一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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緑の実のなるトマトの生育と光の量

質問者:   一般   こむぎ
登録番号3898   登録日:2017-09-08
最近はよくスーパーでいろんな色のトマトを見かけます。中には、緑色のトマトもあります。

我が家で緑色のトマトを育てたところ、葉の色が、赤色の実が成るトマトよりずいぶん濃いように思いました。
調べると、緑色の実のトマトについてはわかりませんでしたが、緑色の花が咲く植物については、葉緑体の量が多く、葉緑体の分解も、少なく緑色が残るということでした。

私の育てているトマトが、赤色の実の成るトマトに比べて葉緑体が多いかどうかは分かりませんでしたが、

育種によって通常より葉緑体の量が多くなった植物は、
生育するのに必要な光が少なくてすむのでしょうか。逆に、強い光に当たることに弱かったりするのでしょうか。

葉緑体と、葉緑素、について混同しているのでしょうか?
わかりにくい質問かもしれませんがよろしくお願いいたします。
こむぎ 様

ご質問をありがとうございます。最初に用語と知識の整理をさせていただきます。

(用語と知識の整理)

緑色植物の細胞には「葉緑体(クロロプラスト)」と呼ばれる細胞内小器官があり、この小器官には「葉緑素(クロロフィル)」と呼ばれる緑色の色素が含まれています。葉緑体には光合成の初期過程の機能を担う「チラコイド」とよばれる袋状の構造体があり、ほとんど全てのクロロフィルはチラコイド膜上に「クロロフィル-タンパク質複合体」として存在しております。クロロフィル-タンパク質複合体を構成するクロロフィルの役割は、大まかには、(A)電波を集めるアンテナのように機能して、太陽からの光(光量子)を集めることと、(B)アンテナが集めて来た(光)エネルギーを使って、光合成における化学反応をスタートさせることの二つにあります。以上のような過程で獲得されるエネルギーは、二酸化炭素の有機物への変換などの反応過程を経て、最終的には植物の生長に役立つことになります。

なお、生えている場所から動きにくい植物にとって光の吸収は受動的なものになり勝ちですので、強すぎる光にさらされた場合にはエネルギー過剰の状態になります。植物はそのような事態に対応するため多重で多様な保護機能(例えば、一旦吸収した(光)エネルギーを熱エネルギーとして放出する)を備えておりますが、その機能が不十分な場合には生育に傷害が現れることになります(光阻害)。

(回答)

以上の知識を基に考えると、ご質問の内容となっている両方(弱光で育ちやすく、強光に弱い)は、あり得ることだと思われます。しかし、光の吸収から生育に至る生理的な過程は非常に複雑ですので、問題の植物についてこの理屈が通用するかどうかは実験により確かめる必要があります。厳然たる事実は、問題の植物はクロロフィル含量が高く(細胞当たりの葉緑体が多い、葉緑体当たりのクロロフィルが多い、アンテナを構成するクロロフィルが多い、その他の理由で)、したがって同じ光強度条件下では植物体に取り込まれる光量子が多いことですね。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2017-09-11
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