一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

赤紫蘇の葉の色について

質問者:   会社員   季節の美味しい食の研修生
登録番号4134   登録日:2018-06-10
こんにちは。
赤紫蘇の葉の色についてお伺いさせて下さい。

毎年この時期、赤紫蘇で紫蘇ジュースを作っています。
好きが高じて、周りの人から分けて欲しいと、依頼を頂くようになりました。

人にお譲りするなら、安全安心なものをと、スーパーで手に入るものでなく、無農薬で摘みたてのものを取り寄せるようにしたのですが、

スーパーに並ぶ赤紫蘇と、自分で取り寄せているものが全く違うことに驚き、自分なりに調べてみたのですが、赤紫蘇に関してあまり書かれているものがなく、わかったこともありましたが、わからないことも多かったので教えて下さい。

自分なりに調べわかったことは、スーパーの赤紫蘇は、縮緬タイプで、取り寄せた赤紫蘇は平葉タイプと、タイプが違うものだと言うこと。
今回のものとは違うが、ウラアカジソという、葉の裏側が赤い赤紫蘇が世の中にはあるということ。

鮮度に関しては、取り寄せた赤紫蘇は、無農薬、摘みたてをクール便で送ってくれていて、張りもあり、葉全体が赤紫色、煮ていると、紫蘇らしい良い香りがしたこと。出来た紫蘇ジュースも香り良く味も良かった。

スーパーの赤紫蘇は、いつ仕入れたものかは不明、私が購入した日は、非常に暑い日であり、赤紫蘇はスーパーの開閉扉入り口すぐに置かれていた為か、袋から出すと、シナっとしているものもあり、蒸れた感じの青臭い香りがしたこと。

外観に関しても、スーパーの赤紫蘇は、葉の真中は、際どく紫色をしているが、全体的には緑色に近く、まるで紫色が抜けたような、まるで青紫蘇に紫の色素でも吸わせたような(そんなことはないでしょうが、イメージ的に)赤紫色の薄さを感じたこと。煮出した汁は、しっかり紫色が出たので、赤紫蘇に間違いないのですが、出来た紫蘇ジュースは青臭さが少し残るものとなった。

赤紫蘇の赤紫の色については、アントシアニンの色だと書かれているのを拝見し、アントシアニンが強い太陽の光の作用から植物を守る役割をしていることも知りました。

今回、私がスーパーで購入した赤紫蘇は、あまり赤紫色が強くなかったことから、太陽の光があまり当たらない環境で育てられたのでしょうか?

シナっとしていたことからも、鮮度が落ちていたことも伺えます。赤紫蘇の鮮度が落ちると、赤紫色が退色するようなことはあるのでしょうか。

私が購入した赤紫蘇の色の薄さについて、考えられることについて教えて下さい。

どうぞ宜しくお願い致します。






季節の美味しい食の研修生 様

ご質問をありがとうございます。
この質問にはアントシアニンについてお詳しい名古屋大学の吉田久美先生から下記のような回答文をいただきましたので、参考になさってください。

【吉田先生からの回答】
梅雨に入り、梅の季節、そして赤紫蘇の季節になりましたね。
紫蘇にも色々な種類があることをお書きですのでご存知かと思います。葉の縮れた縮緬紫蘇もあれば、平らなものもあります。さらに、一本の植物体でも、新芽と下の方の古い葉では、当然色が異なります。古い葉の方が、クロロフィル含量が多いはずです。香り成分についても、品種が異なれば、当然違います。比較されておられる紫蘇が、スーパーマーケットのもの(いわゆる市場などの流通経路に乗って出回っている農産物)であれ、個人、あるいは農家が市場を通さずに直接販売されておられる農産物であれ、品種が異なれば、性状が異なることは当然のことです。ある意味、ソメイヨシノと八重の枝垂れ桜を比較するようなものです。開花期も異なれば、花色も違います。何より、樹形が異なります。

紫蘇葉に含まれるアントシアニン色素は数種類あります。それ以外にもロズマリン酸などの無色のポリフェノール成分がかなり大量に含まれています。私自身は品種間差を調べたことはありませんが、これらの成分の含有量や組成比が、品種や生育環境によって変わることは十分考えられます。特に、ロズマリン酸などのポリフェースが多いと、褐変しやすくなります。それが、最終的に紫蘇ジュースに影響を与えることは、あるかもしれません。ただし、スーパーの紫蘇が良くなくて、無農薬が良いというのは少し短絡的かなと感じました。

「鮮度が落ちると退色するか」については、「登熟、老化が進むとアントシアニン含有量に変化があるか」という質問に置き換えることができるかと思います。これについても、分析したことがないので、申し訳ありませんがわかりません。例えば、梅は緑から黄色くなり、赤い部分が出てきます。この赤い部分はアントシアニン色素によるものですから、「登熟するにつれ、アントシアニンが増える」と言えます。一方、菊などで、開花期に高温が続くとアントシアニン含有量が下がるという研究報告はあります。アントシアニンの生合成が妨げられるのです。また、秋の紅葉はアントシアニンによるものですが、最後の頃には、アントシアニンはさらに化学変化して別の赤褐色の物質に変わります。

あくまでも、入手された紫蘇の品種が異なることによる性状の違いではないかと思われます。お答えになっているか心許ないですが、ご容赦ください。




吉田 久美(名古屋大学大学院情報学研究科・複雑系科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2018-06-12