植物Q&A

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細胞壁の有無について。

質問者:   高校生   Cell
登録番号4171   登録日:2018-07-25
何故、動物細胞には細胞壁がないのに、
植物細胞には細胞壁があるんですか?
Cellさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。 しかし、「何故か?」という問いは植物生理学(科学)の立場からお答えするには深遠すぎて大変な難問ですね。哲学/宗教あるいはファンタジーの分野では議論されうる問題かもしれませんが。
 現在地球上に生息するすべての生物は、40億年前後の昔に誕生した原始生命から出発して、進化という途方もない年月をかけた過程で出現したものです。それぞれの生物は生息/生育していた当時の環境に適応する形で自身が変化していった結果、多種多様な種類が生じたのです。進化の上からは動物が出現した後で植物が現れました。そしてそれぞれがその後さらに多様な形へと変化(進化)していきました。なぜそういう経過をたどったかはわかりませんが、どのように変化していったかということは、少しずつ明らかになりつつあります。
 ここで観点を変えて、植物が細胞壁を持つことと、動物が細胞壁を持たないこととはそれぞれに生存にとってどんな意義があるのかということを考えてみましょう。あなたは高校生なので、すでに生物についての基礎的な知識はある程度持っておられると思いますが、植物と動物との大きな違いは何でしょうか。当然、植物は光合成ができ、自家栄養型であるという答えがあります。しかし、もう一つ大切なことは、植物は一生移動できない、つまり、根付いたと同じ場所で成長し、繁殖しなければならないということです。この生活型が動物には見られない植物の様々な形態的、生理的特徴をもたらしているのです。細胞壁の構成要素はセルロースとかペクチンとかの炭水化物のポリマーからできている繊維で、これらがメッシュ状に絡まってできた、強度の高い、しかも柔軟性のある布みたいなもです。植物の形状を維持しているのはこの細胞壁の構造です。植物は土壌から根によって生きている間多量の水を吸収します。水と一緒に吸収される無機養分は体内に残されて成長や細胞活動の維持に使われますが、水の大部分は葉から蒸散で空気中へ放出されます。しかし、かなりの水分が体内の細胞内に保持されます。この細胞内に満たされる水が細胞に膨圧を生じ、細胞壁を押し広げ、細胞に機械的な強度をもたらすのです。草本植物が水不足の状態に置かれると萎れるのは、膨圧がなくなり、細胞の張りが失われるからです。 樹木のような木本植物では、加齢した細胞はリグニンなどの物質が細胞壁に追加されて、細胞壁はより強固になり、細胞が死んだ後も残って幹や根のように堅固な植物体の構造の維持に役立ちます。細胞壁はその強固な性質ゆえに、一つ一つの細胞はちょうど柔軟性に富む外部骨格を持っているようなものと言ってよいでしょう。また、細胞壁はただ機械的、構造的な役割を持つだけでなく、特に生きている細胞では様々な環境因子との応答も行っています。病原菌などの攻撃に対してはその刺激を内部に知らせる信号伝達分子を合成したりもします。したがって、細胞壁は植物にとって必須不可欠の構造なのですん。
 他方、もし動物に細胞壁があったらどうでしょうか。体はコチコチになり、運動はできないでしょう。動物にとって、動くことは生存と直接に結びついています。動けないと、食べ物を探したり、配偶者を求めたり、危険な事柄から逃避したりすることができなくなります。これらの行動ができるように身体は複雑な調節システムが発達していますが、それは動物細胞は細胞壁がなくて、それ自体極めて柔軟性に富んでいるため、植物に比べて一層複雑な細胞や組織の分化ができるからです。事実、動物の細胞、組織、器官の種類は植物に比べてもっと多様です。動物にもサンゴのように一生動かないものもありますが、彼らは外部骨格みたいなものを作り、ある意味で集団で生活していて、植物に似たような構造を持っていると言えるかもしれません。。
 以上のことから、何故かという問いに対して強いて答えるならば、細胞壁は植物とっては必要であり、動物にとっては必要でないというか、邪魔だからでしょう。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-07-30
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