一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の蒸散について

質問者:   小学生   みづき
登録番号4168   登録日:2018-07-24
6年生の授業で蒸散について習い、興味をもち自由研究で調べることにした。
あじさいの葉を使って実験したのですが、ほぼ同じ大きさ・同じ枚数・同じ高さの葉に同時刻(9時)にビニール袋で覆い実験を開始し、はずした袋を0.1g軽量できるはかりで計測しました。
実験結果は予想と反して、日中の6時間袋をかけた葉(1.2g)、24時間かけた葉(0.6g)となり、6時間のほうが蒸散量が多い結果となりました。日中に蒸散された分は目視ですが、2つとも同じくらい水滴がついていました。ビニール袋なので蒸発したとは考えにくいのですが、どういった作用が働いたのでしょうか?
間違いかと思い、1週間同様の実験をしましたが、同じ結果でした。
1週間の天気は毎日晴れで全く雨が降らず、最高気温33~36℃ 最低気温26~27℃と毎日同じような天気でした。
よろしくおねがいします。





みづき さん

ご質問をありがとうございます。
授業で学んだ「蒸散」について、自由研究で調べようとしているのですね。
実験の条件をそろえるように工夫し、また、結果が再現できるものであることを確認するなど、とり組まれる姿勢には感心いたします。
ところで、この研究の第一の目的は、あじさいについて蒸散の大きさ(速度や規模)を知ることですか、それとも、蒸散の大きさの時間的な変化を知ることでしょうか。目的がどちらにあるにしても、6時間と24時間での測定は、時間のとり方があまりにも大まかすぎると思います。まずは、短い時間間隔での測定が必要だと思います。
ご存知のように、蒸散とは植物の体を通して水が蒸発して行く現象(げんしょう)です。蒸散の大きさは、植物の体の側について言えば気孔の開きぐあいなど、実験(環境)条件について言えば植物が受ける光の強さ・温度・湿度・葉の表面から水蒸気が拡がる速さなど、いろいろな条件によって大きく変化します。これらのことを考えると、葉っぱを長時間ビニール袋で囲っておくことには問題が多いように思えます。また、日中の連続する6時間の間にビニール袋にたまる水滴の水量と、昼から深夜をはさんだ24時間の間に袋にたまる水量(あなたの実験の結果によると、夜間に植物による水分の吸収が起こっているように見受けられる)を比較することには問題があると思えます。ビニール袋の中への水滴の蓄積として蒸散を見つもっていることになりますが、水蒸気として逃している部分があるのではないか? 植物の生理活性が劇的に変化する昼夜をはさんだ24時間もの長時間の間に、蒸散によって植物体から放出された水蒸気が水滴として貯まって行くのであろうか? などが気になります。蒸散は大規模な現象ですので、例えば簡単に、切り枝(葉)を水にさして、水分の減少として蒸散の大きさを見つもるなど、目的に応じた測定方法について工夫をしてみられることをおすすめします。「(自由)研究」に使う時間の大部分は、予備実験を含め、どのようにすれば目的とすることをうまく測定できるかについて工夫する時間であると思います。自由研究が良い成果を生むものとなることを願っております。

私ごとですが、大賀ハスと呼ばれるハスのポット栽培をしており、夏には毎日の水やりが大変です。ハスが植わってないポットでは暑くても水の蒸発はそれほど多くはないのですが、植わっている場合には水が素早くなくなって行くことに驚かされます。蒸散に関連して、本コーナーに「植物が一日に吸収する水分量について」と題するQ/A(登録番号3507)がありますので、小学生にとっては少しむずかしい部分があるかも知れませんが、参考のために読んでみてください。



佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-07-30