質問者:
会社員
梅鉢草
登録番号4049
登録日:2018-03-23
最近コケ類の生態に興味があり、趣味で育てています。植物ホルモンとコケ
どうすればよく成長するかも含めて試行錯誤していますが、
最近ふと園芸店など見てみると、
植物ホルモン剤のようなものも一般に売られていて、
成長促進や、逆に農薬としての用途もあったりするようです。
こういったものは、一般的な用途としては、園芸植物や農産物
(ほとんどが被子植物だと思いますが・・・)
に対して使われるものだと思います。
一方で、コケなどでは、同じ植物と言っても
かなり生態が異なるという印象ですが、
ホルモンによる成長制御などのシステムは、
種子植物とコケなどでも共通に持っているものなのでしょうか?
少し調べてみましたが、
はっきりと言及した情報はあまりない気がしましたが、
そのあたりは調べられてたりするんでしょうか?
(シダ辺りまでは共通要素はありそうな気がしますが・・・)
梅鉢草様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。植物とはかけ離れたお仕事をされている方が、植物に関心を持たれてこのコーナーを訪れてくださったこと大変嬉しく存じます。
すでにお調べになっておられることと思いますが、植物の成長発生の過程はいく種類かのホルモンによって調節されているだけでなく、個体維持の生理過程の上でもホルモンは必要です。少し古いですが、2007年に出版された本学会編の「これでナットク!植物の謎」講談社ブルーバックス」の中に、植物ホルモンについての概要が短くまとめてありますので、一般的なことについてはご参照ください。植物を育てるとき、あるいは培養するとき外から与えたいろいろな化合物が、植物の成長を促進したり、形態に影響を与えたりなどの各種の影響をもたらすとき、これらの物質はホルモンとして働いているのかどうかは一概に判断できません。植物ホルモンとよばれるためには少なくとも:1)その化合物が植物から取り出せること、つまり植物が自分で合成していること、2)植物がその化合物を自分で合成できないか、合成できても作用するメカニズムに異常があると正常な成長・発生などの過程が見られないこと、が証明される必要があります。今ではこれらのことは関係する遺伝子を調べることでわかります。現在では8〜9種類の低分子の植物ホルモンが知られている他に、アミノ酸が何個かつながったペプチドホルモンと呼ばれる特殊なホルモンも知られています。植物ホルモンはコケ植物から被子植物まで分布していることが分かってます。コケ植物セン類、タイ類、ツノゴケ類に大きく分けられますが、普通によく見られるのはヒョウタンゴケのようなセン類やゼニゴケのようなタイ類です。コケ植物での植物ホルモンの働きは被子植物に比べてあまり広く研究されていませんが、最近ゼニゴケやヒメツリガネゴケ(セン類)は分子レベルでの研究材料として注目を浴びてきています。あなたが育てておられる「コケ」が何であるかわかりませんが、その「コケ」が自然の状態で自分が生産する植物ホルモンで成長・発生を調節していることは間違いないでしょう。「共通要素」ということで、何を指しておられるのかわかりませんが、コケ植物固有の成長発生過程がありますので、当然同じではありません。しかし、分子的なレベルでは遺伝子や関与するタンパク質の違いはあっても基本的メカニズムは同じだと思います。また、外からこれらの植物ホルモンを与えればどんどん育つかというと、そうはいかないと思います。何を目的とするか。つまり、仮根あるいは芽の分化、原系体のクロロネマ細胞からカウロネマ細胞への分化、葉状体の成長促進、造精器、造卵器の形成などなどによって、与えるホルモンの種類、濃度、時期・期間などは異なるはずですし、コケの種類によっても異なるはずです。今後コケ植物のさらなる研究が進めば、ここのコケ植物の栽培における植物ホルモンの使用条件などが一般化されるかもしれません。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。植物とはかけ離れたお仕事をされている方が、植物に関心を持たれてこのコーナーを訪れてくださったこと大変嬉しく存じます。
すでにお調べになっておられることと思いますが、植物の成長発生の過程はいく種類かのホルモンによって調節されているだけでなく、個体維持の生理過程の上でもホルモンは必要です。少し古いですが、2007年に出版された本学会編の「これでナットク!植物の謎」講談社ブルーバックス」の中に、植物ホルモンについての概要が短くまとめてありますので、一般的なことについてはご参照ください。植物を育てるとき、あるいは培養するとき外から与えたいろいろな化合物が、植物の成長を促進したり、形態に影響を与えたりなどの各種の影響をもたらすとき、これらの物質はホルモンとして働いているのかどうかは一概に判断できません。植物ホルモンとよばれるためには少なくとも:1)その化合物が植物から取り出せること、つまり植物が自分で合成していること、2)植物がその化合物を自分で合成できないか、合成できても作用するメカニズムに異常があると正常な成長・発生などの過程が見られないこと、が証明される必要があります。今ではこれらのことは関係する遺伝子を調べることでわかります。現在では8〜9種類の低分子の植物ホルモンが知られている他に、アミノ酸が何個かつながったペプチドホルモンと呼ばれる特殊なホルモンも知られています。植物ホルモンはコケ植物から被子植物まで分布していることが分かってます。コケ植物セン類、タイ類、ツノゴケ類に大きく分けられますが、普通によく見られるのはヒョウタンゴケのようなセン類やゼニゴケのようなタイ類です。コケ植物での植物ホルモンの働きは被子植物に比べてあまり広く研究されていませんが、最近ゼニゴケやヒメツリガネゴケ(セン類)は分子レベルでの研究材料として注目を浴びてきています。あなたが育てておられる「コケ」が何であるかわかりませんが、その「コケ」が自然の状態で自分が生産する植物ホルモンで成長・発生を調節していることは間違いないでしょう。「共通要素」ということで、何を指しておられるのかわかりませんが、コケ植物固有の成長発生過程がありますので、当然同じではありません。しかし、分子的なレベルでは遺伝子や関与するタンパク質の違いはあっても基本的メカニズムは同じだと思います。また、外からこれらの植物ホルモンを与えればどんどん育つかというと、そうはいかないと思います。何を目的とするか。つまり、仮根あるいは芽の分化、原系体のクロロネマ細胞からカウロネマ細胞への分化、葉状体の成長促進、造精器、造卵器の形成などなどによって、与えるホルモンの種類、濃度、時期・期間などは異なるはずですし、コケの種類によっても異なるはずです。今後コケ植物のさらなる研究が進めば、ここのコケ植物の栽培における植物ホルモンの使用条件などが一般化されるかもしれません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2018-04-15
勝見 允行
回答日:2018-04-15