一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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オクラの赤い色

質問者:   小学生   かなた
登録番号4180   登録日:2018-08-02
オクラの観察をしています。
オクラの葉に、ところどころ赤いのはアントシアニンだと調べました。
オクラの茎にも、赤い所があって、それが日光の当たる上側だけにみられるのは、日光とアントシアニンは関係があるからですか?
教えて下さい。
かなたさん

みんなの広場Q and Aへようこそ。質問を歓迎します。
植物の化学物質の研究をしている東京農工大学の小関良宏博士が詳しく解説してくださいました。

【小関先生のご回答】
オクラを育てていらっしゃるのですね。私も山梨県に住んでいて今年も家庭菜園でオクラを育てています。オクラには様々な品種があり、私のところの今年のオクラは全体が緑色です。逆に「ベニー」のような品種は実から茎から赤いです。これはおっしゃるとおり、アントシアニンによる赤い色です。今年の私のオクラは全体が緑色なのですが、そう言われてみればとこれまでに育ててきたオクラのことを思い出してみました。オクラはまっすぐな茎の脇から長い茎のようにみえる葉柄を出し、その先に葉の本体ともいえる広がった葉身がついた形になっているのですが、その葉柄の上側と葉柄と葉身がくっついた葉身の根元の部分の表側のところが赤くなっていたのを思い出しました。これもアントシアニンであることは間違いありません。私が思い出せたのは、オクラは花がこの葉柄の根元に咲いてそこに実がなるのですが、その部分の実を収穫した時には、それがなっていたところの葉を折りとって外していくようにすると、その後の全体の成長が良くなるよと農家さんに教わったので、そのとおりに実をとるとともにその部分の葉を葉柄の付け根部分から折り取っていたから、赤い色になっていたのを覚えていました。さらに思い出してみると、私がその時に植えていたオクラは、葉柄の付け根に近い部分の赤みが強かったと思います。オクラは茎と見まごうばかりに葉柄が立派になるのですが、きちんと茎と葉柄は植物の体の部分として違っています。茎は輪切りにするとその切り口はほとんど丸いのですが、葉柄の部分は上の方がちょっと凹んでいます(ただし、今朝、今育てているオクラを見てきたら、葉柄の付け根の部分は凹んでいるのですが、先の部分は丸くなっていました)。これは多くの双子葉の植物で見られる特徴です。しかも、「折り取った」と言いましたように、茎と葉柄がくっついている部分では栄養や水を通す管となる部分のつながりかたが大きく違っていて、そこのくっついている部分だけできれいに折れます。これも多くの双子葉の植物で共通で、秋に木の葉が落ちる時には、この部分で茎と葉が切り離されます。茎にしても葉柄にしても途中で切ろうとしたら手では切れずにハサミがないと切れません。質問された方が見られている赤い色は、おそらくこの葉柄の根元部分が赤くなってアントシアニンが溜まっているのだと想像します。
お話ししましたように、同じオクラでも品種によってアントシアニンがどこでどのようにどのぐらい作られるのかは大きく違います。また植物の種類によっても違います。それでもアントシアニンは、多くの植物種においては光が引き金となって作られます。ナスにしても、実が小さなうちにアルミホイルで包んで光が当たらないようにしておくとアントシアニンが作られずに白っぽくなってしまいます。ただしちょっとでも包むのに失敗して小さな穴が空いていると、そこだけ光が当たってアントシアニンが作られて紫色になります。一方で白ナスという品種では同じナスでもアントシアニンは全く作られず白いままです。
前に私も赤いオクラ「ベニー」を育てたことがあります。実はもちろん赤かったのですが、双葉が出たところから茎は赤く、さらに大きくなると茎だけでなく、葉柄も含めて全体が赤かった(ただし葉のほとんどの部分は緑色)と思います。来年は「ベニー」を植えて、花が咲いたところでアルミホイルでくるんでみたら、実は白くなるか、緑色になるか、それでも赤くなるのか、試してみようかと思います。
以上

(櫻井附記)
オクラはアントシアニンという赤い色素を合成する能力(遺伝子)を持っていますが、その遺伝子がどの場所でどのような条件下で現れるかによって、赤くなる場所や程度が決まります。オクラの品種によって、その場所や程度にも違いがあります。光が強いと赤くなりやすいことも知られています。アントシアニンの役割としては、強すぎる太陽光による傷害(植物の日焼けのようなもの)を減らすこと、動物に食べられることによって種子を散布してもらうものでは種子が熟したときに目につきやすい色を付けること、などが考えられます。なお、「植物Q&A」で、次の用語を検索するといろいろ面白い知識が得られるでしょう:オクラ、アントシアニン。


小関 良宏(東京農工大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2018-08-09