一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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シダ植物の胞子のう

質問者:   教員   お茶
登録番号4165   登録日:2018-07-18
こんにちは、植物のことを調べる時によく利用させていただいております。

さて、本題ですが最近シダ植物の観察を行いました。シダ植物は葉の裏に胞子のうができるということも確認しました。
観察が終わったときに、ある生徒が「胞子のうが葉の裏にあることはわかりましたが、なぜ葉の裏にできるのですか?」と質問してきました。
私は「葉の裏にある方が胞子が飛ぶときに地面に辿り着きやすくて、発芽しやすいからだよ」と教えたのですが、これは合っているのでしょうか?
専門家の方のご意見を頂きたく、質問させて頂きました。よろしくお願いいたします。
お茶 様

みんなのひろばの植物Q&Aに質問をお寄せ下さりありがとうございます。また、常日ごろ、本コーナーを利用下さっておられるとのことありがとうございます。

シダ植物の多くで葉の裏側に胞子のうがみられるが、それはどうしてかという生徒さんの率直な疑問に答えるのはたいへんですね。
実験して確かめることができる問題ではありませんので、あくまでも推測になりますが、胞子のうが葉の表側にあると不都合なことは何か、胞子のうが葉の裏側にあるとよいことは何かということを考えてみました。
植物は光エネルギーを用いて、水と二酸化炭素から糖を合成して生活しています。上から降り注ぐ太陽光は主として葉の表側の表面から吸収されます。そこに、たくさんの胞子のうがあったら、光の吸収が著しく妨げられることになるでしょう。
シダ植物が分布を広げるには、胞子を遠くまで飛散させることが望まれます。
その点では、表側にあった方が風で飛散されやすいと思いますが、一方、雨で流されたり、湿ったために飛散しにくくなることも考えられるでしょう。裏面の方が、乾燥とか、強風とか環境のの影響を受けにくいということもあるかもしれません。

まだ他にもあるかもしれませんが、上記の推測は現在の状態(胞子のうが裏面にある)をもとにした推察で、植物が目的をもって裏面に胞子のうを作っているわけではありませんので、「どうして」という質問に対しては、本当のところは「わからない」ということだろうと思います。

なお、植物Q&Aの登録番号3793 に、シダ植物の葉の表裏と気孔の分布の問題が扱われていますが、それと関連して胞子のうとの関係のこともでてきますので参考になると思います。



庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-07-26