一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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凍結切片の染色

質問者:   大学院生   松浦英治
登録番号0408   登録日:2005-10-30
免疫染色に使うサンプルが新鮮凍結サンプルしかないのですが、目的とするものに対する抗体がfrozen用がない場合はどうしたらいいでしょうか。
Ki-67などはパラフィン包埋されたサンプルのほうが(抗原賦活を加えて)、新鮮凍結切片よりも検出しやすいとされているようですので、新鮮凍結切片になんらかの処理を加えてパラフィン包埋切片用の抗体が使えるようにできないでしょうか。

松浦 英治 様

 組織標本の抗体染色の場合で重要なのは,抗原性が保たれているかということと,抗体の浸透性になります.抗原性は,固定法によって大きく変化します.弱い固定の場合,抗原性は高く保たれていますが,組織標本が壊れやすく染色の過程で崩壊することがあります.強い固定では逆に,組織標本の形態的構造はしっかりと保たれるのですが,抗原性がなくなってしまい抗体染色できなくなることがあります.凍結標本などの生サンプルは,固定されていないので抗原性は高く保たれているはずです.この場合,構造を保つために切片を作成した後に,アルコールやアセトンなどの有機溶媒で軽く固定して使うことが多いようです.パラフィン包埋のサンプルの場合も,どのような固定が施されているのかによって染色性が変わります.通常,3〜4%のホルマリンで固定されておりますのでその場合で言いますと,ホルマリン固定は有機溶媒固定に比べてきつい固定となります.そのため,ホルマリン固定で使える抗体は,たいていの場合未固定(生サンプル)で問題なく使えます.新鮮標本の方が染まりにくい場合は,抗体の浸透性が問題になっていると思われます.その場合は賦活化が効果的です.賦活化とは,目的のタンパク質や糖鎖などに他のタンパク質などが強く結合すること,あるいはタンパク質のフォールディングのために抗体が抗原部位まで浸透できないでいる状態を改善する目的で行われます.賦活化は電子レンジやオートクレーブ処理などの物理的処理や酸などによるきつい処理になりますので,ある程度しっかりした固定を施しておかないと標本の構造が壊れてしまいます.新鮮標本しかない場合は,切片を作成した後にホルマリン固定などを施し,賦活化の行程に進むと良いでしょう.具体的には,切片をスライドガラスにとり,そのまま固定液に適当な時間漬け込みます.PBSで洗っておしまいです.
まずは新鮮標本をそのまま染めてみてはどうでしょうか? 続いて,各種固定法と賦活化法を組み合わせて試してみて下さい.抗体には,frozen用とかパラフィン包埋切片用とかの種分はありません.
群馬大学
 鈴木 健史
回答日:2009-07-03
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