一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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窒素を糖・たんぱく質に効率よく変えるには?

質問者:   会社員   棚谷  實
登録番号0040   登録日:2004-03-21
私の住む根室管内は、積算温度2000〜2200℃・年平均5〜6℃で、夏が大変短い地域です。また、摩周系火山性土に属します。
この様な環境の中で、有機態・無機態の窒素を効率よく植物が糖・蛋白質に変えるには、窒素以外にどのような養分が必用なのでしょうか?
できましたら、その仕組みを交えて教えていただきたいのですが?
また、植物体内に硝酸態・亜硝酸態窒素として残らないようにする方法についても、併せてお願いします。
棚谷 實さま

 日本植物生理学会へのご質問有り難うございました。お尋ねの件について、窒素代謝を専門とされている東北大学の山谷先生にお答えいただきました。

 三村 徹郎(奈良女子大学)

土壌中の有機態窒素は、土壌微生物によって無機化され植物が利用しますが、寒冷地ではこの無機化の反応が温暖な場所と比較して通常は遅く、植物が利用できる効率も悪いと思われます。無機態窒素の利用効率を上げるには、光合成能力を向上させることが一番だと思います。光合成によるエネルギーと炭素骨格の合成は、窒素利用効率を高め、タンパク質や糖の合成に繋がります。
植物にとって他に必要な養分は十数種以上ありますが、一般にこれらは不足しません。土壌中の有機態窒素を、植物が直接吸収する割合は極めて低く、無機化された窒素は、硝酸態あるいはアンモニア態窒素として吸収され、硝酸態は硝酸還元系によりアンモニアまで還元された後、グルタミンへと有機化されます。グルタミンは、その後アミノ酸代謝などをへて、タンパク質や核酸などの合成に利用されます。
植物体内に硝酸態・亜硝酸態窒素が残留しないするためにも、可能な限り光合成活性を向上させることが大切です。植物体内では常に炭素と窒素のバランスが保たれており、光合成による炭素代謝が低い場合は、過剰に吸収した無機態窒素は液胞に貯蔵されます。
ただ、寒冷地でいかにして光合成能力を向上さえることができるかは、良いアイディアはなく、作物でしたらハウスなどで加温しながら栽培できますが、野外の植物の場合は難しいですね。
東北大学
 山谷 知行
回答日:2006-10-20
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