一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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クローバーの緑肥効果について(地上部のみ)

質問者:   会社員   キム
登録番号4114   登録日:2018-05-24
クローバーの緑肥効果について地下部には根粒菌があるので窒素があるのは知っていますが、地上部だけをすきこんでも肥料にはなりませんか?
キムさん

植物 Q&A「みんなの広場」へようこそ。質問を歓迎します。

植物を収穫せずに、そのまま土壌にすきこんで土壌の改良に用いることを緑肥といいます。以下の説明のように、クロバーの地上部だけすきこんでも、緑肥としての効果が十分期待できます。
窒素は、植物細胞中のタンパク質、アミノ酸、クロロフィル、核酸(RNAやDNA)、リン脂質などの構成元素として、植物の生育に必須です。植物自身は大気中のN2を直接利用することはできず、生育に必要な窒素を環境中のアンモニア、硝酸塩、窒素酸化物、その他の窒素を含む化合物(分解産物を含む)から得ています。環境中の窒素化合物の供給が植物の生育にとって不十分な場合は、マメ科植物のように根に根粒菌を共生させて窒素栄養を得る植物は生態学上有利です。
共生菌をもつ植物にとって、根粒菌が合成した窒素化合物(アンモニア)を根に貯めておくだけでは宝の持ち腐れとなりますので、植物はアンモニアをアミノ酸や他の窒素化合物に変換して窒素を必要としている器官に導管を通して輸送します。需要者としては、生育期では葉が最大で、窒素化合物は、光合成のためのタンパク質、クロロフィルなどの合成に利用されます。結実期では、種子が最大の需要者で、種子タンパク質などに変換して蓄えられます。
マメ科植物を緑肥として利用する場合は、結実前の植物全体を土壌にすき込みます。植物体は土壌微生物などにより分解され、その窒素化合物は、次に植えられる植物の生育を助けることになります。わが国では、かつてはイネを収穫後の田にゲンゲ(レンゲソウ)を植え、春先に土壌にすき込んで緑肥として利用することが広く行われ、春先の赤紫色の花をつけたゲンゲは春の風物詩となっていました。すきこんだゲンゲが分解され、土壌が田植えに適した状態になるには、約1ヶ月を要します。近年、化学肥料の相対的価格が低下し、また保温折衷苗代の普及により田植えの時期が早まったこともあり、ゲンゲの栽培面積は以前に比べて減少しています。
なお、緑肥には、窒素栄養の供給のほかに、土壌中の有機物の増加により好ましい微生物の生育を助ける、土の空隙が多くなることにより通気性や保水力を高める、などの効果が期待できる場合もあります。


櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-05-27
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