一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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いちごの根は甘いのか

質問者:   会社員   ちさ
登録番号4130   登録日:2018-06-06
はじめまして。市民農園で野菜を育てている主婦です。
先日、収穫が終わったいちごの葉と根を引き抜いた所、大量のアリと卵が出てきました。巣を作っていたようです。
菜園アドバイザーの方がそれを見て「いちごの根は甘いからアリが寄ってくる」と教えてくれました。
いちごの根が甘い、という、これは本当でしょうか。
だとすると糖分なのでしょうか。それとも香りの問題でしょうか。
もしくは、根が甘いのは嘘で、ただ単にいちごの土の環境が蟻の巣に適していたのでしょうか。
ご教示いただければ幸いです。

ちさ様

みんなのひろば植物Q&Aをご利用下さりありがとうございます。

いちごに限らず、さまざまな花木や野菜の根元に蟻が巣をつくって問題になっているようですね。しかし、私も家庭菜園を楽しんでおり、いちごを含めて一年間で二十数種の野菜を育てていますが、十数年の間、蟻の巣で悩まされたことはありません。また、庭や植木鉢で多数の花木を育てていますが、やはり蟻の巣で悩まされたことはありません。まわりのいちごを育てている農家の方にも聞いてみましたが、そのようなことはないということでした。このようなことから考えますと、いちごの根元に蟻が巣をつくるというのは土壌環境がその土地に生息する蟻の種類の営巣に適していたためではないかと推測します。

いちごの根が甘いか?という問題ですが、根に蜜腺があるということは知りません。糖が蓄積しているということも知りません。いちごを育てていますので、さっそく実際にかじってみましたが、少なくとも甘いと感じるほどには蓄積していないようです。糖を分泌しているとしても、土壌中には莫大な数の微生物が棲息していますので、すぐ分解されて蟻を誘導するほど溜まるとは思えません。

いちごの受粉のために蜜蜂を使用するということをお聞きになったことがあるかと思いますが、いちごは虫媒花植物です。花に蜜腺をもち昆虫を誘導して送粉してもらいます。蟻がこの蜜を利用するために誘われてくる可能性はあります。また、あぶらむしが付いていると、あぶらむしの出す甘露を利用するために寄ってくる可能性もあると思います。しかし、蜜に誘われてくることと、根元に巣をつくることと直接的な関係があるのかはわかりません。



庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日: