一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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オクラのムチンはどこから来るのか

質問者:   中学生   KH
登録番号3861   登録日:2017-08-18
夏休みの研究で、オクラを栽培しています。
オクラのネバネバ(ムチン)はどこから来るのかを考えたのですが、

・オクラの葉を調べたところ、葉脈を切断したときに一番ネバネバがあふれてきた。
・種の一部・葉・茎・実を顕微鏡で観察したところ、どこにも同じような管が見られた。
・よく成長する葉や茎にはムチンの粒が発生するが、日陰に置いたオクラの葉には、あまり粒が出てこなかった。
・ムチンは糖タンパク質という物質である。
・オクラの種にはタンパク質と脂肪が多い(登録番号2739の回答より)。

というところから、光合成によってできた糖とオクラのもっているタンパク質を使ってムチンをつくり、師管で体中に運んでいるのではないか、と考えました。

このようなことはありえるのでしょうか。
できれば仮説のままでなく、きちんとした結論を書きたいと思っています。
よろしくお願いします。
(補足)「ムチン」は粘性の高い糖タンパク質を指す言葉として、100年以上にわたり使用され、現在も慣用的に使われている分野が多くあります。他方、同じ生物組織から得られる「ムチン」も化学物質としては多様な場合があり、また、粘性が顕著でない糖タンパク質も数多く見つかりつつあることから、化学物質の名称としては次第に用いられなくなりつつあります。(平成29年11月24日)

KHさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。オクラなどに見られるネバネバの物質の主体はムチンで、ご質問にある通りそれはタンパク質に糖がくっついた糖タンパク質と呼ばれる一群の物質の一種です。粘性があるため「粘液性糖タンパク質」と呼ばれます。「したがってオクラのムチンはオクラの体内で両者から合成れます。しかし、お考えのように種子に多量に含まれるタンパク質に光合成でできた糖がくっつくものではりません。種子にあるタンパク質は脂肪やデンプンなどと同じようにいわゆる貯蔵物質で、これらの物質は発芽の時にそれぞれ小分子に分解され、新しい個体の成長に必要な物質の合成素材になったり、それらに必要なエネルギー生産の材料になります。だからムチンが合成されるための材料となるタンパク質は新たに体内で合成されるものです。タンパク質は細胞内のリボソームという微小な顆粒で合成され、ついで同じく細胞内のゴルジ装置に移されて、そこで色々な変更がなされます。糖タンパク質もそこで合成されます。オクラの果実、葉、茎などにあるムチンや体外に水滴のように分泌されるムチンが、その場の細胞で合成されるものか、どこか他の組織でで合成されて師管を輸送されてくるものかははっきりわかりません。タンパク質(糖タンパク質も含めて)や RNAやウイルスのような大きな分子も師管内を通りますので、また、ムチンは水溶性なので師管を輸送されることもあるかもしれません。しかし、残念ながらムチンの植物体内での合成・輸送に関する研究を見つけることはできませんでした。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-08-22
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