一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

同じ株から取った種を蒔いたら育ちが悪いのですが

質問者:   その他   えぞりす
登録番号3845   登録日:2017-08-06
オシロイバナを育てています。
①1つは市販の種を鉢に蒔いたもの。
②もう1つは外に生えていたものを鉢に蒔いたもの。
②の方は1株から取って来た種です。5つくらい取ってきました。
①②とも、それぞれを一つの鉢に5粒くらい蒔いて、発芽したあと育ちのよさそうなものを2つ残しました。
そうしたところ、①の方はどんどん育って花をつけたのですが、②の方は育ちが途中から遅くなり、なかなか花をつけません。②の方は、いわゆる兄弟株と呼ばれる種なのですか?兄弟株だと育ちが悪いということはありますか?
子どもに説明したいので、子どもでも読める兄弟株についての本などありましたら、ご紹介くださると助かります。
えぞりす さん

前に頂いたご質問の中の限られた文字だけの文字化けには気づかず失礼しました。広報委員長からの修正されたご質問を頂きましたので、それを基にお答えします。

オシロイバナは他家受粉と自家受粉の両方で種子を作ります。夏の夕方開花し、夜行性昆虫(主にスズメガ)が送粉者となって他家受粉(このとき自家受粉もおきる可能性はありますが)されます。しかし、送粉昆虫による他家受粉が行われなかった場合には、自らの雄しべを丸めて雌しべに近づけ花冠を閉じて自家受粉を行います。いずれかの方法で確実に受粉を成功させる戦略の一つと考えられます。ふつうは他家受粉でも自家受粉でも受粉法の違いで種子の発芽能力、その後の幼植物の生長に違いがある例は殆どありません。むしろ他家受粉は違った遺伝子の導入を伴いますから種としては有利な繁殖法と考えられます。受粉法の違いによって出来た種子の発芽能、幼植物の生長に違いがある例を探しましたが、これまでのところでは見つかりませんでした。こういうことが起きれば農業自体が成立しませんね。

と言う訳で、ご質問の状況の原因になりそうなものを考えてみました。オシロイバナはとても頑丈な植物で栽培は楽な方と思います。地蒔きにすると、ときには邪魔になるくらいに成長力の強い植物です。また、私の経験でも種子の発芽が問題になったことはありません。とてもよく発芽する種子だと思います。芽生えも子葉が大きく展開し、いかにも頑丈で、な大きくなると根が芋状になって宿根性となり簡単に除去しにくいほどです。購入種子と自家採取種子は、一つの鉢に播種したとのことですから、まず考えられることは自家採取種子の成熟度が一様でなかった可能性です。成熟度の低い種子では休眠が深く発芽までに時間がかかります。また十分成熟したと思われる種子でも種子が形成された直後は休眠していますので、播種しても発芽率が極端に悪いものです。採取後すぐに播種せずかなりの期間(半年か1年以上)をおいてから播種すればその間に休眠が破れ、発芽率は上昇すると思います。市販の種子はすでに長時間立っていますので休眠は破れているはずです。成熟した自家採取種子で休眠が完全に破れていない(これは統計的なもので発芽率が良いか悪いかで判断します)種子集団でも発芽した種子は休眠が破れていたものですから、その後の幼植物の成長に大きく影響することはないはずですが、ことによったら採取種子の中に胚が未熟でも条件によっては発芽した可能性は否定できません。この場合には発芽後の幼植物の成長はかなり抑制されるとは思われます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-08-16