一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物ホルモンであるエチレンの肥大成長の効果についてです。

質問者:   自営業   T.D.L.M.O.
登録番号3884   登録日:2017-08-28
エチレンの効果の一つとして、植物の細胞の縦方向の成長から、横方向の成長に変える効果があるということを聞いたことがあるのですが、エチレンをうまく活用して植物を太くすることができるのでしょうか?
またエチレンは植物の成熟を促進するそうで、実を成熟させたり、花や葉を老化させて落としたりなど、成長というよりも休眠の方向性の性質があるようにも思えますが、葉が老化して落ちた後に再度葉を展開させるような成長の効果があるのでしょうか?または葉を落としたまま休眠の方向に進めてしまうのでしょうか?
エチレンの成長の効果について教えていただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
T.D.L.M.O. 様

ご質問をありがとうございます。

 振動や接触が繰り返されると、植物の茎の伸長成長が抑制され横方向への肥大がおこり、背丈が低く太く丈夫な植物になります。これは振動や接触といった物理的刺激によって一過的に発生されたエチレンの作用によることが知られています。
 エチレンの肥大効果は芽生えを用いてくわしく研究されています。どのようにして肥大がおきるかについては細胞壁のセルロース微繊維の配向(並び方)が関係しています。いろいろ省略して、ごく簡単にいいますと、エチレンが無いときにはランダムに並んでいた微繊維はエチレンの存在下では、茎の軸と平行の方向へと並ぶようになります。成長するとき吸水がおき細胞内の圧力が高まりますと、微繊維と微繊維の間隔を開く方が伸びやすいので、横方向へふくらむ肥大がおこります。
 落葉や休眠は、日長や温度の変化を感受しておこります。落葉では葉で生成されたエチレンによっておきますが、休眠は芽でアブシシン酸という植物ホルモンの濃度が増加することによっておこります。アブシシン酸の濃度がたかまらない場合もあるようですが、その場合には、休眠から醒める時にはたらくジベレリンなどが減少して相対的にアブシシン酸の比率が高まるということです。落葉と休眠でははたらくホルモンが異なりますので、落葉しても休眠に入っていきます。
 なお、みんなのひろばの植物Q&Aの登録番号3666, 3159, 2367なども参考になるかと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-09-02
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