繁殖を行っています。これらの地域にはガジュマルコバチがいますので、それらの地域から何らかの原因で飛んできた(あるいは飛ばされてきた)という可能性も全くないわけではありません。ただし、ガジュマルコバチが花嚢を離れて活動できる時間はせいぜい1日程度ですので、屋久島でも小笠原でも約1000kmを飛んで(飛ばされて)くる可能性は、かなり低いと考えられます(海外の事例だと、イチジクコバチ類が160km程度飛んだという記録はありますが)。他に想定される状況としては、ガジュマルコバチが既に入っていた花嚢を付けた株が国内の生産ルートから流通してきて、これが都内のどこかでコバチを放出したということが考えられます。ガジュマルは海外からも輸入されてきますが、花嚢がついた状態での輸入は禁止されていますし、多くの場合は花嚢を付けられる樹齢に達していない苗木や、大きなものでも丸太の状態で輸入されているようですので、海外から入る可能性はないだろうと思われます。ただ、このような場合でもハチを放出する個体が近くにある可能性は非常に低いと考えられますので、(今回の小さい黒いハチのようなものがガジュマルコバチだとすると)とても珍しい偶然に出会えたという事で、興味深い記録だと思います。
横山 潤(山形大学理学部)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-09-06
出村 拓
回答日:2017-09-06