質問者:
中学生
だるま
登録番号3846
登録日:2017-08-07
水やりのことについて質問します。普段は、植物に水道水を与えています。植物に与える水で一番良い水(井戸水を除く)を教えてください。よろしくお願いします。
植物に良い水
だるま さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
水はもともと「何も溶けていない」ものです。植物にとって水は絶対必要な物質で、3つの重要な働きがあります。1つは、植物の生育に必要なミネラル栄養素を溶かすこと、2つは植物(すべての生物)の身体を作る化学反応(生化学反応)を行う場となること、3つは吸収したミネラル栄養素、光合成で作った糖、その他の中間代謝物を合成の場から必要な場所まで運搬することです。植物(緑色植物、光合成生物)の栄養は、空気中にある二酸化炭素と根から吸収する14種類の元素(窒素、リン、カリウム、カルシウム、硫黄、マグネシウム、ホウ素、塩素、マンガン、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、ニッケル)を含む無機化合物(無機塩)でまかなわれ、通常は土壌内にあります。このほか、有気呼吸のため分子状酸素を必要とするものが殆どですが、必要としない生物もあります。14種類の元素を含む無機塩は水に溶け、イオンとして吸収されます。ですからこれらの元素を吸収するために根の周辺に水がなければなりません。これが第1の働きです。生物は吸収した栄養素を使って自身の体成分(細胞壁成分である多糖類、でん粉、タンパク質、脂質、色素、香気成分などの複雑な有機化合物)を作ります。また、自身の成長(細胞分裂、細胞成長)に必要な化学エネルギーを引き出すために糖を分解する反応(呼吸)をおこないます。この合成・分解反応は殆どが水溶液の状態で進行します。これが第2の働きです。根で吸収したミネラル栄養素を茎、葉、根の中心部、その他必要なところに運びます。また、光合成は緑色組織(主に葉)で行われ、出来た糖を非緑色部分(茎の内部や根、果実など)まで運ばなければなりません。これらの物質の輸送の多くは導管、師管という通導組織内を流れる水溶液流によっています。第3の働きです。
こうしてみると、『栄養素を十分に含んだ土壌』に生育する植物にとって、外から与える水は「何も溶けていない水」が「植物にとって良い水」となります。農家は水とは別に田畑に肥料を与え、家庭菜園では混合培養土を使ったりして常に土壌中に必要な栄養素が適量あるようにしています。ところが、水耕栽培とか砂礫栽培といったもともとミネラル栄養素のない場での生育には、培養液という水が「良い水」ですし、ある地域では特定の微量ミネラル成分(前記のホウ素以下)が少ないけれども近辺の河川の上流にその微量ミネラル成分源があるような地域ではその河川の水が「良い水」で水道水は駄目と言うこともあります。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
水はもともと「何も溶けていない」ものです。植物にとって水は絶対必要な物質で、3つの重要な働きがあります。1つは、植物の生育に必要なミネラル栄養素を溶かすこと、2つは植物(すべての生物)の身体を作る化学反応(生化学反応)を行う場となること、3つは吸収したミネラル栄養素、光合成で作った糖、その他の中間代謝物を合成の場から必要な場所まで運搬することです。植物(緑色植物、光合成生物)の栄養は、空気中にある二酸化炭素と根から吸収する14種類の元素(窒素、リン、カリウム、カルシウム、硫黄、マグネシウム、ホウ素、塩素、マンガン、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、ニッケル)を含む無機化合物(無機塩)でまかなわれ、通常は土壌内にあります。このほか、有気呼吸のため分子状酸素を必要とするものが殆どですが、必要としない生物もあります。14種類の元素を含む無機塩は水に溶け、イオンとして吸収されます。ですからこれらの元素を吸収するために根の周辺に水がなければなりません。これが第1の働きです。生物は吸収した栄養素を使って自身の体成分(細胞壁成分である多糖類、でん粉、タンパク質、脂質、色素、香気成分などの複雑な有機化合物)を作ります。また、自身の成長(細胞分裂、細胞成長)に必要な化学エネルギーを引き出すために糖を分解する反応(呼吸)をおこないます。この合成・分解反応は殆どが水溶液の状態で進行します。これが第2の働きです。根で吸収したミネラル栄養素を茎、葉、根の中心部、その他必要なところに運びます。また、光合成は緑色組織(主に葉)で行われ、出来た糖を非緑色部分(茎の内部や根、果実など)まで運ばなければなりません。これらの物質の輸送の多くは導管、師管という通導組織内を流れる水溶液流によっています。第3の働きです。
こうしてみると、『栄養素を十分に含んだ土壌』に生育する植物にとって、外から与える水は「何も溶けていない水」が「植物にとって良い水」となります。農家は水とは別に田畑に肥料を与え、家庭菜園では混合培養土を使ったりして常に土壌中に必要な栄養素が適量あるようにしています。ところが、水耕栽培とか砂礫栽培といったもともとミネラル栄養素のない場での生育には、培養液という水が「良い水」ですし、ある地域では特定の微量ミネラル成分(前記のホウ素以下)が少ないけれども近辺の河川の上流にその微量ミネラル成分源があるような地域ではその河川の水が「良い水」で水道水は駄目と言うこともあります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-08-14
今関 英雅
回答日:2017-08-14