一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ノウゼンカズラの蕾が消える。

質問者:   その他   ゆうちゃん
登録番号4155   登録日:2018-07-01
我が家(湘南の比較的海辺に近い住宅街)にある樹齢30年近いノウゼンカズラは、蕾を一杯つけるのですが、花が咲きません。その理由は、枝(あるいは蔓?)先の蕾がある程度膨らんできてから、消えてしまうからです。病害虫が原因であることも考えられますが、地面には蕾が落ちてないことから、目撃したことがないのですが、鳥などにたべられているのではないかと考えています。日ごろよく見かけるのは、ヒヨドリ、ムクドリ、カラスなどですが、これらが昼間蕾を食べているところを目撃したことはありません。ひょっとすると夕方以降よく見かけるコウモリが犯人かと疑っております。(質問)ノウゼンカズラの蕾を好んで食べる動物がいるのでしょうか。
ゆうちゃん様

 みんなのひろばの植物Q&Aをご利用下さりありがとうございます。
 すでにいろいろお調べになっておられるようですが、質問内容を私なりに調べ、考えてみました。
 先ず原因が鳥である可能性についてですが、自生地の熱帯地方では、ノウゼンカズラとハチドリとの間には、ノウゼンカズラは花蜜を提供する代わりに、ハチドリに花粉を他の個体の花に届けてもらえる(鳥媒という送粉方式)という共生関係が成立しています。ハチドリがノウゼンカズラに誘引されるのは、橙黄色~赤色の花色と言われています。ハチドリは日本におりませんが、日本でも赤色の花をつけるツバキやサザンカで、ヒヨドリやメジロが送粉者となることが知られています。このことから考えるとノウゼンカズラの花色に鳥が誘引されても不思議ではないように思われます。実際、よく見かけられるというヒヨドリ、ムクドリ、カラスの他にメジロも観察されています。しかし、蜜を吸うという記載はあっても、花あるいは蕾を食するという記
載は見当たりませんでした。また、質問内容には、ある程度膨らんだ蕾と書かれていますが、蕾の色が鳥を誘引するほど鮮やかであるか疑問です。
 次にコウモリの可能性を指摘されていますが、確かにコウモリ媒の植物は多くの科にわたっており、少なくとも27科500種以上と報告されています。多くは熱帯産の植物です。ノウゼンカズラ科の植物にもあります。しかし、コウモリは夜行性で夕刻に開花する白色~緑色花に誘引されることが多いようで、赤色は認識できないそうです。また、嗅覚に優れており、色よりは発酵臭に惹かれるということです。ノウゼンカズラの花は、昼間に咲き、橙黄色~赤色(蕾がどのような色か不明ですが)をしており、また匂いもないという点でコウモリを誘引する条件は整っていないように思われます。
 病虫害という可能性については、スズメガの幼虫という可能性が記載されています。夜行性で昼間は地中に潜っているとのことですので、糞が残っているかどうかや周囲の地面を掘って幼虫を探してみることで可能性を検証できるかと思います。ただ樹齢が30年という大木のようですので、そこまで地中から移動するかという疑問は残ります。
 質問内容にはありませんでしたが、数日の長雨での日照不足と過湿、半日ほどの日陰、枝の過密などの条件で花がつかなかったり、蕾が落ちたりすることがあるそうです。しかし蕾が消えることはありません。
 結局のところ、蕾が消えて、しかも落ちている痕跡が見られないという条件を充たす原因は、残念ながら探り当てることができませんでした。

 動物によるという可能性は防鳥網をかけてみることで、病虫害である可能性は殺虫剤をかけてみることで検証できるのではないでしょうか?

 また、鳥の花食から、鳥媒に進化したという仮説もありますので、長い時間でみると植物に関係があるかもしれませんが、花食の問題は、動物学会(鳥類学会)や環境保護機関などに問い合わせて頂いた方がより適切な情報が得られるかもしれません。



庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-07-12