一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カイワレ大根の実験結果からの質問

質問者:   その他   中島
登録番号0392   登録日:2005-10-08
カリウムと窒素とリンを使ってカイワレ大根の生育実験をしたのですが、カリウムをいれた培養液によって育てたものがとてもよく生育をしました。

カリウムは確かにとても吸収率がよかったのですが、カリウムに顕著に草高や生重量に影響を与えるような性質があるという記述を見たことがありません。

もしカリウムが植物に与える効果についてなにか知っている方はアドバイスをお願いします。
中島さん

 どんな培養条件で、何を測定されたのかが判らないので、回答を作るのは大変困難です。
 敢えて一般的なことを書くとすると、カリウムは植物の三大栄養素と言われているように、もっとも重要かつ多量に必要とする物質の一つですから、生長が促進することがあっても不思議はないでしょうということです。
 しかし、それぞれの物質を与えた時のその他の栄養条件(培養液組成)によって、実験結果は全く異なるものになります。一般的に、植物がカリウム欠乏になるためには、その他のカチオン(NaイオンやCaイオン、 Mgイオン)の培地からの除去を必要とします。また、それらのイオンが十分に含まれていても、カリウム自体の濃度が高すぎると生長阻害を起こします。さらに、カリウムを添加する時の、カウンターアニオンとして、何を使用するかによっても結果は全く異なるものになります。
 同様に、窒素、リンと比較するとしても、それぞれの濃度、培養液組成をどの程度厳密にコントロールしているかによって、結果は全く違ってしまいます。
 もし、単純な組成の液でカイワレを育てて比較しただけだとすると、それは栄養条件の違いを測定したことには全くならないでしょう。
 
 ご存知のように、カリウムは細胞内環境を規定する最も重要なイオンで、細胞内に大量に含まれています。細胞内浸透圧形成に最も寄与する物質ですから、カリウムが欠乏すると生長阻害が起こります。また、カリウムは細胞膜電位を決定する主要イオンですから、カリウムの内外の濃度が厳密に維持されないと細胞は正常な活性を持つことはできません。さらに、複数の酵素で、カリウムの存在が活性の維持に必須であることが判っています。草丈や生重量というのは、それら諸要素が複雑に相互作用した後の最終的な結果ですから、どんな影響が出ても(あるいは出なくても)不思議はないように思います。
 尚、植物栄養学の参考書に書かれている、カリウムの影響とは、カリウムに直接関連することがこれまでの経験や研究で良く知られているものですから、全般的なことが書かれていなくても不思議はないと思います。
神戸大学、広報委員
 三村 徹郎
回答日:2009-07-03
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