一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

自家不和合性の打破

質問者:   自営業   ブロメリア
登録番号3866   登録日:2017-08-20
自家不和合性植物を自家受粉させる方法について質問です。

以前の質問で「蕾受粉」「老花受粉」「二酸化炭素濃度をあげる」などの方法については回答を読みましたが、もう一つの方法として、自家受粉させたい植物とは違う科の花粉を使い他家受粉させる方法があると聞きました。

要するに開花した自家不和合性植物の花の雌しべに、他の科の花粉と自家受粉させる花の花粉の両方を付けると、自家不和合性を打破して自家受粉させるという方法です。

 例えば私はブロメリア科のビルベルギアの交配をしているのですが、例えばタンポポなどの花粉を受粉時に同時に使うことによって、自家不和合性を騙し受粉させることができると聞きました。

実際に幾つかの株で試してみたのですが、ほんの2粒の種子が採れました。しかし、実際には受粉率もかなり低く、自家不和合性を騙し受粉に成功したのか、ものすごい低い確率で自然に自家受粉したのか判断しかねています。

 自家不和合性を打破して自家受粉させるのに、このような方法は有効なのでしょうか?
ブロメリア さん

みんなの広場Q and Aへの質問を歓迎します。渡辺正夫先生(東北大学)に回答していただきましまた。

【渡辺正夫先生のご回答】
植物生理学会の質問コーナーにありがとうございました。アブラナ科植物の自家不和合性の研究をしています。自家不和合性を有している植物において、自分の花粉をかけて「自殖種子」を得るためには、今まで、いくつかの方法が考案されています。質問内容にも書かれているとおり、「蕾受粉」、「老花受粉」、「二酸化炭素濃度をあげる」などが、一般的に使われています。これ以外の方法として、「40oC程度の高温処理」、「数%の塩化ナトリウム水溶液処理」、「タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミド処理」、「有機溶剤処理」、「有機酸処理」、「電気刺激処理」等が1960~1980年代に試みられています。

ほぼ同時期に、自家不和合性を打破する方法として、「メンターポーレン(mentor >pollen)法」というものが提唱され、数多くの実験がなされました。初期の頃は、目的の雌しべに対して、和合性を示す花粉と不和合性を示す花粉を混合して受粉することにより、和合性花粉が有している何らかの受精能力が不和合性花粉に影響して、不和合性を打破して、不和合性を示す花粉との交雑、雑種形成ができると考えられていました。「メンター」とは、「指導、助言」などの意味ですので、物事がうまくいくように導いてくれるものということになるかと思います。つまり、その「導き効果」によって、不和合性の花粉とも、稀に受精して、種子形成ができるということが考えられます。

この「メンターポーレン効果」を向上させるために、和合性を示す花粉に何らかの処理(放射線処理、化学薬品処理、凍結解凍など)が試みられています。この手法については、1980年代くらいまでは研究報告がありますが、それ以降はこの実験に関する論文を目にすることはほとんどありません。また、なぜ、このような手法で雑種形成がうまくいくようになるのかと言うことについても、分子レベルでは理解されていません。

さて、質問の内容は、異なる科の植物の花粉を混合受粉に用いると言うことを問われていますが、こうした方法に関しては、これまでの研究、論文発表などについては知り得ません。混ぜる花粉が質問内容とは異なりますが、上述のように、同種・近縁種で和合性を示す花粉を用いて、目的とする不和合性の花粉と混合して受粉することを試してみられてはいかがでしょうか。ただ、混ぜるだけなので、簡単に思われるかも知れないですが、まず、開花には季節性と言うことがあります。また、メンターポーレンに用いる植物種と開花時期を同調させると言うことも、実験の要諦になります。近縁種、あるいは、同種の和合性を示す個体をうまく用意し、開花させて、試みられてはどうでしょうか。

 渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)

上記のように、渡辺先生の回答では、
”異なる科の植物の花粉を混合受粉に用いると言うことを問われていますが、こうした方法に関しては、これまでの研究、論文発表などについては知り得ません。”とあります。

プロメリアさんは下記のように書いています。
”例えば私はブロメリア科のビルベルギアの交配をしているのですが、例えばタンポポなどの花粉を受粉時に同時に使うことによって、自家不和合性を騙し受粉させることができると聞きました。実際に幾つかの株で試してみたのですが、ほんの2粒の種子が採れまし た。”

上記の”2粒の種子が採れました”という記述が、”異なる科の植物の花粉を混合受粉に用い”て得られた結果をさすならば、実験法の詳しい記述を添えて再度質問してください。
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2017-08-29
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内