一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ケルセチンの含有量について

質問者:   会社員   バラ窓
登録番号4132   登録日:2018-06-09
大分久しぶりに投稿します。
ケルセチンはタマネギに多く含まれていると聞きます。
実は、去年の八月下旬頃から種を播き、十月上旬頃苗の状態まで育てて植え付け、現在、玉の大きさはまちまちですが、収穫できる時期になりました。
またタマネギは、収穫したばかりより、雨がかからない場所に吊るして熟成させたもの方が、収穫してすぐのものより、ケルセチンの含有量が多くなると聞きます。
いわゆる時間が経て、薄茶色に変わった状態の皮の部分に、多く含まれるようになると言った事です。
この事は本当でしょうか?

バラ窓 さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ケルセチンを含むポリフェノール類は健康にいろいろ有益な効果があることから近年、大きな話題となっています。ケルセチンはほとんどの植物に含まれている極めて一般的なフラボノイドの1つで、特に水酸基が最大に含まれているフラボノイドでその抗菌、抗酸化作用が強いことから注目を浴びています。
お尋ねのタマネギに限った知見に基づいてお答えします。タマネギの品種、栽培法、日照時間などによってケルセチンの含有量は変わりますが可食部の平均的な測定値を中心にしますと次のことが明らかにされています。
1.タマネギ鱗茎の肥大成長が止まる時期(茎葉部が折れる時期)まで含有量は増加する、
2.外側の鱗茎片の含有量がもっとも多く、内側に移るにしたがって含有量は減少する、
3.光(特に紫外線UV-B)を照射すると含有量は倍増する。日照時間の長い年の含有量は短い年の含有量よりも大きい、
4.鱗茎の上部が下部(根のある側)よりも含有量は大きい、
5.鱗茎片(可食部)に含まれる90%は鱗茎片の表皮に含まれる、
6.ケルセチンはブドウ糖配糖体(モノグルコシド、ジグルコシド)として存在し、遊離のケルセチンは調理処理の過程で増加する(配糖体の加水分解による)、
7.可食部の測定値はケルセチン配糖体として300~600mg/kg、外側鱗茎片では最大1,400mg/kg

「吊るして熟成」することは光を照射することと同じですからケルセチン量は増加(生合成が進む)しますし、いくらかの乾燥で、単位重量当たりの含有量は増加するはずです。また、外側の茶色の皮は、最外層及びその内側にある鱗茎片が乾燥したものですから、その重量はおそらく1/10以下に減少するのにケルセチン配糖体は減少しませんから、単位重量当たりのケルセチン量が可食部の10倍以上になっても不思議ではありません。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-06-12