一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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収穫後の野菜について

質問者:   自営業   りょーちゃん
登録番号3891   登録日:2017-09-01
趣味で家庭菜園を始めたのですが、
収穫後の野菜の生態について疑問に思いました。

野菜(例えばキャベツの葉玉)は収穫してしまったら光合成はストップするのですか?
もし収穫後も光合成し続けるなら、収穫前と収穫後の光合成の酸素の生産力はどのくらい違うのでしょうか?

また、収穫してしまうと呼吸などの運動もストップするのですか?

ご回答の程是非よろしくお願いいたします。
りょーちゃんさま

みんなの広場Q and Aへの質問を歓迎します。
畑に生えているキャベツの葉は、地表近くに広がって緑色をしているものと、密集して丸い球のようになっている白っぽいものに分けられます。前者は通常の光合成をやっている同化葉で、後者は光合成の産物を貯める貯蔵葉として働いています。キャベツは人類の長年にわたる品種改良によって作り上げられたもので、多くの野外植物とは違う、いわば奇形です。(<みんなの広場>登録番号1517, 3413が関連した問題を扱っています。<みんなの広場>で、<キャベツ>で検索すると、この他にも多くの関連した回答が見つかるでしょう。)

*りょーちゃんさんの質問「野菜(例えばキャベツの葉玉)は収穫してしまったら光合成はストップするのですか?」
回答:キャベツで光合成を行うのは同化葉ですから、収穫した白いキャベツの球は光合成はしません。球の外側に緑色の葉がついている場合は光を当てれば多少の光合成はするかもしれませんが、量的にはごくわずかでしょう。
一般的に買った葉物野菜の貯蔵には、低温で暗いところが推奨されていますが、これは水分の蒸発と呼吸による有機物の消費を少なくするためだと思われます。根がついている場合は別で、根三つ葉は先端の葉を摘んだ後でも、水をはったガラス瓶に入れて明るい窓際においておけば緑色の葉(同化葉)が出てきて、ある程度成長します。

*りょーちゃんさんの質問「収穫してしまうと呼吸などの運動もストップするのですか?」
回答:収穫後も、生きた細胞の機能を維持するには活性に程度の差はあれ、呼吸が必要です。貯蔵葉は、ニンジンの根やジャガイモの塊茎と同様に一般に呼吸活性が低いので、呼吸による物質の損失は遅い方ですがゼロではありません。呼吸活性は一般に低温では低く、温度が上昇すると高くなります。新聞紙などに包むと蒸散による水分の損失が抑えられるので、キャベツの保存には、このようにして冷蔵庫に入れておくとよいでしょう。
なお、農産物の保存温度は、どのような植物でも低ければ低いほどいいというわけではなく、キュウリやバナナのように低温で障害を受けるものの貯蔵最適温度は約10-15℃です。
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2017-09-14