質問者:
小学生
Jo
登録番号3853
登録日:2017-08-13
一年生でアサガオを育てた時、つるを巻き直しているとつるが折れてしまいましたが、その後も成長を続け、花も咲きました。そこで、植物の再生能力について自由研究をするため、花が咲いていないアサガオを用いて、次の実験を行い、成長を観察しています。アサガオの再生能力
(実験1)アサガオ1の本葉5枚目の上を90度に折り曲げ、まっすぐにしてから、テープで固定する。
(実験2)アサガオ2の本葉5枚目の上を切り、上部と下部の茎をテープで固定する。
まだ観察途中ですが、結果は、以下の通りです。
(実験1)アサガオ1の折り曲げた茎の上部が伸び続け、初めの2日目までは、伸びは実験前の半分ぐらいでした。3日目には、折り曲げた茎の部分が節のように少し太くなり、テープの支えがなくても折れ曲がることなく、伸びも実験前と同じぐらいになりました。
(実験2)1日後に、アサガオ2の上部と下部の茎がつながることなく、上部の茎がしおれました。2日目に、下部の茎に2cm以上のわき芽が出て、アサガオ1のわき芽より大きく成長しています。
【質問】
(1)実験1の2日目までの伸びが半分ぐらいになったのは、どうしてですか?傷を修復するのに必要な植物ホルモンと茎の伸長に必要な植物ホルモンが同じ、または関係していますか?
(2)折り曲げた茎の部分が節のように少し太くなったのは、どうしてですか?
(3)実験2で茎を切ってから、わき芽が大きく成長しているのは、どうしてですか?
Jo くん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
共にアサガオを実験材料として花成、開花の生理学をご専門の和田清俊先生(新潟大学)と分子生物学をご専門の仁田坂英二先生(九州大学)お使いの二人の先生方に伺いました。「オーキシン」とか「頂芽優勢」については参考書にも、この質問コーナーにも解説がありますので自分で調べて下さい。
【和田先生のお答え】
質問(1)茎の伸長には植物ホルモンや水・養分が必要ですから、茎を折り曲げたことでその部分の水や物質の移動が悪くなった結果、上部の伸長が悪くなったことが原因でしょう。伸長が悪くなったのは折り曲げてから2日目までだけなのは、組織が傷を受けても水、物質の移動を支える導管の痛みが比較的はやい時間でもとにもどったためでしょう。水の不足はすぐに伸長を遅らせます。
「傷を修復するのに必要な植物ホルモンと茎の伸長に必要な植物ホルモンが同じ、または関係していますか?」: 傷の修復と茎の伸長には両方とも植物ホルモンの一種であるオーキシンが関係していますが、傷を修復する場所と茎が伸長は場所が違いますので同じ植物ホルモンと考えても良いでしょう。
質問(2)折り曲げたことで傷ついた茎の中の通導組織が修復されたと思われますが、修復は傷の部分の周囲の細胞がさかんに分裂して新しい組織をつくることで行われます。新しい組織ができたことが茎を太くしたものと思われます。
質問(3)茎が普通に成長している間は、わき芽は成長しません。これは、茎の先端にある芽(頂芽)でつくられるオーキシンがわき芽の成長を抑えるように働いているからです。茎が切れるなどして頂芽がなくなると、この頂芽優勢という現象はなくなって、わき芽が成長をはじめます。この実験では、切った上部と下部の茎がつながらなかったので、上部にある頂芽がなくなったことになり、頂芽優勢がなくなって、下部のわき芽が成長をはじめたのです。
和田 清俊(新潟大学)
【仁田坂先生のお答え】
(1)実験1の2日目までの伸びが半分ぐらいになったのは、どうしてですか?
・内部通導組織が一部破壊されているのでしょう。1~2日目の成長の鈍化は導通が劣化したため成長に必要な資源が減少したためで、3日目には導通が回復したため元の伸長速度に戻ったように思えます。
折り曲げた部分が太くなったということは、オーキシンの極性輸送が茎の折り曲げ等によって阻害されると高濃度側ではエチレン/転写因子ANAC071、低濃度側ではジャスモン酸/RAP2.6Lが誘導されて細胞分裂が起こり修復、癒合するようです。(註:傷が修復されるときにはいろいろな遺伝子が働き出して、細胞分裂や細胞分化が起こるのです。)
(2)折り曲げた茎の部分が節のように少し太くなったのは、どうしてですか?
内部通導組織が一部破壊されて癒傷組織ができたためだと考えられます。
(3)実験2で茎を切ってから、わき芽が大きく成長しているのは、どうしてですか?
茎の一部が損傷を受けたことで頂芽の働きが悪くなったため頂芽優勢が壊れたからだと思います。
仁田坂 英二(九州大学)
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
共にアサガオを実験材料として花成、開花の生理学をご専門の和田清俊先生(新潟大学)と分子生物学をご専門の仁田坂英二先生(九州大学)お使いの二人の先生方に伺いました。「オーキシン」とか「頂芽優勢」については参考書にも、この質問コーナーにも解説がありますので自分で調べて下さい。
【和田先生のお答え】
質問(1)茎の伸長には植物ホルモンや水・養分が必要ですから、茎を折り曲げたことでその部分の水や物質の移動が悪くなった結果、上部の伸長が悪くなったことが原因でしょう。伸長が悪くなったのは折り曲げてから2日目までだけなのは、組織が傷を受けても水、物質の移動を支える導管の痛みが比較的はやい時間でもとにもどったためでしょう。水の不足はすぐに伸長を遅らせます。
「傷を修復するのに必要な植物ホルモンと茎の伸長に必要な植物ホルモンが同じ、または関係していますか?」: 傷の修復と茎の伸長には両方とも植物ホルモンの一種であるオーキシンが関係していますが、傷を修復する場所と茎が伸長は場所が違いますので同じ植物ホルモンと考えても良いでしょう。
質問(2)折り曲げたことで傷ついた茎の中の通導組織が修復されたと思われますが、修復は傷の部分の周囲の細胞がさかんに分裂して新しい組織をつくることで行われます。新しい組織ができたことが茎を太くしたものと思われます。
質問(3)茎が普通に成長している間は、わき芽は成長しません。これは、茎の先端にある芽(頂芽)でつくられるオーキシンがわき芽の成長を抑えるように働いているからです。茎が切れるなどして頂芽がなくなると、この頂芽優勢という現象はなくなって、わき芽が成長をはじめます。この実験では、切った上部と下部の茎がつながらなかったので、上部にある頂芽がなくなったことになり、頂芽優勢がなくなって、下部のわき芽が成長をはじめたのです。
和田 清俊(新潟大学)
【仁田坂先生のお答え】
(1)実験1の2日目までの伸びが半分ぐらいになったのは、どうしてですか?
・内部通導組織が一部破壊されているのでしょう。1~2日目の成長の鈍化は導通が劣化したため成長に必要な資源が減少したためで、3日目には導通が回復したため元の伸長速度に戻ったように思えます。
折り曲げた部分が太くなったということは、オーキシンの極性輸送が茎の折り曲げ等によって阻害されると高濃度側ではエチレン/転写因子ANAC071、低濃度側ではジャスモン酸/RAP2.6Lが誘導されて細胞分裂が起こり修復、癒合するようです。(註:傷が修復されるときにはいろいろな遺伝子が働き出して、細胞分裂や細胞分化が起こるのです。)
(2)折り曲げた茎の部分が節のように少し太くなったのは、どうしてですか?
内部通導組織が一部破壊されて癒傷組織ができたためだと考えられます。
(3)実験2で茎を切ってから、わき芽が大きく成長しているのは、どうしてですか?
茎の一部が損傷を受けたことで頂芽の働きが悪くなったため頂芽優勢が壊れたからだと思います。
仁田坂 英二(九州大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関英雅
回答日:2017-08-22
今関英雅
回答日:2017-08-22