質問者:
小学生
るっ子
登録番号3852
登録日:2017-08-12
根粒菌を培養するための培地を作りたいのですが、一般の家庭では材料は手に入らないものでしょうか。作り方を教えてください。手作りの培地
培養して菌を土に戻し根粒がつくか確かめたいのです。よろしくお願いします。
るっ子 様
みんなのひろばの植物Q&Aを利用して下さりありがとうございます。
根粒菌の培養によく使われる培地に、YM(yeast extract - mannitol) 培地があります。その組成は、マニトール5g, リン酸カリウム (KH2PO4) 0.5g, 硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O) 0.2g, 酵母エキス(Difco bact yeast extract) 0.4gを1 リットルの蒸留水に溶かし、pHを6.8に調節したあと(pHメーターで、5%KOHや2NHCl を用いて合わせます。pHメーターがない時にはpH試験紙を用いて行います)、寒天15g を加えたものです。
この培地をオートクレーブ(高圧滅菌器)でプラス1気圧、15分間滅菌したあと、無菌箱の中で滅菌処理した直径9cmのシャーレに1シャーレ25ml~30ml 流し込みます。しばらくして寒天が固まれば培地の完成です。オートクレーブがない時は蒸し器で40分加熱滅菌します。無菌箱がない時には、段ボール箱と透明なビニールシートがあれば自作できます。培地に使う試薬は薬品会社から購入できますが、小分けして売っていないので、ほとんど余ってしまうだろうと思います。ごく普通の試薬ですので、たぶん学校にあるのではないでしょうか。先生にお願いして少量分けて頂くとよいと思います。作る培地量は1リットルも必要ないでしょう。目的にもよりますが、100ml もあれば十分だろうと思います。そうだとすれば、使う試薬も1/10 で済みます。少量の培地を作るとなると、こんどは少量の試薬をはかる天秤が必要になりますが、そのような天秤がない時には、濃い溶液を作っておいてその一部を入れることで濃度が上に記した培地の濃度になるようにすることができます。例えば、100mlの培地を作るとした場合、酵母エキスだと0.04gはいっていることが必要です。0.4gを10mlの水に溶かし、その1mlを加えれば良いことになります。
当然、水は1ml減らします。
このように、試薬の準備は問題ないとしても、家庭で培地をつくるのはたいへんそうです。
目的は培養した菌を土壌に戻して根粒ができるか確かめたいとのことですが、土壌中には根粒菌がたくさんいますので、できた根粒が土壌にいた根粒菌が作ったのか、土に戻した根粒菌が作ったのか区別するのは難しいと思います。畑に植えてあるマメ科植物(えんどうやえだまめ)を抜いてみると、ほとんどの根に根粒がついています。根粒菌がいないかごく少ないバーミキュライトで植物を育てて、それに根粒菌を加えてみるとよいのではないかと思います。
根粒菌を培養しないでも、根粒菌が根粒を作ることを確かめる方法もあります。その一つは、すでに培養されている根粒菌がありますので、それを手に入れて利用するというものです。根粒を研究している大学や研究所の先生にお願い分けて頂くこともできるかもしれません。この場合、上でつくった培地で根粒菌を増やすこともできます。また、十勝農業協同組合連合では根粒菌を売っています。
もう一つは、エンドウを例にとりますと、畑に植えてあるエンドウの根粒を集めてきて、ハイター(洗剤)を1/10に薄めたもので5~10分表面を殺菌したあと、水(湯冷まし)で洗います。それを水でつぶしたものを、えんどうの芽生えをバーミキュライトで育てているポットに加えるというものです。エンドウの根粒の中にはエンドウに根粒をつくる根粒菌が入っています。この場合、えんどうの根粒を集めてきた時は、えんどうの芽生えに与えることが大事です。根粒菌にもいろいろ種類があって、えんどうに根粒を作る根粒菌はだいずには根粒をつくりません。だいずに根粒をつくる根粒菌はえんどうには根粒を作ることができません。すなはち、根粒を集めてきた植物とそれをつぶして与える植物が同じであることが大事です。もう一つ注意しないといけ
ないことは、実験を行う時期です。例えばえんどうは夏になると極端に根粒をつくりにくくなります。温度が影響するようです。
いろいろ工夫して根粒菌が根粒をつくることを確認できるといいですね。
小学生だと説明が難しかったかもしれません。わからないことがありましたら、遠慮なく質問して下さい。また、ご両親や先生に説明して頂いて下さい。
みんなのひろばの植物Q&Aを利用して下さりありがとうございます。
根粒菌の培養によく使われる培地に、YM(yeast extract - mannitol) 培地があります。その組成は、マニトール5g, リン酸カリウム (KH2PO4) 0.5g, 硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O) 0.2g, 酵母エキス(Difco bact yeast extract) 0.4gを1 リットルの蒸留水に溶かし、pHを6.8に調節したあと(pHメーターで、5%KOHや2NHCl を用いて合わせます。pHメーターがない時にはpH試験紙を用いて行います)、寒天15g を加えたものです。
この培地をオートクレーブ(高圧滅菌器)でプラス1気圧、15分間滅菌したあと、無菌箱の中で滅菌処理した直径9cmのシャーレに1シャーレ25ml~30ml 流し込みます。しばらくして寒天が固まれば培地の完成です。オートクレーブがない時は蒸し器で40分加熱滅菌します。無菌箱がない時には、段ボール箱と透明なビニールシートがあれば自作できます。培地に使う試薬は薬品会社から購入できますが、小分けして売っていないので、ほとんど余ってしまうだろうと思います。ごく普通の試薬ですので、たぶん学校にあるのではないでしょうか。先生にお願いして少量分けて頂くとよいと思います。作る培地量は1リットルも必要ないでしょう。目的にもよりますが、100ml もあれば十分だろうと思います。そうだとすれば、使う試薬も1/10 で済みます。少量の培地を作るとなると、こんどは少量の試薬をはかる天秤が必要になりますが、そのような天秤がない時には、濃い溶液を作っておいてその一部を入れることで濃度が上に記した培地の濃度になるようにすることができます。例えば、100mlの培地を作るとした場合、酵母エキスだと0.04gはいっていることが必要です。0.4gを10mlの水に溶かし、その1mlを加えれば良いことになります。
当然、水は1ml減らします。
このように、試薬の準備は問題ないとしても、家庭で培地をつくるのはたいへんそうです。
目的は培養した菌を土壌に戻して根粒ができるか確かめたいとのことですが、土壌中には根粒菌がたくさんいますので、できた根粒が土壌にいた根粒菌が作ったのか、土に戻した根粒菌が作ったのか区別するのは難しいと思います。畑に植えてあるマメ科植物(えんどうやえだまめ)を抜いてみると、ほとんどの根に根粒がついています。根粒菌がいないかごく少ないバーミキュライトで植物を育てて、それに根粒菌を加えてみるとよいのではないかと思います。
根粒菌を培養しないでも、根粒菌が根粒を作ることを確かめる方法もあります。その一つは、すでに培養されている根粒菌がありますので、それを手に入れて利用するというものです。根粒を研究している大学や研究所の先生にお願い分けて頂くこともできるかもしれません。この場合、上でつくった培地で根粒菌を増やすこともできます。また、十勝農業協同組合連合では根粒菌を売っています。
もう一つは、エンドウを例にとりますと、畑に植えてあるエンドウの根粒を集めてきて、ハイター(洗剤)を1/10に薄めたもので5~10分表面を殺菌したあと、水(湯冷まし)で洗います。それを水でつぶしたものを、えんどうの芽生えをバーミキュライトで育てているポットに加えるというものです。エンドウの根粒の中にはエンドウに根粒をつくる根粒菌が入っています。この場合、えんどうの根粒を集めてきた時は、えんどうの芽生えに与えることが大事です。根粒菌にもいろいろ種類があって、えんどうに根粒を作る根粒菌はだいずには根粒をつくりません。だいずに根粒をつくる根粒菌はえんどうには根粒を作ることができません。すなはち、根粒を集めてきた植物とそれをつぶして与える植物が同じであることが大事です。もう一つ注意しないといけ
ないことは、実験を行う時期です。例えばえんどうは夏になると極端に根粒をつくりにくくなります。温度が影響するようです。
いろいろ工夫して根粒菌が根粒をつくることを確認できるといいですね。
小学生だと説明が難しかったかもしれません。わからないことがありましたら、遠慮なく質問して下さい。また、ご両親や先生に説明して頂いて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-08-14
庄野 邦彦
回答日:2017-08-14