一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ハスの果実の先にある点

質問者:   その他   植物ウオッチャー
登録番号3940   登録日:2017-10-23
ハスの果実の先端には花柱痕があります。よく見ると花柱痕の横にもうひとつ点があります。この点は何ですか。花托に放射状に並んだ果実の全てに、花柱痕より外側の位置にもうひとつ点があります。その正体を知りたいので、お教えください。
植物ウオッチャー様

みんなのひろばへのご質問有り難うございました。なかなか回答を引き受けて下さる方が見つからず、大変長い間お待たせしてしまいました。申し訳ございません。ようやく神戸大学の角野康郎先生がお引き受け下さり、以下の様な回答をお寄せ下さいました。私も勉強させていただきました。

【角野康郎先生のご回答】
 ハスの実の先端の花柱痕の横には、お気づきのように一つの点があります。その正体を理解するためには、種子植物に広く見られる種子のは「へそ」(Hilum)について説明しておく必要があります。種子は、雌しべの子房(心皮)の中にある胚珠が受精し、親植物から栄養物質の供給を受けて成熟します。栄養物質の通路となるのが胚珠と子房をつなぐ珠柄と呼ばれる構造です。人間で言えばへその緒に相当します。

 種子が成熟すると珠柄は分解して子房(果実)から離れますが、胚珠がもともと子房につながっていた部分の痕跡が「へそ」として残ります。「へそ」の位置は子房のどの部位に胚珠がつくかによって異なりますが、ハスの胚珠は子房の上の部分から垂れ下がる構造になっているために「へそ」が上部の花柱痕のそばに残ります。

 ハスの実は、一つの種子を1枚の果皮が包んだ状態です。果皮の側にも胚珠が子房についていた部分(胎座)の痕跡が見られます。今回観察された「点」は、「へそ」そのものではなく果皮側の痕跡を見ておられる可能性が高いと思います。実が成熟する前の柔らかい段階で解剖すると、この「点」の正体もよく理解できるでしょう。

角野 康郎(神戸大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2017-12-12
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