一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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果物は冷やすと甘くなるのですか?

質問者:   小学生   かすみ
登録番号3842   登録日:2017-08-04
夏休みに石垣島に行った時にマンゴーを食べました。農園で食べた冷えてないマンゴーも美味しかったのですが、ホテルに戻って冷やして食べたらもっと甘くなっておいしくなっていました。農園で切り分けたマンゴーなのでどちらも同じマンゴーです。果物は冷やすと甘さの変化があるのでしょうか。
かすみ さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

よく気がつきましたね。マンゴーだからはっきりと分ったのかもしれません。果物の甘さの原因となっている糖は、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖、果糖が主で果物によってこれらが含まれる割合が違います。また、これらの糖は人が感ずる甘みが違います。ショ糖の甘みを100とするとブドウ糖70、果糖80~150くらいと言われています。果糖の甘みに幅があるのは、甘みが温度によって変わり低温の方が常温よりも甘くなるからです。どうしてかと言うと、ちょっとむずかしいかもしれませんが果糖分子の型にはα(アルファ)型とβ(ベータ)型の2つがあり、この両型は温度によって行ったり来たりします。低温になればβ型が多く、α型が少なくなります。不思議なことに人はβ型の果糖をα型の果糖の3倍も甘く感じます。ですから、β型果糖、つまりより甘い型の果糖は温度が低くなるとより多くなるので、果糖を多く含む食品は低温の方が甘く感ずることになります。ショ糖やブドウ糖の甘さにはこのような温度で変る性質がありませんから、果物の甘さの温度依存性は糖全体に対してどのくらい果糖が含まれているかで決まるようです。

さて、マンゴーの甘さの糖の分析結果を見てみると、100gの果実にショ糖約7g、果糖約3g、ブドウ糖約0.2gで、糖の30%を果糖が占めています。これに比べ、例えば似たような熱帯果物のパイナップルでは、ショ糖12.5、果糖3、ブドウ糖2.5(果糖17%)、バナナではショ糖9.3、果糖1.2、ブドウ糖4.7(果糖4%)と糖全体に対する果糖の比がかなり少なくなっています。このため、バナナ、パイナップルは低温にしても特に甘くなるとは感じないのです。一方、リンゴ、ナシ、ブドウなどは果糖の割合が多い果物で冷やしておくとより甘く感ずることになります。果物の美味しさは甘さだけではないですね。色、酸味、香りなども美味しさに影響しますからいろんな果物を味わってみましょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-08-07
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