一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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帯化したきゅうり

質問者:   教員   YN
登録番号4109   登録日:2018-05-20
中学校の授業で植えたきゅうりの中に
帯化したものがありました。
茎が扁平になり、頂芽が3つあります。

見た目がおもしろいので色々と調べておりますが
あまり情報を見つけられません。
また、高校生からは研究材料にしたいといって、
どんな点を観察していけばいいか等という質問を
受けるのですが、良いアドバイスができず困っています。

帯化とは、どんな分野の学問で、
どんなことを調べれば開明していけるのでしょうか。

過去にも、帯化についての記事があったので
質問させていただきました。

お答えいただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
YN さん、

本コーナーをご活用頂き有り難うございます。
ご質問は、熊本大学の相田光宏先生にお答え頂きました。

【相田先生のご回答】
帯化は植物の発生学、つまり形づくりのしくみを調べる分野で研究されています。帯化がどのように起こるかは、形づくりの観点から述べると大きく分けて二つの原因が考えられます。一つはシュート頂分裂組織の肥大、もう一つは枝と茎との融合です。

まず一つ目についてです。シュート頂分裂組織は茎の先端にあるドーム状の部分で、盛んに細胞分裂をおこなって茎や葉をつくっていく場所です。通常、この部分は幅にして100ミクロン(1ミリの10分の1)くらいの小さなもので、植物の一生を通じて、だいたい一定のサイズを保つようになっています。一方、帯化する植物では、成長するにつれて分裂組織のサイズが徐々に大きくなっていきます。その結果、分裂組織から作られる茎もだんだん太くなり、帯状になります。

もう一つの枝と茎との融合ですが、これは枝分かれが不十分なことが原因です。キュウリのような種子植物では、枝分かれは葉の付け根と茎との間に生じることが一般的です。この新しくできた枝と、枝が生じたもとの茎は、本来は別々の器官なのでくっつくことはありませんが、何らかの原因で枝と茎の間にも細胞ができると互いにつながってしまいます。こういった「枝分かれする」→「もとの茎とくっつく」という過程が茎の先端付近で繰り返し起これば、多数の茎がつながって帯状になると考えられます。この場合はシュート頂分裂組織の大きさは特に変わりません。

さて、どんなことを調べればよいかについてですが、帯化したキュウリと正常なキュウリで、茎の先端付近の形を詳しく観察し、比較しててみることをおすすめします。この部分はたくさんの小さな葉で覆われているので観察が難しいのですが、先の細いピンセットで丁寧に葉を取り除いていくことで、うまくすればシュート頂分裂組織の大きさに違いがないかなど、なんらかの手がかりが得られると思います。また、先端から下へ向かって茎の形がどの様に変わっていくかについて丹念に辿っていくのも良いと思います。

帯化は植物の形づくりの仕組みを理解するのにとても良い題材です。実際にシロイヌナズナではclavata(クラバータ)という変異体が知られており、この変異体を使った研究から植物がどういう仕組みでシュート頂分裂組織を維持していくのかが分かってきました。ぜひ、キュウリでも帯化の原因を探求してみて下さい。


相田 光宏(熊本大学)
JSPP広報委員長
木下 哲
回答日:2018-05-31
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