一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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貝われ大根と砂糖水の濃度

質問者:   中学生   小春
登録番号3841   登録日:2017-08-03
切り花に砂糖水を入れると花が長持ちするのを知っていたので、貝割れ大根の種を水、砂糖水の濃度5パーセント、10パーセント、15パーセントに変えて育ててみました。結果は水が一番育ち、濃度の低い順に育ちました。15パーセントのカイワレは殆ど育ちませんでした。自由研究として提出したいのですが、なぜこういう結果になるのか分かりません。
教えて頂きたいです。宜しくお願いします。
小春様

みんなのひろば、植物Q&Aを利用して下さり、ありがとうございます。

 カイワレ大根の種子を、水やいろいろな濃度の砂糖水に蒔いて育てたら、水で育てたものが一番よく成長したということですね。このことは、種子には水以外の発芽や成長に必要な物質は揃っていることになります。細胞の中での生命活動に必要ないろいろな反応は水のある状態で進行します。したがって、種子が発芽、生育するためには水を吸収することが非常に重要です。
 種子を水に浸しますと、まず急激な吸水がおき、種子が膨潤します。その後、しばらく吸水のない時期を経て、再び吸水がおきます。最初の吸水がどのようにしておきるかというと、主として、乾燥した海藻やゼラチンに水を加えると水を吸って膨潤するのと同様な仕方(拡散)でおきると考えられています。それでは、溶質(小春さんの実験では砂糖)が溶けた水溶液(溶液)に種子を浸した場合はどうかと言いますと、この場合は溶液の浸透圧が関わってきます。
 一つの器の中央を半透性の膜(水は通すが、溶質は通さない膜)で仕切り、片側に溶液、もう一方に水を入れますと、水は溶液の方に移動して溶液を入れた方の水位があがります。圧力をかけて水位があがらないようにした時の圧力が、その溶液の浸透圧ということになります。詳しいことは省略しますが、溶液の濃度が高いほど浸透圧が高く、浸透圧が高いほど水を吸入する力が強いことになります。
 種子の場合、溶液に浸しますと、拡散にによる細胞内への水の移動とは逆の方向への移動の力が、溶液の浸透圧によって働きます(この場合、半透性の膜は細胞膜です)。溶液の濃度が高いほどその力が強いので、種子への水の吸収により時間がかかります。また、種子への水の出入りが平衡に達した時の種子の含水量がより減少することにより発芽や芽生えの成長の遅れをもたらします。
 急激な水の吸収後、吸収がおこらない時期が続きますが、この時期には細胞内が水のある状態になったため、胚の生育に必要な反応が進行し、幼根(胚の根の部分で、成長して芽生えの主根になる)がのび出してきます。幼根が種皮を破って伸びだしたことを以って発芽といいます。幼根の伸長には幼根の細胞の伸長が伴いますが、その時には吸水が必要になります。外液に浸透圧の高い溶液がありますと、この吸水にも影響して伸長成長の遅れをもたらす一因になると思われます。

 実験結果が予想と異なっていたのではないかと思いますが、予想と違った結果がでたときに面白い発見があることがしばしばあります。また、新しいことを学ぶ機会にもなりますね。
 また、浸透圧の働きはいろいろな側面で見られます。みんなのひろば:植物Q&Aを利用して、「浸透圧」で検索してみて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-08-07
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