質問者:
一般
グリーン
登録番号4173
登録日:2018-07-28
ベランダでゼラニウムを育てています。花の後種子ができたので、すぐに蒔いて育てました。約一年後に花が咲いたのですが、親の花とは全く異なるものでした。ゼラニウムの種子から発芽し育てた苗は、親と同じ花が咲かない理由
親)丸い形の蕾、ピンクにスポットが入る八重咲き
子)細長い形の蕾、白の一重咲き
全く別の品種のように異なる花が咲いたので驚きましたが、これはなぜなのでしょうか。葉の形や株全体の形は親と子で似ていましたが、花は蕾の段階から形が違いました。
同じゼラニウムでも、種蒔きして親と同じものが咲く品種もあるようです。この違いはどこから来るのでしょうか。
また、今回は種子が1つしかできなかったので一株しか育てませんでしたが、例えば複数種子ができて育てたとして、全てが白の一重咲きになるのが、それとも少しずつ違った花になるのか、何か法則のようなものはあるのでしょうか。
グリーンさん
この質問は、一代雑種の交雑に関するメンデルの法則によって説明できます。
[メンデルの法則の説明] G.メンデルは、さまざまな遺伝的性質を持つエンドウの中からいくつかの系統を選び出し、その交雑実験により、メンデルの法則と呼ばれる3つの規則性を明らかにしました。生物の性質を決めているのは遺伝子であり、細胞は1対の染色体(核にあり、この上に遺伝子がのっている)を持ち、そのうち1方は雌花(母)から、他方は花粉(父)から受け取る。受け取った遺伝子をもとに、生物のいろいろな性質が表れるが、そのとき次の法則が成り立つ。なお、実験に用いるエンドウは注目する1対の遺伝子が同じもの(純系といい、下記の例では遺伝子はRR、またはrr)であって、異なるもの(雑種といいこの場合遺伝子はRr)ではない。
A)優劣の法則:花色が赤色のエンドウ(1対の遺伝子はRR)と白色のエンドウ(rr)を掛け合わせて得られた種子(雑種第1代)のエンドウの遺伝子型はすべてRrであるが、色(表型系)はすべて赤である。同様に、草丈が高いもの (LL)のものと低いもの(ll)を掛け合わせえられる種子の遺伝子型はLlであるが、それをまいた時のエンドウの丈(表現系)はすべて高くなる。すなわち、雑種第1代では一方の親の性質だけが現れるが、このとき現れる方の遺伝子を優性、現れないほうを劣性という。B)分離の法則:雑種第1代のエンドウ同士を掛け合わせると、次世代のエンドウの花の色は赤:白=約3:1の比に、草丈は高:低=約3:1となる。すなわち、雑種第1代で現れなかった遺伝rやlは消滅したのでなく、母系や父系の個体の中に維持されており、それが次世代に伝えられたのである。この現象は次のような確率的なものである:一代雑種の母系からRを受け取る確率は1/2、rを受け取る確率も1/2であり、父系からRを受け取る確率も1/2、rを受け取る確率も1/2であり、その種子はRR(母系を先に、父系を後に書き、その表現型は赤)となる確率は1/4(1/2x1/2=1/4)、Rr及びrR(表現系はどちらも赤)もそれぞれ1/4の確率で合計2/4、rr(表現型は白)の確率は1/4。これをまとめると、表現系は赤:白=3:1の確率となることが期待される。C:独立の法則:花の色が赤で草丈が低い純系(赤―低)と花の色が白で草丈が高い純系(白ー高)を掛け合わせると、雑種第1代では花の色はすべて赤色、草丈はすべて高(赤―高)であるが、雑種第1代同士の掛け合わせで得られる雑種第2代の種子から生じる個体の表現系は、およそ次のような確率になることが期待される:(赤―高)9/16.(赤―低)3/16、(白―高)3/16、(白―低)1/16。(判らない点はこの「植物Q&A」やインターネット等で「メンデルの法則」を検索語として調べてください)
質問:同じゼラニウムでも、種蒔きして親と同じものが咲く品種もあるようです。この違いはどこから来るのでしょうか。
回答:家庭などで長年栽培していて、遺伝的性質がほぼ同じ(純系に近いもの)では自家受粉によってできる種子も、親とほとんど同じ性質になります。
質問:ベランダでゼラニウムを育てています。花の後種子ができたので、すぐに蒔いて育てました。約一年後に花が咲いたのですが、親の花とは全く異なるものでした。
親)丸い形の蕾、ピンクにスポットが入る八重咲き
子)細長い形の蕾、白の一重咲き
全く別の品種のように異なる花が咲いたので驚きましたが、これはなぜなのでしょうか。葉の形や株全体の形は親と子で似ていましたが、花は蕾の段階から形が違いました。
回答:園芸店で売られている種子や苗は、ほとんどが一代雑種です。種苗会社は、2つの純系を用意します。たとえば母系の遺伝子型は(AAbbCCdd・・・)、父系の遺伝子型は(aaBBccDD・・・)
とすると、一代雑種の遺伝型は(AaBbCcDd・・・)でその表現型はABCD・・・となります。「グリーンさん」の買った苗は、これに当ります。しかし、一代雑種の種子は確率的に、 ABCD・・・すべての表現系を持つものは極めてまれです。たとえば、遺伝子のAの部分はAAまたはAaでAの性質が現れるが、Bの部分がbbでBの性質が失われた個体となります。
質問:また、今回は種子が1つしかできなかったので一株しか育てませんでしたが、例えば複数種子ができて育てたとして、全てが白の一重咲きになるのが、それとも少しずつ違った花になる のか、何か法則のようなものはあるのでしょうか。
回答:雑種第2代の表現型がどのようになるかは、大筋では、メンデルの法則に基づいた確率によって決まるでしょう。多数の種子のうちからは、花がすべて白になるものも確率としはありえます。種子でなく、挿し木や挿し芽で増やせるものは、親の性質を引き継ぐことでしょう。サクラのソメイヨシノは園芸雑種ですが、接木によって増やされています。
なお、種苗会社、国や県などの研究所が開発し、種苗登録されたものは、長年にわたる研究と努力によって生み出されたものです。種苗法により登録された場合は、占有的利用権が与えられており、個人が挿し芽などによって増やしたものを家庭で楽しむことはできるでしょうが、他者に分け与えることは違法となります。
この質問は、一代雑種の交雑に関するメンデルの法則によって説明できます。
[メンデルの法則の説明] G.メンデルは、さまざまな遺伝的性質を持つエンドウの中からいくつかの系統を選び出し、その交雑実験により、メンデルの法則と呼ばれる3つの規則性を明らかにしました。生物の性質を決めているのは遺伝子であり、細胞は1対の染色体(核にあり、この上に遺伝子がのっている)を持ち、そのうち1方は雌花(母)から、他方は花粉(父)から受け取る。受け取った遺伝子をもとに、生物のいろいろな性質が表れるが、そのとき次の法則が成り立つ。なお、実験に用いるエンドウは注目する1対の遺伝子が同じもの(純系といい、下記の例では遺伝子はRR、またはrr)であって、異なるもの(雑種といいこの場合遺伝子はRr)ではない。
A)優劣の法則:花色が赤色のエンドウ(1対の遺伝子はRR)と白色のエンドウ(rr)を掛け合わせて得られた種子(雑種第1代)のエンドウの遺伝子型はすべてRrであるが、色(表型系)はすべて赤である。同様に、草丈が高いもの (LL)のものと低いもの(ll)を掛け合わせえられる種子の遺伝子型はLlであるが、それをまいた時のエンドウの丈(表現系)はすべて高くなる。すなわち、雑種第1代では一方の親の性質だけが現れるが、このとき現れる方の遺伝子を優性、現れないほうを劣性という。B)分離の法則:雑種第1代のエンドウ同士を掛け合わせると、次世代のエンドウの花の色は赤:白=約3:1の比に、草丈は高:低=約3:1となる。すなわち、雑種第1代で現れなかった遺伝rやlは消滅したのでなく、母系や父系の個体の中に維持されており、それが次世代に伝えられたのである。この現象は次のような確率的なものである:一代雑種の母系からRを受け取る確率は1/2、rを受け取る確率も1/2であり、父系からRを受け取る確率も1/2、rを受け取る確率も1/2であり、その種子はRR(母系を先に、父系を後に書き、その表現型は赤)となる確率は1/4(1/2x1/2=1/4)、Rr及びrR(表現系はどちらも赤)もそれぞれ1/4の確率で合計2/4、rr(表現型は白)の確率は1/4。これをまとめると、表現系は赤:白=3:1の確率となることが期待される。C:独立の法則:花の色が赤で草丈が低い純系(赤―低)と花の色が白で草丈が高い純系(白ー高)を掛け合わせると、雑種第1代では花の色はすべて赤色、草丈はすべて高(赤―高)であるが、雑種第1代同士の掛け合わせで得られる雑種第2代の種子から生じる個体の表現系は、およそ次のような確率になることが期待される:(赤―高)9/16.(赤―低)3/16、(白―高)3/16、(白―低)1/16。(判らない点はこの「植物Q&A」やインターネット等で「メンデルの法則」を検索語として調べてください)
質問:同じゼラニウムでも、種蒔きして親と同じものが咲く品種もあるようです。この違いはどこから来るのでしょうか。
回答:家庭などで長年栽培していて、遺伝的性質がほぼ同じ(純系に近いもの)では自家受粉によってできる種子も、親とほとんど同じ性質になります。
質問:ベランダでゼラニウムを育てています。花の後種子ができたので、すぐに蒔いて育てました。約一年後に花が咲いたのですが、親の花とは全く異なるものでした。
親)丸い形の蕾、ピンクにスポットが入る八重咲き
子)細長い形の蕾、白の一重咲き
全く別の品種のように異なる花が咲いたので驚きましたが、これはなぜなのでしょうか。葉の形や株全体の形は親と子で似ていましたが、花は蕾の段階から形が違いました。
回答:園芸店で売られている種子や苗は、ほとんどが一代雑種です。種苗会社は、2つの純系を用意します。たとえば母系の遺伝子型は(AAbbCCdd・・・)、父系の遺伝子型は(aaBBccDD・・・)
とすると、一代雑種の遺伝型は(AaBbCcDd・・・)でその表現型はABCD・・・となります。「グリーンさん」の買った苗は、これに当ります。しかし、一代雑種の種子は確率的に、 ABCD・・・すべての表現系を持つものは極めてまれです。たとえば、遺伝子のAの部分はAAまたはAaでAの性質が現れるが、Bの部分がbbでBの性質が失われた個体となります。
質問:また、今回は種子が1つしかできなかったので一株しか育てませんでしたが、例えば複数種子ができて育てたとして、全てが白の一重咲きになるのが、それとも少しずつ違った花になる のか、何か法則のようなものはあるのでしょうか。
回答:雑種第2代の表現型がどのようになるかは、大筋では、メンデルの法則に基づいた確率によって決まるでしょう。多数の種子のうちからは、花がすべて白になるものも確率としはありえます。種子でなく、挿し木や挿し芽で増やせるものは、親の性質を引き継ぐことでしょう。サクラのソメイヨシノは園芸雑種ですが、接木によって増やされています。
なお、種苗会社、国や県などの研究所が開発し、種苗登録されたものは、長年にわたる研究と努力によって生み出されたものです。種苗法により登録された場合は、占有的利用権が与えられており、個人が挿し芽などによって増やしたものを家庭で楽しむことはできるでしょうが、他者に分け与えることは違法となります。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-07