一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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スギ花粉の匂い

質問者:   一般   まるこ
登録番号4050   登録日:2018-03-24
スギ花粉の飛散時期になると、夜変なにおいを感じます。
家人がスギ花粉の匂いだと強く主張するのですが、そうなのでしょうか。そもそも花粉に匂いがあるのでしょうか。
また被子植物なら虫を呼ぶために匂いで誘引も考えられますが、裸子植物のスギの花に匂いは必要なのでしょうか。
よろしくお願いします。 
まるこ 様

本コーナーをご利用下さりありがとうございます。
ご質問にはスギ花粉についてお詳しい森林総合研究所の伊ケ崎博士から下記のようなご回答をいただきました。ご参考になさって下さい。


【伊ケ崎博士からのご回答】
スギは風媒花ですので,花粉の運搬を仲介してもらう昆虫などを呼び寄せる必要がありません。したがって、雄花に媒介昆虫を引き寄せるための特有の“におい”は全く必要ありません。

スギの針葉、雄花、雌花、樹皮、木部組織などには、“におい”の元となる揮発成分(フィトンチッド、ないしは精油成分と呼ばれています)が含まれています。この成分の本体はテルペノイドで、森林浴などでのいやし効果が注目されています。私の知る限り、スギ花粉の揮発成分の存在を調べた研究例はありません。スギの“におい”成分が雄花から花粉に移動することも考えられますが、あったとしても極めて少なく、また揮発成分ですので飛散する花粉に留まることも考えにくいです。約20年前の話ですが、私の研究室では新規のスギ花粉アレルゲンの探索を進めており、花粉を約1キログラム収集したことがあります。しかしながら、実験室という狭い空間に、スギ花粉が大量に存在しても“におい”は全く感じませんでした。日常生活で1日当たり50個以上/1平方cmの値は”花粉の非常に多い日“に相当しますが、それよりも遙かに多いスギ花粉が狭い空間にあっても“におい”を感じませんでした。つまり、大気中に飛散している花粉から僅かな“におい”を嗅ぎ分け、それをスギ花粉であると判断することは容易なことではありません。

ご家族は、どのようにしてスギ花粉の“におい”に反応しているのでしょうか?スギ花粉が大量に飛散する時期には、様々な風向きの強風が吹きます。強風により、スギの枝や葉がぶつかり合い、“におい”成分である揮発成分がスギ林から多量に発生することがあります。それが風に運ばれて、スギの“におい”として感じていると考えます。お住まいの近くにスギ林はありませんでしょうか?類似した問合せ電話が森林総合研究所にも来ることがありますが、皆さんこうした回答で納得されるようです。


伊ヶ崎 知弘(森林総合研究所・樹木分子生物研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2018-04-25
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