質問者:
会社員
ユイマール
登録番号4118
登録日:2018-05-25
地球上の樹木の最大長が、140mとされていることを最近知りました。みんなのひろば
被子植物と裸子植物の最大長の違い
根圧など、さまざまな要素が絡んでいるようですが、主に以下の2点が計算結果に出ているものと解釈しています。
・木は、蒸散によって地面から水を吸い上げている。
・導管のような毛細管内の気圧は約200気圧とされている。(導管の直径 1/200~1/6 mm)
さて、被子植物と裸子植物では、導管の発達が違い、進化している被子植物は、通水専用の空洞組織を持っているのに対し、裸子植物は導管が発達しておらず、細胞同士の小さな穴(仮導管)で水を運搬していると調べて知ったのですが、
この場合、両者の構造上吸い上げられる高さに大きな変化
はあるのでしょうか?
ユイマールさん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は、導管、仮導管の構造上の違いが水を吸い上げる高さに違いがあるか、と言うものと理解した上でお答えします。
多くの裸子植物では、通導を担う仮導管は側面に壁孔をもった仮導管細胞(長さ2mm程度)が側面で重なり合いながら縦方向にも並んだもので、水は仮導管細胞間を壁孔を介してジグザクに上昇していきます。一方、被子植物では導管要素細胞が縦につながっていて、細胞の両端が崩壊して一本の長い管状(長さ2~20cm)になっています。この長い管が両端で別の導管の端で並列し壁孔を通して繋がっています。仮導管と導管の平均内腔の太さは、導管(20~500μm)の方が大きく、水は仮導管(5~80μm)よりも通りやすくなっています。実際、枝の樹液通導率を測定すると被子植物の枝の方が裸子植物の枝よりも大きいとの結果が得られています。このように、仮導管、導管で構造の違いはあるものの、水、栄養素の通導路としての役割、流れる水の動きの仕組みは同じです。水を吸い上げる高さに違いが出ることは予想されません。
とすると無限成長を続ける樹木では、何が樹高を決めているのかが問題になります。水の通りやすさ(したがって栄養素の供給効率)は被子植物の方が良いので、より成長もよくより高くなるように思われますが、記録に残る最大樹高の植物は針葉樹(ジャイアント・セコイア)です。樹種と立地条件が最終樹高に影響しますが、最近の研究では土壌からの水輸送の限界による樹冠光合成活性の低下、重力による水ポテンシャルの低下による新梢成長の低下などの生理学的要件が成長の制限要素ともなっていることが指摘されています。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は、導管、仮導管の構造上の違いが水を吸い上げる高さに違いがあるか、と言うものと理解した上でお答えします。
多くの裸子植物では、通導を担う仮導管は側面に壁孔をもった仮導管細胞(長さ2mm程度)が側面で重なり合いながら縦方向にも並んだもので、水は仮導管細胞間を壁孔を介してジグザクに上昇していきます。一方、被子植物では導管要素細胞が縦につながっていて、細胞の両端が崩壊して一本の長い管状(長さ2~20cm)になっています。この長い管が両端で別の導管の端で並列し壁孔を通して繋がっています。仮導管と導管の平均内腔の太さは、導管(20~500μm)の方が大きく、水は仮導管(5~80μm)よりも通りやすくなっています。実際、枝の樹液通導率を測定すると被子植物の枝の方が裸子植物の枝よりも大きいとの結果が得られています。このように、仮導管、導管で構造の違いはあるものの、水、栄養素の通導路としての役割、流れる水の動きの仕組みは同じです。水を吸い上げる高さに違いが出ることは予想されません。
とすると無限成長を続ける樹木では、何が樹高を決めているのかが問題になります。水の通りやすさ(したがって栄養素の供給効率)は被子植物の方が良いので、より成長もよくより高くなるように思われますが、記録に残る最大樹高の植物は針葉樹(ジャイアント・セコイア)です。樹種と立地条件が最終樹高に影響しますが、最近の研究では土壌からの水輸送の限界による樹冠光合成活性の低下、重力による水ポテンシャルの低下による新梢成長の低下などの生理学的要件が成長の制限要素ともなっていることが指摘されています。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-05-29