一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アルビノの桜は育つのか

質問者:   会社員   せい
登録番号4143   登録日:2018-06-21
神社の境内にある桜の樹の根から、真っ白い桜の芽が育っているのをみつけました。
他の芽は、緑ですが、一本だけ全て白。透き通るような白にうっすらと、桜色がはいるような芽でしたが、このまま育つのでしょうか。
枯れたり、緑になっていったりするのでしょうか。
よろしくお願いします。
せい さん

このコーナーをご利用くださりありがとうございます。ご質問には岡山大学の坂本先生から下記のような回答文を頂戴しました。ご参考になさってください。

【坂本先生からのご回答】
神社の境内の桜で真っ白い芽を見つけたとのことですが、毎日通りかかるところだったのでしょうか、それともたまたま見つけたのでしょうか。植物学者としては恥ずかしながら、私は満開の桜ばかり見ていて、そのような芽を見たことはないですが、白いと目立つのかもしれませんね。大きな桜から小さな芽が出ていたのでしょうか。
真っ白だとすると、そのまま大きくなる可能性は少なさそうです。

根元から出てきた芽は「ひこばえ」、白い芽だと「アルビノ」と言います。見つけた桜の木は、もしかすると、樹齢が何十年も経った、大きいけれど葉が茂り過ぎているような桜の木でしょうか。「ひこばえ」は、大きな幹を切った株から出てくる芽のようなものを指すので、「ひこばえ」を見たということは、主幹の成長がよくないのかもしれません。それから、ソメイヨシノなどでは接ぎ木をしていることが多いので、根から芽が出たということは、台木になっている木から芽が出たのかもしれません。

アルビノの芽が出たのは、木が「ひこばえ」を生やす能力(生長点)は持っていたのですが、光合成をして生育を続けるための葉緑体ができないために、白くなってしまっています。この白い芽は、おそらく、枝変わりのように突然変異で出てきたものというよりは、養分や光などが十分でなかったために葉緑体が発達しなかった芽のようです。新芽の中で葉緑体は「プロプラスチド」という前駆体から緑になって光合成をしますが、光や養分が足りないと不可逆的に葉緑体を作るのをやめてしまうので、緑に戻る可能性は低そうです。延命の可能性としては、挿し木にして成長を続ければ、もしかしたら緑の芽が出てくるかもしれません。


坂本 亘(岡山大学資源植物科学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2018-06-26