質問者:
その他
Chika31123
登録番号4159
登録日:2018-07-07
バイカモは冷涼な湧水中などに育つ植物で花を咲かせ、種子も出来ると思いますが、どのようにして繁殖地を増やすのでしょうか? ちぎれた茎からも簡単に発根すると聞きますがそれでは上流には登れません。また種は水に流され上流に行くことは考えられず、いわんや他の河川にまで流れ着く術はあり得ません。 バイカモの増殖法
鳥(カルガモ?)に食べられて運ばれるのでしょうか。種子が魚に食べられて体内を経由して他の河川に行くことは出来るかも知れませんがそれには日数が掛かりすぎ、それまでに排泄されてしまうでしょう。
よろしくお願いします。
Chika31123さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
日本でバイカモは北海道から近畿地方の清流に生育しています。近畿地方(主に兵庫県、京都府、滋賀県)が南限とされており、この地域では種々の理由で絶滅の恐れがあることで積極的な保全活動がおこなわれています。いくつかの生態調査によれば、水温15度付近、水深30~50cm、平均流速毎秒0.2~0.3mの湧水清流があり、河床には砂礫が数センチ堆積している環境がもっとも好適地となっているようです。茎葉の成長は旺盛で茎は側枝とともに匍匐茎となり節からは不定根が砂礫の中に食い込んで茎葉部を支える。匍匐型は砂礫の移動堆積によって砂礫中に埋没されて地下茎のようになる場合もある。多年生で、春先に地下にある根、匍匐茎、側枝などから新芽が発芽し茎葉体形成がはじまり、夏には個体群を形成するようになる。茎葉部は切れやすく、いわゆる「切れ藻」となって下流に流れ、砂礫や既存の茎葉体にその他に引っかかり、発根、定着することが実際の繁殖の主な姿と推定されるが、種子による繁殖も個体群の中では見られるようです。
ご質問は、流れの中では切れ藻や種子は下流にしか流れない、上流への繁殖はあるのか、と言うことのようです。京都大学 瀬戸口浩彰教授のバイカモの調査研究報告書(https://www.kasen.or.jp/Portals/0/pdf_jyosei/jyosei02c_118.pdf)には「バイカモは水中花と水上花を作り、どちらにおいても種子を形成することから、特に水中花の場合には自家受粉の可能性が高いと考えられている (角野, 1994)。しかし、これらの交配様式は直接的な観察が行われておらず、また酵素多型解析などの遺伝的解析で検証もされていないため、推測としての記述に止まっている。繁殖様式や種子散布様式についても同様に明らかにはなっておらず、切れ藻や分枝による栄養生殖と種子散布のどちらが主なのか、自家受粉と外交配のどちらが主なのか、種子は水流散布なのか、それとも動物散布もあるのか。このような疑問に対する明確な答えはない。」と記載されています。つまりご質問に対する根拠のある回答はないと言うことです。そこで、推測をしてみます。
個体群の中の水流は複雑で、植物体と砂礫層との相対位置の関係で底流には逆流が起きることが確認されています。したがって、僅かながらも種子繁殖で上流への移動は可能ですし、匍匐茎は上流へも伸長し発根を続けますから、個体群としては上流方向へも成長することになります。また一般論になりますが、「流れ藻」や種子が鳥の足などに付着し、上流へ運ばれて繁殖することも十分考えられます。どうも実際は、河川工事などで土砂に紛れ込んでいた切れ藻や種子による繁殖も無視出来ないようですが。
瀬戸口先生の報告書はたいへん参考になると思いますのでご一読ください。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
日本でバイカモは北海道から近畿地方の清流に生育しています。近畿地方(主に兵庫県、京都府、滋賀県)が南限とされており、この地域では種々の理由で絶滅の恐れがあることで積極的な保全活動がおこなわれています。いくつかの生態調査によれば、水温15度付近、水深30~50cm、平均流速毎秒0.2~0.3mの湧水清流があり、河床には砂礫が数センチ堆積している環境がもっとも好適地となっているようです。茎葉の成長は旺盛で茎は側枝とともに匍匐茎となり節からは不定根が砂礫の中に食い込んで茎葉部を支える。匍匐型は砂礫の移動堆積によって砂礫中に埋没されて地下茎のようになる場合もある。多年生で、春先に地下にある根、匍匐茎、側枝などから新芽が発芽し茎葉体形成がはじまり、夏には個体群を形成するようになる。茎葉部は切れやすく、いわゆる「切れ藻」となって下流に流れ、砂礫や既存の茎葉体にその他に引っかかり、発根、定着することが実際の繁殖の主な姿と推定されるが、種子による繁殖も個体群の中では見られるようです。
ご質問は、流れの中では切れ藻や種子は下流にしか流れない、上流への繁殖はあるのか、と言うことのようです。京都大学 瀬戸口浩彰教授のバイカモの調査研究報告書(https://www.kasen.or.jp/Portals/0/pdf_jyosei/jyosei02c_118.pdf)には「バイカモは水中花と水上花を作り、どちらにおいても種子を形成することから、特に水中花の場合には自家受粉の可能性が高いと考えられている (角野, 1994)。しかし、これらの交配様式は直接的な観察が行われておらず、また酵素多型解析などの遺伝的解析で検証もされていないため、推測としての記述に止まっている。繁殖様式や種子散布様式についても同様に明らかにはなっておらず、切れ藻や分枝による栄養生殖と種子散布のどちらが主なのか、自家受粉と外交配のどちらが主なのか、種子は水流散布なのか、それとも動物散布もあるのか。このような疑問に対する明確な答えはない。」と記載されています。つまりご質問に対する根拠のある回答はないと言うことです。そこで、推測をしてみます。
個体群の中の水流は複雑で、植物体と砂礫層との相対位置の関係で底流には逆流が起きることが確認されています。したがって、僅かながらも種子繁殖で上流への移動は可能ですし、匍匐茎は上流へも伸長し発根を続けますから、個体群としては上流方向へも成長することになります。また一般論になりますが、「流れ藻」や種子が鳥の足などに付着し、上流へ運ばれて繁殖することも十分考えられます。どうも実際は、河川工事などで土砂に紛れ込んでいた切れ藻や種子による繁殖も無視出来ないようですが。
瀬戸口先生の報告書はたいへん参考になると思いますのでご一読ください。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-07-10