一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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カタバミの葉っぱが上に反る理由

質問者:   小学生   ひいこ
登録番号4176   登録日:2018-07-31
こんにちは。自由研究でカタバミの葉っぱの就眠運動と概日リズムを調べています。

カタバミを日の当たらない暗い場所に置いて置いたときの葉っぱの開閉を調べていたら、3日目を過ぎたころから葉っぱが上に向かって閉じたしました。カタバミの葉っぱは閉じる時に葉をたたんで下に閉じるはずなのに、どうして葉を開いたまま上に閉じようとしたのでしょうか?
今5日目が過ぎたところをですが、葉っぱは上に上がったままで完全に閉じようとしてるのではなくて、上に反ったままです。

暗い場所を作るためカタバミの鉢植えにダンボールをかぶせています。
ひいこ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
 就眠運動はいろんな植物が葉やそして、花でも示します。これまでに非常にたくさんの専門的な研究が報告されていますが、植物にとってその運動がどういう意味を持っているのかということについては様々な考えがあり、まだ十分に明らかにされていません。運動の機構(からくり)や様式(パターン)も様々です。だから、葉や花の開閉(就眠運動)を引き起こす環境の要因(光、温度、気圧、水分などなど)も植物の種類や器官、周囲の環境条件によって、必ずしも一つだけとは限りません。例えば、日本にはありませんが、カリフォルニア州のレッド・ウッドの樹林に生育する「レッドウッド・ソレル(Oxalis oregana )」白色からピンクの花を咲かせる日陰植物ですが、強い光に弱く、障害が起きます。真昼の光の1/200程度の光条件がこの植物には適当光だそうです。だから、光が当たると10秒で葉が閉じ始め、6分で完了します。そして日陰になると、10分くらい経ってから、水平に開き始めます。これは、強い光による障害から葉を守るための運動だと考えらます。また 、カタバミではありませんが、実験によく使われるオジギソウ(Mimosa pudica Linn.) では、小葉は上向きに、全葉の葉柄は下向きに閉じます。就眠運動については過去にも本コーナーへ質問がありますので、参考にしてください。「就眠運動」という項目を検索すれば関連する質問が見られます。登録番号1381(ネムの木」について)にはカタバミのことも載っています。
 ところで、ご質問について幾つかはっきりしないことがらがあります。まず、カタバミですが、これは在来種の「カタバミ(Oxalis corniculata Linn.)」(黄色に花)のことですか。それとも、葉の赤い(アカカタバミ)のことでしょうか。カタバミの仲間はたくさんあって、やや大きいピンクの花を咲かせるムラサキカタバミやイモカタバミは外来のもので帰化植物です。最近はオキザリス(Oxalis、属名)という呼び名で色々な種類の園芸品種が入ってきています。実験に使う材料は必ず正式な種名を明らかにしましょう。多分在来のカタバミだろうと思いますが、自然のものを採集してきて使っているとすれば、中には変わり者も混じっていることがあるので注意が必要です。1個体だけでなく複数の個体を使って、どれもが大体同じように振る舞うことを確かめる必要があります。
 写真がないのでわからないのですが、「葉を開いたまま上に閉じる」というのはどういう状態ですか。葉柄が上向きになったということですか。カタバミの就眠運動も体内時計(概日リズム)が関係しています。暗黒に置かれたカタバミは暗闇でも体内時計に従って葉の開閉運動を示しますが、いつまでも続くわけではなくふつう数日でそのリズムは消滅します。3〜5日経つと多分リズもはなくなっていると思います。何日の暗い所に置いておくと、植物体への栄養補給がなくなり、植物は生きていくために、光を求めます。そのためには葉を開いて十分な光が受けられるようにします。「葉っぱは上に上がったままで完全に閉じようとしてるのではなくて、上に反ったままです。」というのは想像ですが、葉柄が反って、葉身(緑の葉の部分)をできるだけ光に当てようとしているのではないでしょうか。
 ダンボールの箱を被せて暗黒にするのはいいのですが、どのくらい完全なのでしょうか。また、観察したりする時にはどういう光条件で中を覗いているのですか。光がもれたり、観察の時に光が当たったりしませんか。5日間に水やりなどはしましたか。
 以上色々考えてみましたが、実験を行った条件のもとでは(質問からははっきりしませんが)、正常な就眠運動を体内時計のリズムに従って行わせるには長い間暗黒に置きすぎたのではないかと思います。その結果、植物はなんとか生き延びようとして観察されたような状態を示したのではないでしょうか。
 色々工夫して実験を繰り返して見てください。 

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-05