一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の毛

質問者:   小学生   ツッチー
登録番号4110   登録日:2018-05-21
今、ナガミヒナゲシの観察をしています。
茎やつぼみに毛が生えていて、茎の部分ではその向きが、途中から、変わっています。
下が立っていて、上がねています。
気になります。なぜですか?
ツッチー さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
細かいところまでよく観察されていますね。ケシの仲間には毛があるものとないものとがありますが、毛のある方が多いようです。毛のあるなしが似ている種の区別に使われることもあります。植物の毛(トライコーム、毛じ とも言います)の多くは表面を覆っている表皮細胞が変形して毛状になったもので、その役割はいろいろです。分泌物を出す腺(ネバネバした粘液や蜜を出したりします)やある種の物質(香りの成分など)を合成、蓄積するもの、密生して防御的なものなどがあります。また形もいろいろで1つの細胞だけのもの、数個の細胞から出来ているもの、枝分かれのない線状のもの、枝分かれしたもの、とげ状、うろこ状になどがあります。
ちょうど庭にヒナゲシがありましたので調べてみました。確かに、ヒナゲシでも茎、花茎どちらにも白い細毛があり、茎では細毛は茎から外向き(開出)に、花茎ではほとんどが上向きに伏せて(伏性)いました。他の観察結果を調べてみたところオニゲシでは「全体に細毛があり、下部ではやや開出(立っている)、上部では伏生(寝ている)」といった記載がありました。「なぜですか?」とのご質問ですが「今のところ分かりません」「ナガミノヒナゲシの特性です」とお答えするしかないと思います。植物毛の形、働きなどは植物種や形成場所によって特異的に決まっていますので、遺伝的に決まっていると考えられます。今は遺伝子の働きを調べることが出来るようになっていますので、近い将来に開出型、伏性型の出来方が遺伝子の働きのレベルで分かるようになるかも知れません。ツッチーさんが大きくなったら植物学研究者になってこの問題を解決することが出来るかも知れません。

今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-05-28