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自家不和合性をもつ植物が自家受粉を行うことはあるのでしょうか

質問者:   高校生   サトリ
登録番号4093   登録日:2018-05-03
自家不和合性をもつ植物は、遺伝的多様性を保つために自家受粉を行えないようになっていますが、人為的な処理を加えずに自家不和合性を克服することができるのでしょうか。

植物は環境変化に対応できるように進化してきた(適応できる種が生き残ってきた)と聞いたことがありますが、同じように繁殖の過程で突然変異により、自家不和合性をもたず、自家受粉をする種がうまれることはありえるのでしょうか。

自家不和合性をもつ植物ですが、他家受粉できる環境になく、地下茎による栄養生殖のみで繁殖している植物がいます。この植物から恐らくこの植物のものである種子が発見されたのですが、なぜ種子ができたのかわかりません。
サトリ さま

本コーナーをご活用頂き有り難うございます。
ご質問は自家不和合性がご専門の大阪教育大学の鈴木剛先生にお答え頂きました。

【鈴木先生のご回答】
なかなかしっかりしたご質問で感心しました。結論を先に述べると、自家不和合性をもつ植物が自家受粉により種子をつくることは可能です。

自家不和合性の反応は100%完全ではなく、環境や生育段階の影響も受けます。アブラナ科植物の例では、高温の環境下で自殖種子ができてしまうこともありますし、植物体が老化すると自家不和合性が安定しなかったりします。「老化受粉」については、過去の記事の登録番号3459に詳しく書かれていますので、参考にしてください。老化した個体で自殖種子ができることは、あたかも「自分の花粉でも良いから受粉して子孫を残そう」と植物が頑張っているように感じますね。このように、自然に自家不和合性を克服して自家受精する確率はゼロではありません。ご質問後半で触れられている「自家不和合性をもち、他家受粉できる環境になく、地下茎による栄養繁殖のみで繁殖している植物」について具体的には詳しく知りませんが、低頻度で自家受粉により種子をつくることもあるかもしれません。

以上のように突然変異がなくても自家不和合性を自然に克服できますが、ご質問のなかに突然変異の話もありますので、それについても以下に回答します。サトリさんがおっしゃるように、進化の過程で自家不和合性の種が突然変異によって自家和合性に変化することはありえます。例えば、シロイヌナズナは自家和合性のアブラナ科植物ですが、もともとは自家不和合性であり、花粉で働く自己認識遺伝子(SP11)が壊れることによって自家和合性に進化したことが知られています。このことに関しては2010年に私達のグループが論文発表していますので、当時の大阪教育大学のプレスリリースをご覧ください(https://osaka-kyoiku.ac.jp/_fi...)。この例のように、自家和合性のほうが都合が良い環境(例えば交配相手が少ないような状況)に植物がおかれた場合、その環境に適応するために、遺伝子変異により自家不和合性を克服する方向に進化することもあるでしょう。

鈴木 剛(大阪教育大学)
JSPP広報委員長
木下 哲
回答日:2018-05-12
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