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花弁の無いミツバツツジ

質問者:   一般   オオシマミツオ
登録番号4062   登録日:2018-04-07
私が勤務してる広島県廿日市市おおの自然観察の森に花弁の無いミツバツツジが今年も咲きました。来園者から質問されるのですが返答が出来ませんので原因を教えて頂ければ幸いです。
オオシマミツオ さま

みんなの広場、植物Q&Aコーナーをご活用有り難うございました。
花器官の研究をされている京都府立大学の武田先生に回答頂きました。

【武田先生のご回答】
みんなの広場Q&Aコーナーへのご質問、どうもありがとうございます。頂いた写真を拝見しますと、確かに花弁がまったく形成されていませんね。大変面白い現象だと思います。

背景に写っている花でも、花弁がないように見受けられます。周辺のミツバツツジには花弁が形成されていて、該当(特定)の個体だけ花弁がないとすると、その個体は、花弁を作る遺伝子が壊れた突然変異体だと考えられます。あるいは、同個体でも枝によって花弁があったり無かったりすると、「枝がわり」という現象になります。いずれにせよ、花弁を作る遺伝子に変異が入っている可能性が大きいと思われます。

花弁が無くなる突然変異体は、シロイヌナズナで知られています。代表的なものは、その名もずばり「petal loss (petal=花弁、loss=なくなる)」というものです。原因遺伝子は、多くの遺伝子の発現を制御する「転写因子」をコードしています。petal loss突然変異体では、花弁がなくなる他に、隣り合うがく片が一部融合するという異常も見られます。植物園の花弁なしミツバツツジのがく片は、どうなっているでしょうか。もし、根元から少しでも融合しているようなら、PETAL LOSS遺伝子が壊れているのかもしれません。

また、写真をよくよく拝見すると、花弁ががく片に置き換わっているように見えなくもありません。この場合は、ある器官が丸ごと他の器官に置き換わる「ホメオティック変異」というもので、花のABCモデルというもので説明できます。ABCモデルは、3つのクラスの遺伝子群が組み合わさり、Aだけだとがく片、A+Bだと花弁、B+Cだと雄しべ、Cだけだと雌しべが作られる、というものです。花弁なしミツバツツジでは、雄しべは正常に形成されているようですので、クラスBの遺伝子発現領域が花の中心に狭められ、本来花弁が作られるところでB機能がなくなり、A機能によってがく片が作られた、という可能性も考えられます。「花のABCモデル」については、ウェブ検索すると分かりやすく解説したページが多く出てきますので、そちらをご参照下さい。

という事で、(1) がく片が融合していないか、(2) 外側のがく片の内側に、さらにがく片が形成されていないか、をご確認いただけますと、上記2つの可能性が検証できるかと思います。

武田 征士(京都府立大学大学院生命環境科学研究科細胞工学研究室)
JSPP広報委員長
木下 哲
回答日:2018-04-09
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